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「成長できたというより、成長させてもらった」岸本隆一&桶谷大HCが琉球ゴールデンキングスで得た経験と、残した“財産”とは

OKITIVE

ファンの声援に応えながら花道を歩く岸本隆一と桶谷大HC(長嶺真輝撮影)
手を振りながら、花道を後にする岸本隆一=5月31日、沖縄サントリーアリーナ(長嶺真輝撮影)

衝撃のニュースが、沖縄、そして日本全体のバスケットボール界を駆け巡った。 Bリーグ・琉球ゴールデンキングスの生え抜き選手として14シーズンを戦い、“ミスターキングス”と称された岸本隆一が退団し、京都ハンナリーズに移籍することが発表された。 さらに、bjリーグ、Bリーグを合わせて9シーズンにわたりキングスを率いた桶谷大HCも退任。桶谷氏の良き理解者であり、盟友として直近2シーズンを共闘した佐々宜央アソシエイトヘッドコーチもチームを離れることとなった。 特に岸本と桶谷HCについては、キングスの歴史そのものと言っていいほど、クラブが常勝チームになる礎を築いた功労者だ。キングスはbjリーグで4度、Bリーグで1度、天皇杯全日本選手権で1度、それぞれ優勝しているが、この2人の経歴を合わせると、すべてに関わっている。 5月31日に開かれた2025-26シーズン報告会の後、岸本と桶谷HCがキングスの一員として最後のメディア取材に応じた。

岸本、声を詰まらせる場面も

シーズン報告会でトークする岸本隆一(長嶺真輝撮影)

「今シーズンをもって、退団することになりました」。そう口にすると、最後の挨拶でマイクを握った岸本が、声を詰まらせ、後ろを向いた。「誰かおもしろいこと言って」と、少しおどける。涙が出るのを必死に堪えていたようだ。気持ちを整え、再び前を向き、詰めかけた約8千人のファンへ深い感謝を伝えた。 「いろいろありましたけど、ここで学んだことを胸に、次に進んでいきたいと思います。それぞれいろんな道があると思うんですけど、決してここは終わりではないので、しっかり、これからも前進していきたいと思います。今シーズンもそうですけど、長い期間、本当にありがとうございました」 沖縄サントリーアリーナは、この日一番の盛大な拍手に包まれた。 報告会終了後、メディアにこの時の心境を問われると、「いや、ほんと泣いてないですけどね。泣いてはいないですけど」と笑いを誘ったうえで、こう続けた。 「ファンの方々に感謝の気持ちを伝えたいという思いがあったんですけど、いざあの場に立つと、消化できないくらい、いろんな気持ちがバッとこみ上げてきました。 いろいろありましたけど、そのたびに、本当にたくさんの方に支えられていたんだなということを実感して、少し言葉に詰まりました。 本当はもっと言いたいことがあったんですけど。あの時に話せる範囲で、思いが伝わる言葉を言えたかなと思っています」

「また交わる瞬間に、最高の自分たちで会えたら」

メディアの囲み取材に応じる岸本隆一(長嶺真輝撮影)

岸本は1990年生まれの名護市出身。北中城高校から大東文化大学に進み、2013年1月にbjリーグ時代のキングスに加入した。2013-14シーズンにクラブ3度目の優勝をけん引し、新人賞を獲得。2015-16シーズンから3季はキャプテンも担った。 2016-17シーズンから始まったBリーグでも主力を張り続け、2022-23シーズンに初優勝を経験。リーグ全体でも数少ない生え抜き選手として、一線で活躍し続けた。 この14シーズン、「本当に必死だった」と振り返る岸本。勝ち負けのある世界のため、結果を残せたこともあれば、残せなかったこともある。すべての経験を通して選手としても、人として成熟していった。「成長できたというよりも、成長させてもらったという気持ちです」と、改めて感謝を口にする。 14番を背負ったその背中は、他の選手にとっても指針となっていたことは間違いない。キングスの選手たちに、どんなことを引き継いでほしいかを問われると、こう答えた。 「個人としては違う道に進むことになりますけど、勝負していることに変わりはない。そこにこだわりを持って進んでいきたいです。コートで結果を求めるということで、自分たち選手は、自分たちの価値を証明できる。 また交わる瞬間に、最高の自分たちで会えたらいいなという思いもあるので、とにかく勝負にこだわって、これからもお互いに前進していきたいです」 このコメントのほかにも、「コートの中で結果を出すということは、ずっと自分なりにこだわってきました」とも、岸本は言った。この勝負に対する真摯な姿勢をキングスに根付かせたことは、功績の一つだろう。

