【掛川・夜泣石】どっちが本物? 赤子の泣き声がする伝説の「夜泣石」が2つある理由を調査
調査をするのは静岡・掛川市が舞台の遠州七不思議の1つ。赤子の泣き声がするという怪談「夜泣石(よなきいし)」です。なぜか「夜泣石」と呼ばれる石が、怪談の舞台となった地に2つあるのです。どちらが本物なのか調査しました。
【画像】記事中に掲載していない画像も! この記事のギャラリーページへ1つ目の夜泣石 小夜の中山トンネル手前
早速掛川市にやってきました。国道1号線の小夜の中山(さよのなかやま)トンネルの東側に、「小夜の中山 夜泣石」という看板があります。
山の中の階段を上っていきましょう。
「小夜の中山」は東海道の難所と言われた場所。現在は整備されていますが、当時は樹木が生い茂り、急な坂道が続いていました。
階段を上った先に、想像していたよりもずっと大きく、ズッシリとしたたたずまいの大きな石を発見しました!
夜泣石です。
遠州七不思議の1つで、夜になると“泣く”というのですが、いったいどんな伝説なのでしょうか。
■店名 夜泣石
■住所 静岡県掛川市佐夜鹿57-8
「夜泣石」伝説とは
詳しい話を聞きに、夜泣石の近くで代々商売をしているお土産店、創業1751年の「小泉屋」に行きました。
「夜泣石」とはどんな伝説なのか、小泉屋の小泉玲子さんに教えてもらいます。
小泉屋・小泉玲子さん:
昔、小夜の中山は盗賊が多い場所でした。ある妊婦さんが山賊に襲われ、お腹を切られたので、切り口から子供が生まれてしまいました。母親は亡くなってしまいましたが、赤ちゃんをなんとか助けたいという母親の魂がそばにあった丸い石に乗り移り、助けを求めて赤子の声で泣いたんだそうです
さらに小泉さんの話は続きます。
小夜の中山の頂上にあるお寺の住職が泣き声のする場所へ行くと、石の近くで生まれたばかりの赤ちゃんを発見しました。
そして、大きな丸い石は「夜泣石」と呼ばれるようになりました。
側面にある傷は、盗賊が妊婦を襲った時についた刀傷だと伝えられています。
助けた赤子を育てた「水あめ」で休憩
小泉さんの話はまだ続きます。
小泉屋・小泉さん:
赤ちゃんを見つけた住職は母親の代わりにもち米と麦芽で作った水あめで子供を育てました。その水あめが小夜の中山名物の「子育飴1本(100円)」です
小泉屋では創業以来、変わらぬ製法で子育飴を作っているそうです。
お土産として袋や箱に入った子育飴もありますが、つぼからすくってもらい、この場で食べれば風情もあります。
香ばしく、どこか懐かしい味わいでした。麦芽を煮詰めて甘さを引き出しているので、自然な甘みになっています。
生き残った赤子はこの飴で命をつないだのかと思うと、感慨深いじゃないですか。
小泉屋・小泉さん:
栄養のある飴だから、食欲がないときになめてもいいですよ
夜泣石は浮世絵師の安藤広重が、東海道五十三次の中で紹介すると、一躍、観光名所になりました。
江戸時代には既に子育飴が売られていて、旅人の間でも、優しい甘さで旅の疲れを癒してくれると評判だったそうです。
店内にはさらに気になるスイーツが。子育飴を練り込んだソフトクリーム「子育飴ソフトクリーム(400円)」です。
子育飴の甘さでバニラソフトにコクがでて、香ばしいおいしさです。見た目からは想像できない味でした。
■店名 小泉屋
■住所 静岡県掛川市佐夜鹿57-8
■営業時間 9:00~17:00
■定休 木
■問合せ 0537-27-1010
2つ目の夜泣石 久延寺
ところで、調査しているのは2つの夜泣石です。
名物「子育飴」を味わったところで聞いてみました。
小泉屋・小泉さん:
旧東海道の頂上にある「久延寺(きゅうえんじ)」の境内にある小石姫供養塔という名の、夜泣石の代わりのものが祭られています
久延寺は小夜の中山の頂上にあります。1つ目の夜泣き石からは歩くと35分ぐらいかかります。
伝説の中で赤ちゃんを助けた住職がいた、夜泣石伝説ゆかりのお寺です。ここにも境内に、1つ目の夜泣石とよく似た、屋根に守られた丸い石がありました。
こちらにある夜泣石は、伝説に登場する妊婦の「供養塔」です。
夜泣石によく似た大きな丸い石を探して作ったそう。
混乱する人もいて、夜泣石が2つあるけれど、どちらが本物?と小泉さんはよく聞かれるそうです。
母親の子供への思いが伝説となった夜泣石。2つの夜泣石を見に小夜の中山に行ってみてください。
■店名 久延寺
■住所 静岡県掛川市佐夜鹿291番地