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自主練しない息子。モチベーションアップは親の役目ですか問題

サカイク

将来の夢はプロサッカー選手と言う割に、親が声をかけないと自主練はしないし暇があるとテレビ、YouTube、ゲームの息子。

プロ選手からの直接のアドバイスも響いてない。本人がプロになりたいなら出来るだけ支えるけど、モチベーション上げるのって親の役割なの? というご削談をいただきました。

今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見をもとに3つのアドバイスを送ります。
(文:島沢優子)

(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

<<J下部で出場機会がない息子は13歳。中学生はまだ自分で判断できない子どもだから親はどう導けばよいか問題

 

<サッカーママからの相談>

こんにちは。色々な悩み相談、いつも参考にさせてもらっています。

ご相談したい内容は、「そもそもどうして親が子どものモチベーションを上げる必要があるのか?」ということです。

息子は4年生(10歳)で、1年生の頃から近所のサッカーチームに所属しています。メンバーがあまりいないので、ほぼレギュラーで試合に出ており、勝ったり負けたり楽しそうです。練習も楽しそうに参加してますし、臨時のサッカースクールなども本人の希望で参加したりしています。

ただ自主練はほとんどしません。親が声をかけてしぶしぶしています。

将来の夢はプロサッカー選手らしいのですが、暇があればテレビ、YouTube、ゲームです。

現役のプロサッカー選手とマンツーマンでパス練習をする機会があり、直接アドバイスを頂きましたが、全く響いていませんでした。

プロになりたいのなら出来るだけの支援と応援をしたいとは思いますが、親がモチベーションを保たせる努力をすべきなのでしょうか?

私としては、好きで好きで自主的に頑張れる子や、天才的な才能を持った子がプロになれるんじゃないかなと思っていて、我が子はイメージに当てはまりません。正直、この段階で自主練を嫌がっている様ではプロはムリだろうと思っています。

ちなみにここのサイト(※編集部注:サカイク3分間トレーニングと思われる)に倣って、YouTubeのボールタッチ10分を習慣化させようと半年声掛け頑張りましたが、声をかけなくなったらやらなくなりました。やった日はカレンダーにシールを貼ったり、頑張った月はご褒美を用意したりしましたがダメでした。

それでも本人がプロになりたいと言っている以上は、日ごろから親がモチベーションを高めるような声掛けや環境づくりをした方が良いのでしょうか?
親の諦めが早すぎでしょうか?

 

<島沢さんからの回答>

ご相談いただき、ありがとうございます。

メールに「いつも参考にさせてもらっています」とあるので、この連載を読んでいただいているようです。ありがとうございます。

結論から申し上げると、親が子どものモチベーションアップに努める必要などありません。

世間ではよく「やる気スイッチ」はどこにあるでしょうか? なんて言われますが、スイッチなどどこにもありませんし、あるとしてもそれを発動するのは本人です。少なくとも親ではありません。

ひとつ言えるとしたら、日ごろから子どもが意欲的に取り組める環境を作ることです。そのためにも「やる気のメカニズム」を知っておきましょう。

 

■やる気のメカニズム

この連載でも何度か書いたことですが、私たち人間のやる気をつかさどるのは左右の大脳半球の下側にある「線条体」という神経核です。一度机の上を片付けたら結構達成感があり、良い気分になった。この良い気分をつくっているのはドーパミンで、分泌するドーパミン神経の束は「報酬系」といわれます。この「片付けをする=良い気分」のマッチングが繰り返されると、その結びつきは強化されやる気が出るのです。

例えばサッカーで、ある練習をしたら何かが上手くなる手応えを感じることがあります。それを息子さんが実感し「こうやって練習したら上手くなるに違いない」と思えば練習に対し意欲的になります。

 

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■自分がやろうとしていないことを急かされても習慣化はしない