桶谷HC、成長を通して「日本代表HCにもなれた」

トークショーで笑みを浮かべる桶谷大HC(長嶺真輝撮影)

桶谷大HCがキングスで残した成績は、圧巻の一言だ。 bjリーグ時代の2008-09シーズンにヘッドコーチに就任すると、いきなり優勝を達成。 それを合わせ、4シーズンで優勝2回、準優勝1回、3位1回を記録し、退団した。各チームを渡り歩き、2021-22シーズンにキングスヘッドコーチに再登板してからは、5シーズン連続でCSファイナルに進出し、2022-23シーズンには初優勝に導いた。 リーグ屈指の人気クラブで指揮を執ることに大きなプレッシャーもあったはず。その中で責任を全うし、コーチとして成長していった。 「日本一のファンの前で指揮を執ることは特別なことで、プレッシャーもあります。そういった中で仕事をするためには成長しないといけないし、クラブを大きくしていかないという思いもありました。 沖縄にいられたからこそ、僕自身が成長できて、日本代表のヘッドコーチにもなれたんじゃないかなと思います。このキャリアを作ってもらったのもキングスだと思っています」 再び指揮官に就いた時は、「キングスのカルチャーをまた引き継いでいけるのか、成熟させていけるのか、不安はすごくありました」と振り返る。「あっという間だった」と言うほど、全力で駆け抜けた5年間を経て、手応えも口にした。 「5年連続のファイナル出場が簡単じゃないことは理解していますが、記録だけじゃないと思っています。 お客さん、関係者の方々に『キングスの試合っておもしろいよね』『また見に行きたいよね』と思ってもらえることこそがキングスのカルチャーだと思っています。 おこがましいですけど、先人たちが築いたものを継承できたんじゃないかという思いは、少しはあります」

バトンを継ぐマクヘンリー氏への言葉

メディアの取材に応じる桶谷大HC(長嶺真輝撮影)

岸本と同じく、桶谷HCも報告会の最後、ファンを前に感謝を口にした。   「本当に5年間、応援ありがとうございました。これからはマクヘンリーと穂坂がキングスのウイニングカルチャーを引っ張っていくと思いますので、ぜひ、これからも応援よろしくお願いします」 来シーズンからは、アシスタントコーチ(AC)だったアンソニー・マクヘンリー氏がアソシエイトヘッドコーチとなり、実質的にチームの指揮を執ることになる。同じくACだった穂坂健祐氏をアソシエイトコーチ兼ヘッドコーチとして試合に登録し、ともにけん引していく。 マクヘンリー氏については、bjリーグ時代に4つのチャンピオンリングをキングスにもたらした功労者であり、選手時代の背番号「5」は永久欠番となっている。2022-23シーズンを最後に信州ブレイブウォリアーズで引退後、桶谷HCに「日本一のヘッドコーチの下で勉強がしたい」と連絡を入れ、ACに就任した。 報告会の後、桶谷HCはマクヘンリー氏への思いを語った。 「これから、マックもアシスタントコーチとヘッドコーチが全然違うということを感じると思います。ただ、ヘッドコーチになった時にどうしていこうということは、少なからず考えて仕事をしていたはずです。経験を積まないと簡単にできるものではありませんが、経験を積む中で、どんどんヘッドコーチらしくなるはずです。キングスのウイニングカルチャー以上のものを作り上げてほしいなと思います」 穂坂氏を含め、桶谷氏が重視した、それぞれの個性を生かしながらチームとして戦うというキングスらしさは引き継がれていくだろう。 桶谷氏が強化したのはトップチームだけではない。ユースチームにおいても、キングスU15のHCに現U17日本代表ヘッドコーチの末広朋也氏が就き、キングスU18は昨年から、各チームのトップチームでHCを担ってきた浜口炎氏が率いる。2人とも、桶谷HCの存在が加入の大きな理由の一つだった。 キングスに長く在籍し、コーチ、選手として日本バスケットボール界全体に名を馳せるほど成長した桶谷HCと岸本。同時に、プロとしての戦う姿勢や、バスケットボールを楽しむ文化、貴重な経験を積んできたコーチ陣、ユースの育成環境など、多くの財産をクラブに残した。これらは、キングスのさらなる発展の礎となるはずだ。

ファンの声援に応えながら花道を歩く岸本隆一と桶谷大HC(長嶺真輝撮影)

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