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腎臓が悪くても果物や野菜を食べてもいいの? 上手にカリウムを摂取するポイントとは

「みんなの介護」ニュース

下田 由美

「腎臓病にはカリウム制限が必要」という情報を知ってから、カリウムが豊富な野菜を減らしたり好きな果物を控えたりしている方はいませんか?食事を制限し過ぎると楽しいはずの食事も楽しめなくなってしまいますよね。

確かに腎臓病にはカリウム制限が必要な場合もありますが、すべての方が食事制限の対象になるわけではありません。

腎臓の機能によって食べ方が変わるので、正しく判断することが大切です。今回は腎臓に不調をかかえている方のために、腎臓機能の段階に合わせたカリウムの摂り方と上手に摂取するポイントをご紹介します。

腎臓とカリウムの関係

腎臓が悪くなるとなぜカリウム制限が必要になるのでしょうか?まずは腎臓とカリウムの関係について解説します。

腎臓の働き

腎臓は身体に溜まった老廃物をろ過して、尿として体外に排せつする働きがあります。また赤血球や血圧の調整に必要なホルモンを分泌します。ほかにも体内の水分や血液中のナトリウム、カリウムなどの電解質を調節する役割もあるのです。

腎臓の機能が低下すると、血液中のカリウム値が上がってしまい、細胞内にカリウムが溜まることで不整脈などのリスクが高まってしまうため注意が必要です。

腎臓病とカリウム制限

正常な腎臓はカリウムが多い、少ないにかかわらずカリウム濃度が一定に保たれています。これは、必要な分は再吸収し不要なものは排出して体内のバランスを維持しているためです。

しかし腎臓の機能が悪くなると、これらの働きが低下してしまい、食事制限が必要になるケースがあります。ただし腎臓の機能が落ち始めてからすぐにカリウム制限が必要になるわけではありません。腎臓病の進行度による食事制限の目安は以下のとおりです。

ステージG1 (GFR≧90)  :基本的にカリウム制限は必要ない
ステージG2 (GFR60~89):基本的にカリウム制限は必要ない
ステージG3a(GFR45~59):基本的にカリウム制限は必要ない
ステージG3b(GFR30~44):2000mg/日以下
ステージG4 (GFR15~29):1500mg/日以下
ステージG5 (GFR<15) :1500mg/日以下

ステージG1~G3aまではカリウムを制限する必要はありません。カリウムの摂り過ぎにより腎機能が低下するのではなく、腎機能の低下によりカリウムの排せつが難しくなった結果、カリウム制限が必要になるのです。ただし服用中の薬や症状などによって制限が変わる場合もあるため、専門医に相談しながら調節していきましょう。

カリウムは多すぎても少なすぎても良くない

腎臓病になるとカリウムを必要以上に制限する方がいますが、腎臓に合わせて食べ方を調整することが大切です。米国のバージニア大学医学部の研究によると、慢性腎臓病の方はカリウムを豊富に含む野菜や果物の摂取量が少ない傾向があることが示されました。

野菜や果物にはビタミンやミネラル、食物繊維、抗酸化物質などが多く含まれています。これらは身体にとって欠かせない栄養素です。野菜や果物の摂取量が減ると、身体に必要な栄養素が不足してしまう可能性があります。

例えば、カリウムは身体に必要なミネラルのひとつで、細胞の浸透圧の調整や神経刺激の伝達、心臓機能や筋肉の調節に関わっています。

またナトリウムを排出する働きがあり、塩分を摂り過ぎたときに体外へ尿として排出します。カリウムは身体にとって必要な栄養素なので、腎臓の状態に合わせて食べ方を考えていきましょう。

「CKD診療ガイドライン2018」では、カリウム値が4.0mEq/L以上5.5mEq/L未満にコントロールすることを推奨しています。腎臓の機能には個人差があるので、定期的に血液データを確認しながら調整することが大切です。

野菜や果物などからカリウムを摂るときのポイント

野菜や果物には身体に必要なビタミン・ミネラルが豊富に含まれています。摂取したい栄養素なので、食べる量や質、バランスに注意しながら摂取することが大切です。

調理法によってカリウムの量が変化する

カリウムの量は調理法によって変わります。たとえば、ほうれん草100gあたりのカリウムは生の場合690mgです。一方茹でた場合は490mg、炒めた場合は530mgになります。

また、大根100gあたりのカリウムは生の場合230mg、茹でた場合は210mg、切り干し大根は10gだけでも350mgあります。なお、電子レンジなどで調理してもカリウムの量は減りません。カリウムは水に溶けやすい性質があるので、水にさらすとカリウムが減ります。

ただし、イモ類のじゃがいもやさつまいもは、調理法によるカリウムの変化が少ないので考慮する必要があります。さつまいも100gあたりのカリウムは生の場合480mg、蒸した場合480mg、焼いた場合500mgとほとんど変わりありません。

どんな野菜や果物を選んだら良い?

