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フレデリック、初の日本武道館を至福の"ASOVIVA"に 「俺らは俺らの遊び方で世の中をおもしろくしていきたい」

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フレデリック 撮影=渡邉一生

FREDERHYTHM ARENA 2021~ぼくらのASOVIVA~ 2021.2.23 日本武道館

この日、フレデリックが本編のラスト・ナンバーに選んだのは、「されどBGM」だった。新型コロナウイルスが世界中に蔓延するというまさにディストピアと化した2020年。音楽という文化の存続が危機にさらされたとき、彼らが自分たちのステートメントとして、「されどBGM」をデジタル・リリースしたことを思い出せば、それ以外に本編を締めくくるのにふさわしい曲はなかったと思うが、その「されどBGM」を演奏する前に三原健司(Vo/Gt)は自身初の日本武道館公演に臨む気持ちを、こんなふうに観客に語りかけた。

フレデリック 撮影=渡邉一生

「この1年、こういう状況の中で、どういうふうにみんなを楽しませようかひたすら考えてきました。ちょっと変わったことをしてみようとか、背伸びして、俺らにないレベルを求めてみようとかいろいろ考えてみました。俺らに変えられるものなんて思ったこともありました。そんなとき、10代の頃、うちのお母さんに言われた、“あなたの中にいいものがたくさんあるのに、あなたはそれを無視して理想ばかり追いかけている”という言葉を思い出して、自分たちを見つめ直してみたら、自分たちの中に宝物がたくさんあることに気づきました。それをほじくり返して、このASOVIVAでいろいろやらせてもらいました!」

フレデリック 撮影=渡邉一生

確かに、振り返ってみれば、オープニングとエンディングに撮り下ろしのショート・ムービーが加えられていたものの、ステージのバックドロップに映し出した映像とダイナミックなライティングを駆使した、きらびやかな音と光のファウンテンなんて言ってみたいライブは、これまでフレデリックがライブハウスからずっとやってきたものだ。もっともライブハウスでやっている頃からアリーナを視野に入れてきたからこそ、そういうライブができたと言えるところもあるわけだが、とまれ、初の日本武道館だからと殊更にこれまでと違うことや新しいことに挑むのではなく、フレデリックは正攻法でロックの聖地に真正面からぶつかっていった。

フレデリック 撮影=渡邉一生

筆者はこの日、何度、4人の熱演に自宅のPCの前で身を乗り出したことだろう。配信ライブでさえ、それだけ熱気が伝わってきたんだから、実際、武道館で観ていたら!? そう思うと、状況が状況とは言え、天井の高い武道館に鳴り響く熱演を、生で体験できなかったことがただただ恨めしい――。

フレデリック 撮影=渡邉一生

「Wake Me Up」のMVに登場以来、バンドのマスコットとして人気のwakemeがまずステージに現れ、深々と一礼。前述したショート・ムービーが観客の気持ちをぐーっとステージに集中させてから、「始めます!」という健司の言葉からなだれこんだのは、新たなダンス・ビートをアピールした「Wake Me Up」。そこから今現在の世の中のもやもやした空気に対するメッセージにも思えた「シンセンス」「逃避行」とアップテンポの曲を繋げながら、ハンドマイクの健司がアリーナの真ん中に作ったセンター・ステージに伸びた花道のみならず、ステージから左右に伸びた袖も使って、最後列はもちろん、端から端まで、会場全体に歌を届ける。すると、声こそ出せないものの、精一杯身振り手振りで観客が応え、あっという間に大きな盛り上がりが生まれていった。

フレデリック 撮影=渡邉一生

そんな盛り上がりを、さらに大きくしたのが、「せっかくのASOVIVAやで。みんな、どうすんの?遊ぶの?遊ばないの?遊ぶよな! 遊びきってから帰れよ!」と健司が観客を煽り、赤頭隆児(Gt)と三原康司(Ba/Vo)が左右に伸びた袖を走った「KITAKU BEAT」! 彼らのライブでは後半戦をさらに盛り上げる起爆剤に使われることが多いという印象があるこの曲を序盤も序盤、4曲目に持ってきたところからもこの日、彼らがどんなライブを展開しようとしていたかが窺えるではないか。いつも以上に熱を込めた演奏に、こんなに激熱の曲だったっけ!?と面食らう。

フレデリック 撮影=渡邉一生

「これまで武道館でいろいろなアーティストのライブを観ながら、すごいな、楽しいなと思う一方で、俺が武道館に立ったとき、どういうことをしたら、みんなは楽しいんだろうと考えてました」