ところがこの線条体は、誰かに否定されたり、怒られたりすると、動きが鈍くなります。大人が圧迫すればするほど、子どものやる気は出ません。つまり脳が意欲的にならないからです。お母さんがYouTubeのボールタッチ10分を習慣化させようと半年声掛けしても習慣化しなかった、とあります。自分からやろうとしていないことを急かされても「あーあ、仕方ないなあ」と半ばげんなりしてボールを触っていれば、線条体は生き生き動かないのです。

そこまで怒鳴ったりしなかったとしても同じです。であれば、息子さんが自ら「頑張ったら得をした」という経験をし、彼の脳が意欲的になるのを楽しみに待てばいいのです。そう考えると、子どもがサッカーを頑張るときはサッカーにはまった、つまり大好きになったときだと考えます。

 

■「好き」はとても大事な出発点

1万組超の双子を調査し、遺伝と環境の関係について調べている行動遺伝学者の安藤寿康(じゅこう)・慶応大名誉教授をインタビューした記事(『才能は生まれか育ちか 遺伝、環境、努力、双子1万組を調査した答え』朝日デジタル=2024年1月8日)で、安藤教授はこう話しています。

「『好き』に加えて『できる』の組み合わせが天才の条件とも言えますが、入り口は結局は『好き』ということです。『好き』だけど『不向き』の組み合わせだったとしても、一流にはなれなくとも良きサポーターになれ仕事でも趣味でも生かせる才能になるでしょう。『好き』はとても大事な出発点です

この言説は、私が何度か記事にしている「好きの破壊力」と類似しています。

※例えば別サイトの記事ですが、webフラウの連載『スケートボード金・堀米雄斗、11歳から支えたコーチが語る「好き」を育てた親の姿』(子育てアップデート53 好きの破壊力=2021年8月2日/外部サイトに飛びます)を読んでみてください。

 

■子どもを「評価」するのではなく「観察」して待ってみよう

私は同じサカイクで連載をされている池上正コーチと仕事を始めて17年ほどになります。最初のころは子どもが小学生だったので、ワンオペ育児だった私は池上さんに自分の子育てを相談したことがあります。

「全然言うことを聞いてくれない」「思い通りにならない」「サッカーに興味があるのかないのかわからない」などと愚痴をこぼしました。そのとき、池上さんから「こうしたい、ああしたいじゃなくて、ああ、この子どうするのかな? と眺めていればいいんだよ」と言われたのです。

目の前の子どもをこうしたい、ああしたいと思っていると、力ずくで動かしたくなる。そうではなく「この子、どうするのかな?」とちょっと観察してみる。その言葉を信じて、「宿題しなさい」「ゲームやめなさい」と腹が立っても、じっと観察したのです。私からじっと見られていることに気づいていないはずですが、息子は「よし、もういいや。お風呂入ろっと」とゲーム機をサッサと片付けて浴室に向かいました。

よく「子育ては待つことが大切」などと言われますが、まさにそれでした。私はせっかちで待てないタイプなので「待つ」といった心持ちではなく、ただひたすら「こいつアホやな」とか「さあ、どうする?」と心の中でつぶやきながらわが子を眺めていただけ。この観察する時間がまさしく「待つ時間」になったわけです。

お母さんも「この段階で自主練を嫌がっている様ではプロはムリ」などとわが子を評価するのではなく観察してはどうでしょうか。寄り添うことに注力するのです。

 

■「好き」が発露するタイミングは人によって異なる

(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

そもそも子どもの成長や「好き」の発露が訪れる時期は、それぞれ異なります。7歳で出会う子がいれば、20歳で発見する子もいます。

そういえば、先に紹介した記事で安藤教授はこうも言ってました。

「個人の性格的な要素として、何事にも目的意識を立てた考えをする、つまり『努力ができる』ということにも50%ぐらいの遺伝率があります。努力ができるというのも才能の一つなのです」

遺伝ですって。怖いですね(笑)。少し肩の力を抜いて、自分の子育てを眺めてみてください。

 

島沢優子(しまざわ・ゆうこ)ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実 そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産 彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。

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