福山駅前シネマモード 〜 昭和22年開館の映画館に幕。新たに美術館と映画・カフェを融合した事業に挑戦/福山市
福山市の映画文化を支えてきた、JR福山駅前にある映画館「福山駅前シネマモード」。
同館が2026年(令和8年)6月30日をもって閉館すると発表され、福山市民や映画ファンに衝撃が走りました。
福山中心市街地に残る唯一の映画館として、ミニシアター系作品やアート系作品を数多く上映し、県内外の映画ファンから愛されてきた同館。
同館を運営する株式会社フューレックは新たな展開として、美術館とカフェ、映画を融合させた事業を開始しています。
シネマモードの歴史や特徴を振り返るとともに、閉館の理由や新たな挑戦について、支配人の藤井信さんへのインタビューを交えて紹介します。
個性的な映画を上映する映画館・福山駅前シネマモード
福山駅前シネマモードは、福山市中心部・JR福山駅前にある映画館です。
天満屋 福山店の北向かいにある「藤本ビルディング」の1階・地下1階にあります。
コワーキングスペースの「halappa(ハラッパ)」や「AREA INN FUSHIMICHO(エリア・イン・フシミチョウ)」のレセプション、サウナの「カプセル&サウナ 日本」などと同じ建物です。
2つの劇場を備えており、1階にある「福山駅前シネマモード1」の座席数は210席。
地下1階の「福山駅前シネマモード2」は、134席あります。
福山駅前シネマモードの特徴は、地方ではあまり上映されない「ミニシアター系作品」「アート系作品」などを中心に上映していること。
海外で話題のアート系作品や、注目の若手監督の作品など、他の映画館とは異なる個性的な映画が鑑賞できるのが強みです。
そのため、遠方からはるばる足を延ばして映画を楽しむ観客も多く、映画好きが集まる映画館として親しまれています。
福山駅前シネマモードの起源は昭和22年設置の仮設映画館
福山駅前シネマモードを運営しているのは、株式会社フューレック(以下、「フューレック」と記載)です。
同社の歴史は非常に古く、1897年(明治30年)にまでさかのぼります。
現在の福山市笠岡町の本通商店街に芝居小屋「大黒座」を設立し、演劇の興行を上演したのが、同社の起源です。
太平洋戦争のときに福山大空襲で被災しましたが、終戦直後の1945年(昭和20年)に大黒座を映画館として再建。
さらに1947年(昭和22年)に、駅前で仮設の映画館を開始しました。翌年には、常設の映画館「日米館」を設置。それが現在の藤本ビルディングがある場所です。
1967年(昭和42年)には、仮設の映画館の場所に藤本ビルディングを建設。1階と地下1階に映画館「ピカデリー劇場」「日米劇場」を開設しました。
2007年(平成19年)にリニューアル工事を実施。2013年(平成25年)には現名称の「福山駅前シネマモード」に改称します。翌2014年(平成26年)に大黒座が閉館してからは、福山駅前で唯一残る映画館になりました。
そして、福山駅前シネマモードは2026年6月いっぱいでの閉館を決定したのです。
なお、フューレックは他にも、福山市北部・神辺町のショッピングモール・フジグラン神辺内にあるシネマコンプレックス「エーガル8シネマズ」も運営しています。
新事業の「ミュージアムカフェ ルミエール」
2026年6月末の福山駅前シネマモード閉館により、福山市中心部から常設の映画館はなくなりますが、フューレックによる駅前での映画事業は存続します。
同社は2026年4月より新たな映画事業を開始しました。それが「ミュージアムカフェ ルミエール(以下、「ルミエール」と記載)」です。
ルミエールは、福山城公園内にある美術館「ふくやま美術館」の1階にあります。
通常はカフェとして営業し、店内イベントとしてアート系を中心とした映画を店内で上映するという、同社の新たな取組です。
カフェとしてのメニューは、市内の老舗喫茶店「炭火珈房 ピトン」が監修したコーヒーとワッフル各種が看板。
他にも、たまごサンドやホットドッグ、ナポリタン、ソライロコーラ、6色のクリームソーダなどがラインナップしています。
店内の大きな窓からは、庭園とオブジェ「蓮の泉」、その向こうには歴史ある建造物である「旧内藤家長屋門」、さらに奥には福山城天守が見えます。
窓際のカウンター席は、特等席といえるでしょう。
6月末をもって長い歴史に幕を下ろし、新たな展開へ進む映画館・福山駅前シネマモード。
支配人の藤井信(ふじい まこと)さんにインタビューを行いました。
福山駅前シネマモードの支配人・藤井信さんへインタビュー
2026年(令和8年)6月末をもって長い歴史に幕を下ろし、新たな展開へ進む映画館「福山駅前シネマモード」。
支配人の藤井信(ふじい まこと)さんに閉館の経緯や閉館に向けての企画、今後の新たな展開などについて話を聞きました。
大手とは違った上映作品と希少な設備が特徴のシネマモード
──福山駅前シネマモードの特徴とは。
藤井(敬称略):
当館は独立系の映画館ですので、どの映画配給会社の作品でも上映できるのが強みです。
その強みを生かし、大手映画館が上映しないようなマイナーな作品、東京などの大都市や、海外などで話題の作品、若手監督の作品などを上映しているのが特徴。
あまり上映されていない映画を目当てに、県外などの遠方から足を運ぶファンも多く、映画ファンの方々にとても好評です。
また当館は2つのスクリーンを有しており、それぞれ違った特徴があります。
1階の「シネマモード1」は、2階バルコニー席があるのが特徴。上から見下ろすように映画が鑑賞できる、プレミアムな席です。
料金は、1階席も2階席も同じになります。
地下1階の「シネマモード2」は、音響設備が特徴的です。
音響ブランド「TAD」のサブウーファースピーカーを設置しており、重低音が体の芯にまで響くような、迫力ある「激音上映」が売りです。
あと、湾曲スクリーンも特徴ですね。昔は多かった形式ですが、現在は少なくなった希少なスタイルなんです。
35ミリフィルムの映写機が残っているのも希少ですね。しかも、まだ現役で動かせます。年に数回、古い作品を上映するときに稼働しているんです。
設備老朽化や利用者の生活様式の変化のため閉館を決意
──2026年6月での閉館を決めた理由は?
