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ミュージカル俳優・杉浦奎介インタビュー 30年の道筋をさらけ出すAnniversary Live『MY HISTORY』への想い

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杉浦奎介


ミュージカルを中心に活躍する俳優、杉浦奎介が30歳を記念したAnniversary Live 『MY HISTORY』を2022年7月27日(水)にeplus LIVING ROOM CAFE&DININGで開催する。

東京藝術大学声楽科を卒業後、2016年に『アップル・ツリー』でデビュー。確かな歌唱力を武器に、その後も『レ・ミゼラブル』『サンセット大通り』『イリュージョニスト』といったミュージカルへの出演が続き、役者としての実力を着実に積み上げている。

そんな杉浦に、現在出演中のミュージカル『四月は君の嘘』全国ツアーの合間を縫って話を聞くことができた。インタビューを通して彼の30年を振り返りながら、一夜限りのソロライブ『MY HISTORY』に込めた想いを語ってもらった。

​​ーー毎年ソロライブを開催している杉浦さんですが、今回は『MY HISTORY』と銘打ってひと味違ったライブを開催されるそうですね。

はい。30歳という節目の年なので、これまでとは違った“アニバーサリーライブ”というコンセプトにしました。今までのライブではあまりテーマなどを決めず、そのときに歌いたい曲を歌ってきたんです。今回はタイトル通り自分が生きてきた中で思い入れのある曲や、ターニングポイントとなった作品の曲を歌うライブにしたいと考えています。

杉浦奎介

ーーこのインタビューでも杉浦さんのこれまでを振り返っていきたいと思います。ご実家は音楽教室で、お母様がそこで先生をされていたと。

そうなんです。その影響もあって、小さい頃からピアノやバイオリンに触れていました。でもこうして音楽と関わる道へ進むなんて、僕も母も全く思っていなかったんです。子どものときはあくまで習い事のひとつとして取り組んでいたので。元々僕はお芝居が好きだったんですよ。

ーーお芝居にはいつ頃から興味を持つようになったのでしょうか?

演劇に目覚めたのは、中学に入るくらいだったと思います。昔から人前に出ることが好きなタイプで、小学校の給食の時間にはコントみたいなことをよくしていました(笑)。その頃から、舞台好きな母がよく劇場へ連れて行ってくれたんです。いろんな舞台を観るうちに最初に面白いなと思ったのが、演劇集団キャラメルボックスでした。中学は必ず演劇部があるところにしようと決めて入ったくらい、ハマっていましたね。

ーー杉浦さんは現在ミュージカルを中心にご活躍されていますが、当時はミュージカルではなく演劇がお好きだったんですね。

はい。ただ、演劇をやっていく中でふと思ったんです。役者で芽が出るのはほんの一握り。だから何か武器がほしいな、と。そんなことを考えているときに観たミュージカルに出演していたのが、井上芳雄さんだったんです。最初に井上さんを観たのはミュージカル『マリー・アントワネット』の初演。藝大出身のミュージカル俳優と知り、そういう道もあるということを知りました。しかも井上さんはストレートプレイにも出演していらっしゃったので、ジャンルに縛られず活躍できる人もいるのだなと、その姿は僕にとって目指すところになりました。

杉浦奎介

ーーそこから藝大受験という道が見えてきたんですね。

藝大受験自体は、中学3年のときに親戚と見た紅白歌合戦がきっかけなんです。当時、秋川雅史さんが歌う「千の風になって」が大流行していて、親戚のみんなが「やっぱり声楽の人はいい声で歌うねえ」と盛り上がっていたんです。それを聞いた僕は、一体何の自信かわからないのですが「僕も歌えるよ」と豪語したんです(笑)。今考えると本当に偉そうな話ですよね(笑)。「じゃあ歌ってみなさいよ」と言われて、秋川さんの歌のモノマネをしました。それを聞いた母が「いい声を持っているかもしれない」と思ったらしく、声楽を学んでみなさいと。そこから藝大への道が始まったんです。藝大に入ってからもミュージカルに固執するのではなく、あくまで舞台役者を目指し続けていました。やっぱり演劇が好きだったので、役者になるための武器として声楽を身につけたかったんです。

ーー在学中にミュージカルサークルなどで経験を積み、大学卒業後はいよいよ『アップル・ツリー』(城田優初演出作品)でデビューされました。

『アップル・ツリー』でデビューできたことは、強く心に残っています。今はもうなくなってしまったのですが、当時の藝大には「ミュージカル概論」という授業がありました。僕はその授業がすごく好きだったんです。担当されていたのは青井陽治先生。ミュージカルの翻訳や演出をされている方でした。青井先生にはミュージカルサークルで上演する作品の相談にも乗ってもらっていて、あるとき『アップル・ツリー』を紹介してくださったんです。3部作なのですが、そのうちの最後の1作を在学中に上演しました。大学を卒業する頃に『アップル・ツリー』のオーディション情報を聞き、しかも台本は青井先生の翻訳のものが使われると。「これは縁だな」と思ってオーディションを受け、役者としてデビューすることができたんです。

ーー素敵なご縁があったんですね! その後も着実にステップアップされながら舞台に立ち続けていらっしゃいます。実際に夢が叶ったときはどんな心境でしたか?

