【発達障害と助成制度】高3で発達障害の診断、小児の発達外来は不可?知っておきたい病院選びと「自立支援医療制度」
監修:初川久美子
臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
次女が通う病院へは長男は通えない!?
小学生の次女が発達障害の診断を受けて、長男も同じでは?と疑った時、長男は高校生でした。次女は、かかりつけの小児科から大きな病院を紹介してもらい、そこからさらに小児専門病院へとつないでいただきました。なので、通っているのは小児科の神経外来。そこでは「ずっと通っている人以外、高校生からの新規受診はできない」と言われたため、当時高校生だった長男については、一から病院を探す必要がありました。
今まで精神科を探したこともなかったので、とりあえず近くで発達障害を診てくれて、予約が取れそうなところ!ということで、近所の精神科のWebサイトを複数調べてみました。
クチコミはあえて見ないことにしました。メンタルが落ち込んだ人がポジティブなクチコミをする確率って低いですからね。幸い、受診して、合わないと思ったら違うところに行けば良い、というぐらいには病院の数が多いです。
家からも駅からも近い、というすごく単純な理由で選んだ精神科のクリニックですが、大学生の今も長男は通い続けているので、今のところ、特に大きな不満はありません。
私はといえば、当時のパート先からすぐ近くに新しくできた精神科になんとなく行ったところ、先生と相性が良い気がしたので、そのまま子どもたちと別のクリニックへ通っています(笑)。私が通っているところはコンサータが処方できないのですが、今のところそれぞれ転院も考えずに通い続けています。
保険制度や助成制度について何も知らないことに気がつく
わが家は大阪市なので、高校を卒業する3月末日まで「こども医療証」という医療証が使えます。病院の受診では500円までの自己負担、1ヶ月の上限も1医療機関1000円までとなっていて、ほかにも細かな条件はあるものの、自己負担がとても少なく済むので、高校を卒業した途端に医療費が高い!と感じてしまいます(笑)。
長男が高校3年の冬、病院から「自立支援医療制度」の説明を受けました。詳しくはよく分からないけれど、申請しておくと精神科での受診費用が1割負担になると知って、驚きました。これまで医療の助成制度とはほぼ無縁で生きてきたので、負担割合そのものが変わるということすら驚きで、自分の無知を思い知りました。“後期高齢者になれば医療費が安くなるとうっすら知っていた”という程度です。
自立支援医療制度という言葉を知って、ネットで調べてみて、介護保険の意味も初めて知りました!まさか要介護度で医療保険の負担割合が変わるなんて。人によっては常識なのかもしれないですが、私にはまったく未知のお話で、こういうのは知っておかないとダメだなぁとつくづく思いました。
自立支援医療制度の申請をする
病院で教えてもらったので、早速役所へ行き、窓口で申請方法を教えてもらいました。診断書の発行に数千円必要になるものの、毎月の精神科でかかる医療費が5,000円ぐらいだとしたら、制度の利用で1,500円ほどで済む計算になります。これなら、すぐに診断書ぐらいの元が取れます。
もちろん風邪を引いてついでにお薬をもらったりしたら、その分は3割負担なのですが、発達障害のお薬は薬価が高いものが多い上に、毎日飲むものなので毎月かかる費用としては結構な負担になりますから、そこだけでも1割負担で済むのはうれしいです。
もし、社会人になって精神疾患で働けなくなったとしても、社会復帰できるように医療負担を軽くしてくれるのが、自立支援医療制度なのだと知りました。いつか長男も、本当の意味でこの制度に助けられる日が来るかも知れないですね。
役所の窓口でついでに聞いてみたこと
自立支援医療制度について教えていただく際に、精神障害者保健福祉手帳についても尋ねてみました。取得すると、どんなメリットがあるのか、資料などもいただきました。正直、障害者手帳を取得するデメリットとしては「入院保険や生命保険に加入する際、精神科に通っていることの告知義務がある」というぐらいだと感じました。それも、すでに通院して投薬も受けている時点で、黙って加入すると不利益があるかもしれないので、実質的にはメリットしかない気がします。
わざわざ聞かれてもいないのに手帳を見せる必要はありませんから、必要なときだけ使えます。最近はスマホアプリで提示できる場所も多いので、人目を気にせず割引なども利用しやすいです。
