水道料金50円引き&鳥の巣報告で100円!インフラ維持のリアル
新年度がスタート。さまざまなものが値上がりする中で「水道料金」も例外ではないようです。
自分で検針したら50円引き!足利市の水道検診アプリ
そうした中、栃木県の足利市で市民が「ある協力」をすることで、水道料金が安くなる取り組みの準備が進んでいます。栃木県 上下水道部の石井 恭平さんに伺いました。
栃木県 上下水道部 企業経営課 石井 恭平さん
今回作ったアプリが、市民の方が自身で自宅の水道のメーターを検診できるっていうアプリになってます。従来であると、二ヶ月に一度、検診員さんが訪問して、水道メーターの数値を確認していました。この検診員さんがやっていた検診を、市民の方が自宅のメーターを自分で検診して、私たちの方に検診値(使用水量)の方を、教えていただくということで。実際に水道メーターをカメラのアプリを通して撮影していただくだけなので、皆さんどなたでも簡単にできる作業。本当に蓋開けてパシャって撮るだけなので、もう1分ぐらいで終わっちゃいます。撮影して料金が確定した方については、水道料金から「50円引き」という特典がございます。
<市民が自宅の水道メーターを検針することができる、. 全国初の市民参加型水道検針アプリ「足利市My水アプリ」(2025年6月~足利市内の希望者が利用可能)>
自分で水道検針をすると、水道料金が50円引きになります。足利市が開発した「足利市マイ水アプリ」を使って、市民が自宅の水道メーターをスマートフォンで撮影し、専用アプリから送るという仕組みです。2か月に1回、メーターの写真をパシャリと撮影するだけで、データが市に送られます。
背景にあるのは、検針員の高齢化。現在、足利市で水道の検針業務を担うのは28人で、市内およそ8万戸の水道メーターをチェックしていますが、平均年齢は65歳。人手不足が深刻な課題となっていました。
そこで「ならば市民の手で」と始まったのが、今回の取り組みです。すでに実証実験も行われていて、今年6月から正式にスタートする予定です。
最近では横浜市などで人の手を介さず自動で検針できる「スマートメーター」の導入も進んでいますが、設置にはコストがかかるため、足利市では費用を抑えたアプリ方式が選ばれました。
なお、横浜市ではスマートメーターの導入に向けた実証実験が進められています。横浜市 水道局経営企画課の大塚さんによりますと、東京電力の電力メーターの通信網を活用することで、コストを抑えた形での導入を目指しているとのことです。
「鳥の巣」を報告せよ!ミッションクリアで100円あげる
ただ、50円と言わずもう少し割り引いてくれると嬉しいな…と思ってしまいますが、「自分でやるとお得になる仕組み」は、実は電気の分野にも広がっています。今度は、メーターではなく「あるもの」を見つける作業のようですが、中部電力パワーグリッドの村田 好章さんに伺いました。
中部電力パワーグリッド株式会社 豊橋支社 地域統括室 村田 好章さん
「鳥の巣」なんですけども、鳥の巣を見つけて、写真を撮って投稿すると、ユーザーには100円相当の報酬が渡るようになってます。主にカラスなんですけども、電柱のですね金具だとか、上のところにですね、カラスが巣を作るというのがあってですね、特に街中だとですね、木がないもんですから、巣を作るところを電柱にしてしまうんですね。
従来は当社の保守員がですね、すべて見回りながら鳥の巣を見つけて処置をしていくということだったんですけれども、市民に情報をもらいながら、鳥の巣が見つけられるという、そういったところを目指している。市民の人はこのアプリ自体をですねダウンロードして、写真を撮って、あと送るだけという、そういうことになってますね。
<GeoQuest(通称:ジオクエ)は「クエスト」の場所に行き、現地の写真を撮影して投稿するとポイントがもらえるアプリ>
<これが電柱の上に作られた「鳥の巣」!愛知県三河地区で、「ジオクエ」アプリを活用した鳥の巣の調査が始まっています>
「鳥の巣」を見つけて報告すると、100円相当のポイントがもらえて、dポイントなどに交換することができます。
使うのは、スマートフォンの専用アプリ「ジオクエ」。電柱の番号札と巣の写真を送ると、調査チームが現場を確認し、必要に応じて撤去作業が行われます。
今はちょうどカラスの繁殖期。ハンガーなど金属を使って作られた巣が電線に触れてショートし、停電につながるケースもあるそうです。実際、愛知県の一部地域だけでも、年間およそ2500件が報告されているとのことです。
やはり背景には「人手不足」があります。すべての電柱を職員が見て回るのは困難な中、地域の目を生かしてインフラを守ろうという、新しい試みです。
インフラ点検の新しい形。仕掛け人は「地図会社」
じつはこのアプリを開発したのは、カーナビ用の地図を手がけてきた「地図づくりのプロ集団」なんです。「鳥の巣」以外にも、街のあちこちで“あるもの”を集めているそうですが、ジオテクノロジーズ株式会社の古口 裕康さんに伺いました。
ジオテクノロジーズ株式会社 古口 裕康さん
例えば「道の凸凹」ですとか、「ひび割れ」ですとか、「コインパーキング撮影してください」「ポストを撮影してください」「電話ボックス」とか、「自動販売機を撮影してください」みたいなお題を決めて、そういったところも「ジオクエ」を使って調査することで、情報を早く入手できるっていうメリットがあります。
その変化に対して、地図を作るための素材を集めるっていうところ、電話調査ですとか、実際に道路を走ったりみたいな手間暇ですとか、そういったコストっていうところが、今まですごいかかっていたと。そこをじゃあ地図に鮮度高い状態で反映するた、め「ジオクエ」っていうアプリを開発したと。
単純にこういうサービスっていうのが世の中に少ない、言ってしまうとないので、お話をいただく会社さんですとか自治体様っていうのは、かなり増えてきております。
カーナビなどの地図を30年間作り続けてきた会社です。現在は、損傷したカーブミラーやガードレールなど、調査の対象は多岐にわたります。もともとは、自社の地図データを更新するための手段として始まったもので、「ジオクエ」というアプリ自体は、昨年6月に誕生したばかりですが、自治体からの問い合わせも増えてきているということです。
担い手不足に悩む公共サービスの現場で、「市民の力」を活用する仕組みが広がりつつあります。本来であれば、行政や事業者が責任を持って担うべき役割かもしれませんが、こうしたかたちが、これからの「当たり前」になっていくのかもしれません。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材:田中ひとみ)