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半沢ロスに陥ったあなたのための『半沢直樹』妄想散歩。彼も駆け回ったはずの、ゼロ年代の六本木と羽田を歩く

さんたつ

2013年放送の第1シーズンで視聴率40%越えを成し遂げた、平成最高視聴率ドラマ『半沢直樹』(TBS系)。堺雅人演じる東京中央銀行のバンカー半沢直樹が正義を貫き巨悪を倒す姿が共感を呼び、伝説的な作品となった。あれから7年、ついに放送された第2シーズンでもその熱は収まらず、全話で視聴率20%オーバーと大ヒット。香川照之らおなじみの顔ぶれに加えて、賀来賢人をはじめとした新キャストもドラマを盛り上げた。 “現代の水戸黄門”ともいわれる本作は、いわずもがな、半沢が悪をやっつける「倍返し」こそが最大のクライマックスだ。第2シーズンでも胸がスッとするようなシーンがたくさん用意されていて、池井戸潤による原作ファンはもちろんのこと第1シーズンからの視聴者も虜になった。一方で、この先どうなる? と展開を考察するファンも続出。SNSではたびたび「半沢考察」が行われ話題となった。かくいう私も半沢考察を楽しみ、今まさに半沢ロスに陥っている人間の一人だ。今回は実に面白かった第2シーズンに思いを馳せながら、半沢直樹が訪れたであろう東京の街々を妄想散歩してみたい。

街へ出る前に、まずは7月から放送された第2シーズンの内容を一気に振り返る

大和田常務(香川照之)の不正を暴き銀行を救った東京中央銀行のバンカー半沢直樹(堺雅人)。しかし頭取の中野渡(北大路欣也)から小会社、東京セントラル証券への出向を命じられてしまう。東京セントラル証券では電脳雑伎集団という大手IT企業による買収話が動き出す。これに部下の森山(賀来賢人)とともに当たる半沢だったが、親会社・東京中央銀行がこれをなんと横取り。半沢は怒りに燃え、電脳雑伎集団の買収先・東京スパイラルの社長で森山の旧友の瀬名(尾上松也)とともに電脳雑伎集団の不正に迫り、ついには親会社、東京中央銀行をねじ伏せる。

東京中央銀行に戻った半沢だったが、今度は経営が傾いている帝国航空再建という一大プロジェクトを任される。国交大臣白井(江口のりこ)は東京中央銀行に多額の債権放棄を要求し、かつてないピンチに追い込まれた半沢だったが、これを断固として拒否。その後、白井を裏で操る箕部(柄本明)幹事長の抱える大きな闇に迫ることになり……。

『ロスジェネの逆襲』の舞台、六本木。ヒルズはまだできたばかり?

第2シーズン、第1話~第4話では電脳雑伎集団との対決が描かれた。半沢直樹シリーズの第3作目『ロスジェネの逆襲』が原作だ。ドラマでは高層ビルで電脳雑伎集団のお偉方と相対する半沢の姿が印象的だったが、あの暗い一室はずばり六本木ヒルズじゃないだろうか。

というのは、電脳雑伎集団はある有名IT企業がモデルという説が濃厚なのだ。そう、みなさんご存知のライブドアだ。ライブドアは2004年にプロ野球の球団を、2005年にフジテレビを買収しようと試みるなどまさに絶頂を迎えていた。この時期にはライブドア代表のホリエモンこと堀江貴文が衆議院選に出馬、まさに時代の寵児だった。しかしITが新しい産業だったこともあり、ライブドアが言いようのない不気味さを持つ集団に見えたのは事実だ。そう考えると電脳雑伎集団のオフィスが真っ暗だったのもなんだか頷ける。

また、当時は六本木ヒルズが完成したばかり。54階建てという超高層ビルの出現により、六本木は一躍最注目の街となっていた。日本ばかりでなく世界の大企業がこの巨大ビルに入居。ライブドアも2004年に六本木ヒルズに本社を移している。六本木ヒルズは今以上に、成功者の象徴として輝いていたのだ。

それと同時に、できたばかりだった六本木ヒルズが巨大商業施設として注目を浴びていたということも思い出される。今でこそ定番の観光名所だが、最新施設として熱心線を浴びていた時期も短くなかった。ピカピカに光る巨大ビルディングを眺めながら、半沢の胸にはどんな想いが去来していただろう。愛妻、花(上戸彩)とともに六本木ヒルズでショッピングを楽しみたいなあ、なんてことを考えていたかも。厳しい顔を見せることがほとんどの半沢だが、実は情に厚い男。電脳雑伎集団とぶつかりあう前のほんの一瞬、愛する妻の姿を思い出しながら六本木の高い空を眺めていたとしても何ら不思議ではない。

半沢直樹が訪れていた(かもしれない)羽田は、当時LCCブーム前夜

『半沢直樹』第5話からは『銀翼のイカロス』が原作。帝国航空を自力再建させるべく半沢が奔走する姿が描かれた。帝国航空のモデルは間違いなくJAL(日本航空)だ。JALは2010年に経営不振に陥り、会社更生法の手続きを申請している。

ドラマでは(羽田空港近くにあるとおぼしき)帝国航空に足を運ぶシーンも多かったから、半沢は羽田空港を訪れていた可能性も高い。2000年代の後半、JALが大きく傾いたこの時期は、羽田空港の変革期とも重なる。2010年に4本目の滑走路「D滑走路」が完成し、同年には第3旅客ターミナルが営業を開始している。

ドラマの中にもLCC(ロー・コスト・キャリア)が登場していたが、この頃はまさに日本の航空産業の一大転換期といえる。航空需要が増えLCCも増加していく直前のタイミングだった。

半沢が完成して間もない第3ターミナルの展望デッキから、空を飛び交う銀翼の群れを眺めたかどうかはわからない。それでも、やはり想像してしまう。仕事人間だが家族思いの半沢が帝国航空との大事な会議の後、愛する息子のために飛行機模型の一つも買って行ったのではないだろうか。そのときだけは、厳しい顔を緩め優しい父の顔をしていたのではないだろうか。

と、ここまで語ってきたが実はドラマの『半沢直樹』では時代設定が語られていない。LINEやAirDropのようなスマホ機能が登場しており、現代が舞台という見方もある。

原作ではゼロ年代の話だが、それを今のドラマとしても違和感を感じないように構築していく作業は、かなりの大仕事だったはずだ。お仕事ドラマであり、男同士の対決を描く作品ゆえに、あえて余計な要素を省略したという塩梅も見事だった。第1シーズンで登場した息子が第2シーズンでは登場しなかったのは、ホームドラマの側面を完全に打ち消し、男たちがやり合うドラマにしたかったという気持ちの表れだろう。それゆえ最終回、花の半沢に対する優しい言葉の数々が逆に際立つかっこうに。あの演出も見事だった。

だからこそ妄想してしまうのだ。優しく熱い男半沢なら、いや直樹なら、きっと行く先々で愛する妻や息子のことを思っていたに違いない、と。ありとあらゆる巨悪を退治した敏腕バンカーの、ドラマで描かれなかった心情を夢想していると半沢ロスがさらに強まってしまった。

文=半澤則吉
参考=国土交通省関東地方整備局 東京空港整備事務所HP、羽田空港HP

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