そんなふうに武道館にまつわる思い出を語った健司は、「目の前の景色だけじゃなくて、みんなも自分自身の思い出を重ねてください」と観客にリクエスト。「今日初めてという人は、何を着ているのかとか、誰と観ているのかとか、今日を思い出にしたらいいんじゃないですか。そんなふうにあなただけのフレデリックのASOVIVAを作っていきましょう」

フレデリック 撮影=渡邉一生

このMCが大団円の伏線になっていたことは、もちろんこの時点ではまだ誰も気づいていない。それは後述するとして、前半戦の折り返しは、いつも以上にリズムを強調した「トウメイニンゲン」に加え、レゲエ調の「もう帰る汽船」、リフものの「ふしだらフラミンゴ」「他所のピラニア」、そしてファンキーなサウンドにヒップホップのエッセンスを取り入れた「正偽」といった曲を並べ、ある意味玄人好みのバンド・アンサンブルのおもしろさをアピール。

フレデリック 撮影=渡邉一生

そして、3日前に31歳の誕生日を迎えた健司と康司に赤頭と高橋武(Dr)がそれぞれプレゼントを贈ったというエピソードがあいかわらずの仲の良さを印象づけたメンバー全員参加のMCコーナーでは、それぞれ異口同音に武道館のステージに立った感慨を語りながら、「康司の曲がここまで連れてきてくれた」という健司の一言に「いや、泣く泣く。そんなの! 泣くぞ!」と康司が感極まる場面も。

「みんな、同じ気持ちだと思うんだけど、ツアーで観たお客さんの表情……マスクしててもわかるんだけど、それとSNSのちょっとした言葉に本当に救われたと感じる1年でした。どうもありがとう!」(高橋)
「その気持ちを持ったまま後半戦に行きましょうか」(健司)

フレデリック 撮影=森好弘

後半戦は、まずセンター・ステージで4人が向かい合い、「ミッドナイトライダー」「うわさのケムリの女の子」をFAB!!(フレデリック・アコースティック・バンド)バージョンで披露。アップテンポのオリジナルを、哀愁のラテン調にアレンジした「ミッドナイトライダー」に思わずニヤリとせずにいられなかった。ロックの聖地に真正面から挑む以上、惜しみなく自分たちポテンシャルを見せつけなければ!

フレデリック 撮影=森好弘

そんなFAB!!の大人っぽい落ち着いたトーンから一転、高橋のドラム・ソロからなだれこんだ「まちがいさがしの国」からラストスパートをかけるように、いつも以上に歌に感情を込めた「TOGENKYO」「スキライズム」とバンドの演奏は一気に熱を上げる。

フレデリック 撮影=渡邉一生

そして、「今日この時間を選んでくれてありがとう。あなたのオンリー・ワンに感謝します」と健司が言いながら繋げたキラー・チューン「オンリーワンダー」では、手拍子で熱演に応える観客の上にキャノンで放たれた無数の紙吹雪が舞い落ち、クライマックスに相応しい景色を作り上げる。そこから、前述したとおり、「俺らは俺らの遊び方で世の中をおもしろくしていきたいと思います」(健司)と「されどBGM」で本編を終えたバンドは、その後、さらにアンコールとして新曲2曲を含む3曲――シンガロング・パートが印象的な爽やかなギター・ロック・ナンバー「サーチライトランナー」、代表曲中の代表曲と言える「オドループ」、そして「名悪役」を演奏した。

フレデリック 撮影=渡邉一生

シンガロング・パートが新たなライブ・アンセムになるんじゃないかと予感させる「サーチライトランナー」、熱演を繰り広げるバンドと観客が一つになった「オドループ」、ちょっとトゲを感じさせる「名悪役」。それぞれに見どころ、聴きどころはあったと思うが、終演を告げるエンド・タイトルが流れたあと、改めてステージに現れ、「ただの思い出にされるのはイヤなので、もう1曲、新曲をやって帰ります」と披露した「名悪役」がやはり重要だ。

フレデリック 撮影=森好弘

この曲はダブル・アンコールではなく、新たなスタートという位置づけで考えるべきなのだろう。エンディングのショート・ムービーからもそのメッセージは明らかに読み取ることができたが、新たにスタートに持ってきた曲が、すでに書いたようにトゲを感じさせるところがおもしろい。いや、頼もしい。

フレデリック 撮影=渡邉一生

「フレデリックはまだまだ続いていきます!」と最後の最後に三原健司は宣言したが、初の武道館公演は彼らにとって、いつも以上に通過点に過ぎないように感じられた。フレデリックのこれからがますます楽しみになってきた。

取材・文=山口智男 撮影=森好弘、渡邉一生

フレデリック 撮影=森好弘

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