夏休み明け 学校しんどい子のための駆け込み寺。リアルにもネットにも
そろそろ8月も終わり。もうすぐ新学期というお子さんも多いと思いますが、この時期、とくに利用者が増えるのが、「子ども食堂」です。
夏休み明け、不登校の子どもの駆け込み寺にもなっている「子ども食堂」
子ども食堂といえば経済的に困っている子どもたちに食事を提供しているイメージですが、町田市で「You You Living」というカフェを開いている、丹羽 昭尋さんに伺いました。
「You You Living(ゆうゆうリビング)」 丹羽 昭尋さん
特に長期間の休みで、心の不安定になりがちな時期というとこの「夏休み」になりますので、「学校にまだ行きたくない」とか「なかなか行きづらい」とか、そういった方も来られます。
そのために、その時期は、大学生のボランティアの方だったりとか、地域のボランティアの方を増員して見守ってるっている状態になってます。9月の上旬まで、強化月間としてやってるということですね。
本を読む方もいれば、雑談する方もいれば、本当に様々ですけれでも、見守る数=「目」を増やしていく
で、うちのスタッフさんも不登校だったりとか、苦労してる方がスタッフとして運営してますので、「何しに来たの?」ではなく、逆にあちらから話すのを待って、ちゃんと聞き入れる、最後まで。ということは、結構重んじてますね。
<「You You Living」を運営する、株式会社鳳山の丹羽 昭尋さん>
「You You Living」は普段は一般的なカフェですが、対象日の午後2時~5時までを子ども食堂として、おにぎりやお味噌汁をセットで100円で提供しています。
また、日によってワークショップも行っていて、地域の大人が先生役として、染物体験なども開催。私が行った日は、牛乳パックなどを使った工作教室が開かれていて、10名弱の小学生が楽しんでいました。
<建築模型づくりをしていました>
そうした中で、とくに熱心に対応しているのが、夏休みが明ける前のタイミングです。長い期間、お休みをとったことで、この時期はふっと糸が切れてしまい、家にいるのも、学校も行くのもしんどい子どもが増える時期でもあるということで、「駆け込み寺」として、子ども食堂が機能していました。
夏休み中の“駆け込み寺”を検索できるサイト「#学校ムリでもここあるよ」
まさに今、「学校行きたくない」と悩んでいる人もいると思いますが、こうした「駆け込み寺」を、全国のマップにして、まとめているサイトもあります。NPO法人 多様な学びプロジェクトの副代表、前北 海さん。
NPO法人 多様な学びプロジェクト・副代表 前北 海さん
「学校ムリでもここあるよ」と検索してもらえれば、出てきます。
例えば私、千葉県に住んでいますけども、「千葉県」っていうタブを選択してもらって、次にじゃあ相談したいなと思ったら「相談」ってタブをチェックもらって、それで「検索」ってすると、それに該当する場所が出てくるっていうような形になっています。
例えばフリースクールだったら、1日オープンデイをしているよとか、子ども食堂だったらこの日にやってるから来ても大丈夫だよ、みたいな。
私も、実は不登校を経験していまして、学校に行かなくなると急に自分が行く場所ってなくなってしまうんですね。そういうときに、じゃあ自分で調べようとか、自分でどうにかならないかなって思った子が、1人でも引っかかるようになればいいかなとは思ってます。
<「#学校ムリでもここあるよ」の特設サイト。6回目の取り組みとなる今年度は、8月19日~9月9日の期間、家庭や学校以外の子ども達の居場所や相談場所を、サイト上でお伝えしています>
「#学校ムリでもここあるよ」は、子どもの居場所を検索できる特設サイトです(パソコンやスマホで検索できます)。
全国70箇所の、子ども食堂や遊び場がまとまっていて、食事の提供のありなしや、相談に乗ってくれるスタッフがいるかどうかを、検索することができます。また、施設のスタッフは専門の研修を受けているので、子どもたちが安心して利用できる環境が整っています。
どんな人でも、アクセスすることができます。今悩んでいるお子さん本人でもOK。「お腹痛い」、「夏休みの宿題終わってない」、「急に夜が遅くなってきた」など、ちょっとした変化があれば活用してほしいということでした。
子ども向けサイト、心の隠れ家に
ただ一方で、一人で悩みを抱え込んだり、家族にも相談できない、というお子さんもいると思います。そうした子どもが安心して集えるサイトもあるということで、詳しくお話を伺いました。
サイトの名前は、「かくれてしまえばいいのです」。NPO法人 自殺対策支援センターライフリンクの鈴木 洋平さんのお話。
NPO法人 自殺対策支援センターライフリンク 鈴木 洋平さん
「かくれてしまえばいいのです」という、子どもや若者のためのウェブ空間。
例えば、掲示板で自分のしんどい気持ちを書き出したりとか、あるいはAIを用いた相談対応をしてくれたりする。例えば「学校に行きたくない」というふうな書き込みをしたときに、「どうして学校に行きたくないと思ったのか、聞かせてくれない?」とか、「すごくつらいよね」とか、こういった形で話が続いて深めてくれるような形になっています。
これはちょっとリスクが高いなというふうなことをこちらで察知できれば、AIの方から、「こういう窓口があるから、ここ相談してみたらどうですか?」といった提案もするようにはなってます。
自分の気持ちをなかなか言葉にできないとか、言葉にできないからこそ相談できないみたいな感じてる人も一定数いるので、もうどんなことでも書き込んでいい。新たな選択肢になるかなと思ってます。
<「かくれてしまえばいいのです」のサイト(トップページ)>
<絵本作家のヨシタケシンスケさんの絵で、しんどいあなたを、おばあちゃんが迎えてくれます>
サイト全体が、絵本のような見た目で、「かくれが」がコンセプトで、匿名・無料で利用できます。
注目点は、「AIロボとのおしゃべりコーナー」。人間ではなく、AIだからこその気軽さで相談しやすいようです。
<AIプログラムが搭載された「ロボ」とおしゃべりできるコーナー。ライフリンクが特殊な学習をさせています>
今年3月にサイトを開設してから、すでに1000万件近くのアクセス数があるようですが、運営しているライフリンクは、自殺をなくすための活動をしている団体。2022年は小中高生の自殺者が過去最多の514人。昨年も513人と高止まりしている中で、とくに夏休み明けは、息切れしやすい時期になります。
少しでも悩んでいる方は、今日紹介したサイトなどを、訪れてみてください。
(TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」取材:田中ひとみ)