腎臓病の方でも自分に合ったカリウムの摂取量の範囲内であれば野菜や果物を食べられます。高カリウム血症にならない程度の摂取量であれば、老廃物の排出や血圧の調整に有効です。

葉物野菜は茹でることでカリウムが少なくなるので、腎臓病の方でも食べやすい食材です。ほうれん草はカリウムが多い食材ですが、茹でてから和え物にして食べることでカリウムの量が抑えられるほか、生野菜をたくさん食べられない方にも向いています。緑黄色野菜と淡色野菜は含まれている栄養素は異なるので、バランス良く食べることが大切です。

また、りんごはほかの果物に比べてカリウムが少なく、水にさらしてから食べたりコンポートにしたりできるのでカリウムの量を調整しやすいでしょう。

カリウム値が高ければ、カリウムの多い食品の摂取量や調理法などを見直す必要が出てくるかもしれません。カリウム値が低ければもう少し野菜を増やしてみる、電子レンジも活用してみるなど、選択肢の幅が広がるでしょう。

ただし腎臓の機能が低下している方がカリウムを摂り過ぎると、不整脈や心停止を起こすおそれもあるため、カリウム制限が必要な場合は主治医の指示に従ってください。

注意が必要な食品

カリウム制限がある方は食べ方に配慮したい食品があります。カリウムの値が高い方は、カリウムを多く含むバナナやメロン、アボカドなどは控えた方が無難です。イモ類もカリウムが多いので気をつけましょう。

バナナはカリウムが多く含まれているので避けた方が良い食べ物ですが、どうしても食べたいときもありますよね。そんなときは小さめのバナナを1/3本ほどにするなど食事全体のカリウムの量をみながら工夫すると良いでしょう。

また、ドライフルーツなどは生の果物を乾燥させて作られたものなので、少量でもカリウムの摂り過ぎにつながる恐れがあります。煮詰めたソースなどもカリウムが多いので気をつけましょう。

反対に缶詰の果物はカリウムがシロップに溶けているため、カリウムの量は少なくなります。食べるときはシロップを切ってから食べましょう。

野菜ジュースは濃縮されて作られているため、生野菜を食べるよりもカリウムや糖質が多く含まれています。ビタミンCや食物繊維も少なくなりやすいので注意が必要です。

意外な落とし穴?カリウム制限をするときに注意したいこと

腎臓に負担をかけないためには減塩を心がけることも大切です。野菜を煮込んだり、炒めたりするときに減塩調味料を使用している方もいるのではないでしょうか?

しかし減塩調味料は塩化ナトリウムの代わりに塩化カリウムが使われているため、知らず知らずのうちにカリウムを摂り過ぎてしまうおそれがあります。物足りないからといって減塩調味料を多く使ってしまうと、塩分摂取量やカリウムの量が増えてしまいます。

とはいえ、最近はカリウムが少ない減塩調味料も販売されているので、上手に活用すると良いかもしれません。

普通の減塩調味料を使用する場合、同じ量のカリウムを摂るならビタミンやミネラルが豊富な野菜や果物から摂った方が、身体に必要な栄養素も摂れるのでおすすめです。香辛料や酢などを上手に活用すると、少ない調味料でも満足感が得られるでしょう。

まとめ

腎臓病になるとさまざまな食事制限が必要になりますが、進行度によって摂取量は変わります。なかにはカリウムを制限し過ぎてしまい、身体に必要な栄養素が不足してしまう方もいるので気をつけなければなりません。

カリウムには高血圧の予防やむくみ改善、筋肉を正常に保つ働きがあります。カリウムを過不足なく摂れるように、主治医と相談しながら食事制限を進めていくことが大切です。

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