さらに大阪市の場合、地下鉄やバスが半額、無料になる磁気カードを発行してもらえます。
長男のために調べ始めた自立支援医療制度でしたが、こうした制度や医療助成など、もっと知っておいたほうが良いなと思い始め、次に選んだパート先は薬局事務でした。実際に働き始めてからは、保険制度や助成の仕組みについてより深く学ぶことができています。例えば、大阪市では自立支援医療制度で利用する薬局を2軒まで登録できると知りました。まだまだ知らないことがたくさんあると思いますが、お仕事しながら学べてとても助かっています。
執筆/ゆたかちひろ
(監修:初川先生より)
お子さん方、ゆたかさんご自身の受診先、医療費の負担額、そして発達障害に関する福祉制度についてのコラムをありがとうございます。子どもの発達面に関して気になることがある場合に、まずはかかりつけの小児科やあるいは相談機関などで紹介された児童精神科や小児神経科などを受診されることと思います。ただ、お子さんがいわゆる思春期年代に入っていると、小児対象の科から対象外となる場合があります。初診の対象年齢が例えば13歳までなど、クリニックや病院によって決まっているところもありますので、そのあたりはご注意ください。高校生の年代に入っていれば、大人向けの精神科が選択肢に上がってきます。大人向けの精神科の場合だと、今度は発達障害を得意とした医療機関かどうかも事前にホームページでチェックしておくと良いでしょう(例えば、働いている人向けの、主に抑うつなどストレス関連疾患を対象にしたクリニックもあります。発達障害に関して受診したい場合は、対象となる疾患・障害として挙がっているかを確認しておきたいところです)。
さて、自立支援医療制度ですが、こちらは長く受診している人でも知らない方もいらっしゃるように感じます。通院が定期的、継続的、長期に渡る場合に、その診察代、薬代などの負担を軽減するための福祉制度の一つです(障害者総合支援法に定められた「自立支援医療(精神通院医療)」制度)。医師からその制度の利用を勧められる場合もあれば、患者側から問い合わせてその話になる場合もあるように感じます。また、医療機関によってはその制度の適用外の機関もあるので、継続的に今後も通いそうだとなった場合に、まずは主治医の先生にご相談してください。診断書をもらい、自治体の福祉や障害の窓口で手続きをします。有効期限は1年間で、必要に応じて継続することができます。
また、障害者手帳については、発達障害の場合、精神障害者保健福祉手帳を取得できる場合があります。知的障害(知的発達症)の場合は、療育手帳(東京都では「愛の手帳」と呼ばれます)があります。精神障害者保健福祉手帳は、精神科や児童精神科を初めて受診した日から半年が経過したら申請することができます。手帳を取得するメリットとしては、ゆたかさんが書かれていた「金銭的な負担軽減」になること、また、成人後に就労する場合に(必要ならば)支援を受けながら働くことができることなどがあります。障害の等級に応じて、大人も子どもも所得税・住民税・自動車税等の控除や、公共交通機関の割引や減免、携帯電話基本料金の割引、レジャー施設などでの無料または割引が適応されます。手帳を持っていることは自分から伝えない限りは知らせる必要はないため、手帳を取ったからといって、即何かが変わるというものではありません。これまでの発達ナビのコラムでも、お子さんがASD(自閉スペクトラム症)でパニックが起きやすい場合に、水族館や博物館など長時間楽しめずにすぐに退出してしまうことが多い方が、手帳のおかげで無料で入れるため、料金のことを気にせず何度でも行きやすかったと書かれていたコラムもありました。手帳取得のデメリットとして、民間保険に加入しづらいことやローンを組みづらいという面もあるようですが、最近は民間保険にも加入しやすくなってきたと言われています。医療費助成や手帳のことなどは、まずは自治体の役所(障害や福祉の窓口)で、情報収集やご相談されることをお勧めします。
日本の福祉制度は申請主義、つまり必要としている人が自ら申し出ることで福祉を受けることができる制度のため、知らないと損をしてしまうということが残念ながらあります。ゆたかさんは自立支援医療制度をきっかけに保険制度や福祉制度について気に留めて勉強されたとのことですが(すばらしいです!)、何か使える制度はなかろうかと一度調べてみる(あるいは役所で相談する)と良いと思います。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。