自分の中では、特に『レ・ミゼラブル』への出演が大きかったです。小学5年生のときに母が帝国劇場へ連れて行ってくれて、初めて『レ・ミゼラブル』(2003年)を観ました。小学生ながらにすごく衝撃を受けて、いつか出たいなという想いはずっとあったんです。そんな作品のオーディションに受かったときは……正直よくわからなかったですね(笑)。とにかくそのときできることをやるしかなかったので。当時のことは、一生忘れないと思います。

ーー『レ・ミゼラブル』には2017年・2019年・2021年と続けて出演されています。回数を重ねることで見え方や感覚は変わってくるものなのでしょうか?

毎回、全然違う景色です。慣れるということは本当にないですね。3回目はいい意味で少し余裕が出て、視野が広がった感覚がありました。稽古を含めるとほぼ1年近く作品に関わることになるので、正直、後半は精神的にも体力的にもしんどくなってくる部分はあります。大千穐楽を迎えたときには「やっと終わった!」と思うんです。それでも、また2年後には早くやりたいという想いが自然と出てくるんですよね。不思議な魅力がある作品です。

杉浦奎介

ーーちなみに、『レ・ミゼラブル』でいつか演じてみたい役はありますか?

初めて『レ・ミゼラブル』を観たときはアンジョルラスだったんです。吉野圭吾さんが演じていらっしゃって、赤いベストに金髪のロングヘア。旧演出版のバリケードのシーンが印象的で、かっこいいなあと憧れました。でも今の自分の声質や性格を考えると、マリウスも遠くはないのかもしれないなと思います。ある人に言われたのは「声は甘めだからマリウスだけど、見た目は暑苦しいからアンジョルラスっぽいよね」と(笑)。でも将来的には、いつかジャン・バルジャンをやってみたいという想いもあります。

ーーこれまでの出演作を振り返ったときに、特に刺激を受けた作品や人との出会いを教えてください。

2020年の『サンセット大通り』ですね。演出の鈴木裕美さんからかなり刺激を受けました。台本の解釈をするときに「なるほど」と思う読み方をされるんです。でも、(鈴木)裕美さんは決して特別なことをしているわけじゃないんです。僕ら役者が斜めから読もうとし過ぎていたり、ミュージカルという装飾がある作品を過大視して読んでしまっている部分があって。裕美さんはそうじゃなくて、もっとニュートラルな状態で台本と向き合って言葉を受け取っているのだと思います。裕美さんの演出を経験してからは、台本の読み方はもちろん、役の生き方、小道具や衣裳の認識の仕方まで本当に変わりました。

ーーここからはライブに向けてのお話を聞かせてください。会場となるのはeplus LIVING ROOM CAFE&DININGですが、こちらで歌うのは2度目になりますね。

はい。2022年2月に松原凜子さんのバースデーライブにゲスト出演したとき以来になります。ライブハウスで100席以上あるところってなかなかないんですよ。音響も素晴らしいですし、駅からのアクセスもいいですし、さらに食事も楽しめる! 天井が高くて空間も広くて、本当にいいところですよね。

杉浦奎介

ーーライブのバンド編成はどんな感じになりそうですか?

ピアノ、ベース、ドラム、ギターの予定です。ピアニストはいつも僕のライブで演奏してくれている柳川瑞季さん。構成を考えるときに相談したり、楽曲のアレンジをしてもらっています。いつも歌よりトークが長くなっちゃうタイプなので、そういうときは柳川さんが「そろそろ歌いましょう」とツッコんでくれるんです(笑)。

ーー直近では『イリュージョニスト』『イントゥ・ザ・ウッズ』『四月は君の嘘』などの出演を経ての今回のライブですが、セットリストには出演作の楽曲が中心に入ってくるのでしょうか。

もちろん入れようとは思っています。でも、毎年ソロライブをやっていると既に歌っている曲が結構あるんですよね。今ちょうどセットリストを考えているのですが、ミュージカル作品の中で僕のような男性が歌うソロ曲って限られてくるんです。なので、今回はあえて男性の曲じゃなかったり、あまりライブで歌われないような隠れ名曲を入れたりしていこうかなと。

ーーなかなかコアなライブになりそうですね。

そうですね、王道はあまりやらないかもしれません。来てくださるお客様がどの時点で僕を知ってくださったのかはわからないのですが、この30年を結構遡ると思います。「こういうルーツだから今こういうパフォーマンスをするんだな」という答え合わせができるかもしれないし、逆に「こういうルーツの人だからこれからはこんな面が見えるかもしれない」という期待もしていただけるかもしれません。僕が生きてきた30年の道筋をさらけ出すライブになると思います。

ーー最後に、役者としてお仕事をされていく上で杉浦さんが大切にしていることを教えてください。

いろんなタイプの役者さんがいると思うのですが、常に杉浦奎介の色を出していたいなと思います。役者さんによっては完全に自分を消して役を演じる方もいますが、僕が演じたらこうなるという役を表現したいし、僕にしか歌えない歌を歌いたい。自分なりの解釈を通した表現を掲示していきたいなと思います。

杉浦奎介

取材・文・写真(インタビューカット以外)=松村蘭

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