レクに積極的ではない高齢者に参加を促す家族との情報連携
【科目】介護✕レク 【テーマ】レクリエーションに参加してもらうコツ
【目次】
高齢者がレクに参加したくない理由
家族の情報をもとにレクの参加を促した事例
レクへの参加を促すためのポイント3つ
新潟県燕市を拠点として活動する、若年性認知症サポートセンター・スワロー代表の小林です。
介護施設で風船バレーや塗り絵などのレクにお誘いしても「今日はいいです」と参加を断る高齢者も少なくありません。
そこで、私の経験をもとに高齢者がレクに参加しない理由と、参加を促すためのポイントを解説します。
高齢者がレクに参加したくない理由
高齢者の方に参加しない理由を聞くと「子ども扱いされるのが嫌だ」という声をよく耳にします。つまり、レクを子どもの遊びだと捉えており、参加意欲がそがれてしまっているのです。
そういったとき、まずは「レクの主役が高齢者となっているか」を考えることが大切です。
多くの施設では、スタッフがレクを企画して高齢者の方に提供しています。一方、提供される高齢者の方は「いつもお世話になっている」という感謝の気持ちから、スタッフに合わせて参加するケースもあります。
そのため、参加してくれているからといって、高齢者の方が心から楽しんでいるとは限りません。レクを提供するときに考えなければならないのは、自分が高齢者の立場になって、「参加して楽しいと思えるかどうか」です。
家族の情報をもとにレクの参加を促した事例
高齢者の立場になって考える際、ご家族から私生活について聞くことが参考になります。伺った内容をもとにレクを企画することで、高齢者の参加につながります。
私が勤務しているデイサービスセンターでも、レクを促しても参加しない方はいます。スタッフ間でどうしたらスムーズに参加していただけるか話し合った結果、ご家族との連絡帳を通して、ご本人の今までの生活歴や趣味について伺いました。その方は集団レクが苦手だったので、個別レクに切り替えたところ、参加にこぎつけることができました。
事例:75歳男性 自営業 妻と二人暮らし
ご家族に聞き取り前の状態は、風船バレーなどへの参加を促しても「今日はやらない」と言って断られていました。
ご家族に話を聞いたところ、仕事一筋で趣味はなく、きれい好きで細かい作業が得意との情報がありました。
エコバッグの作成が上手だったので、「ほかの利用者にエコバッグづくりを教えてほしい」と依頼したところ、笑顔も増えて、楽しそうに参加するようになりました。
スタッフとも話す機会が増え、完成したエコバッグを家に持ち帰って、ご家族にも喜んでもらったそうです。
後日、ご家族からも「デイサービスで自分の居場所が見つかった」と喜んでいたとお話を伺いました。その後、集団レクにも毎回参加し体を動かすようになり、デイサービスに来るのを楽しみにしているというお話も伺いました。
レクへの参加を促すためのポイント3つ
ご家族に今までの生活歴や趣味を聞き、集団レクと個別レクのどちらが良いか検討して決める
高齢者の方を決して子ども扱いしない
レクの内容を決めるときは、高齢者の方の話を聞き、スタッフが中心にならないように注意する
どの施設でもレクを企画しても、参加したがらない人はいるかと思います。担当者はいろいろな方法を用いると思いますが、大切なことは「高齢者が楽しいと思えるかどうか」という原則です。
その際、利用者だけでなく、ご家族の協力も欠かせません。スタッフとご家族との情報共有も、施設での時間を円滑に過ごすために必要なのです。
最後に、数年前に亡くなった私の父のことをお話したいと思います。
父は長年事務職で、趣味は夫婦で社交ダンスを楽しむ社交家でした。そんな父もデイサービスに行くと、レクにはあまり参加しませんでした。本人に話を聞くと「子ども扱いをされている」という答えが返ってきたので、相談員と話し合いレクに社交ダンスを取り入れてもらいました。
その結果、デイサービスで自分の役割や居場所を見つけることができ、毎日デイサービスを楽しみにしていたことを思い出しました。利用者の家族と施設の連携はレクだけでなく、利用者本人の生活の質向上につながるのです。