藤井:
施設の老朽化が大きいですね。1967年(昭和42年)に建設されたので、もうすぐ築60年。
映画館という特性上、修繕をするには非常に大がかりな工事が必要です。当然、それに伴って費用も期間もかかります。
あとは当館で客層として多かったシニア層の方が、コロナ禍を経て生活様式が変わり、来館数が減少したこともありますね。
コロナ禍で、インターネットでの動画配信で映画を楽しむことが増えたと感じており、その影響があるかもしれません。
ちなみに閉鎖するのは映画館だけで、藤本ビルディング自体は残ります。同じビルにあるコワーキングスペースやゲストハウスのレセプション、サウナなどは継続して営業を続けますので、ご安心ください。
──閉館が決まってからの心境は。
藤井:
私は映画が好きでこの会社で入り、最初の配属先がピカデリー劇場(現 福山駅前シネマモード)でした。その後、配属はいろいろと移り、再びシネマモードに戻ってきました。
しかし、まさか閉館に立ち会うことになるとは思いもしませんでしたね。
お客さまからの反響も大きく、驚いています。
最終月の6月はさよなら興行を実施
──閉館にあたり、企画の実施などは?
藤井:
6月から「さよなら興行」を開催しています。閉館する末日まで行う予定です。
4月にシネマモードで最後に見たい映画のリクエストを、思い出話とともに募集しました。200件くらい集まりまして、その中から私たちが選別した映画をさよなら興行として上映します。
上映作品とスケジュールは、ホームページで確認できますので、チェックしてみてください。
あと毎週末、ゲストイベントを開催しています。福山にゆかりのある監督・俳優などをお呼びし、思い出の映画の紹介やトークショーをします。
新事業としてカフェの店内・屋外での美術館と連携した映画上映を展開
──閉館を前にして、新たに美術館でのカフェ事業を始めたが、その理由は。
藤井:
実は、以前から映画館と他の文化施設がコラボレーションした文化的事業ができないかという構想があったのです。
映画館も文化施設ですから、組み合わせの相性は良いと考えていました。
映画館の閉館を決める中で、ちょうどタイミング良く、ふくやま美術館のカフェの運営の話があり、新事業への挑戦を決めました。
──カフェ事業の特徴とは。
藤井:
新しく始めたカフェは「ミュージアムカフェ ルミエール」と言います。
通常は美術館併設のカフェとして営業。そしてイベントとして、カフェ内で映画を上映。今後は、月数回の上映を予定しています。
席はカフェの状態のままで上映し、飲み物などを楽しみながら映画を鑑賞できるのが特徴です。
美術館では常設展に加え、企画展・特別展も開催されます。常設展や企画展・特別展の内容に関連性のある映画を上映する予定です。
上映作品によっては、美術館の学芸員の解説もお願いする予定です。
例えば、7月から美術館で「『オバケ?』展」が開催されます。そこでルミエールの店内外で、親子で楽しめるオバケに関連する作品を上映予定です。現在、上映映画の選定中ですので、お楽しみに。
また、シネマモードでは新作・旧作含めて、アート系の映画を上映してきました。それを生かして、今後はルミエール内でも新旧のアート系映画の上映もしていく予定です。
将来的には、毎週の上映を目指しています。
ルミエールでの映画上映第1回として、5月の「ばら祭」に合わせ、美術館前の広場で屋外上映会を開催しました。
当日は200人以上の観客が集まり、大盛況だったんです。屋外上映も今後もやっていきたいですね。
6月26日(金)には、映画上映第2弾として、カフェ内での初の上映会を開催予定です。上映する映画は『FOUJITA』で、学芸員の方の解説もあります。
6月26日の上映チケットは完売
閉館は「発展的閉館」。今後は映画の新たな可能性に挑戦
──今後やってみたいことがあれば、教えてほしい。
藤井:
福山駅前シネマモードの閉館は「発展的閉館」です。常設映画館は福山市中心市街地からなくなりますが、映画の灯火は中心市街地から消えていません。
郊外で運営している「エーガル8シネマズ」の営業とともに、ふくやま美術館でのカフェと映画を組み合わせた事業に注力していきます。
美術館でのカフェと映画の事業が一定の成果が出ることで、全国にある美術館などの文化施設でも、同じような取組が進んでいけばうれしいですね。
福山で長く映画や娯楽に携わってきた弊社だからこそ、映画の新たな可能性に挑戦していきたいです。
福山で育まれた映画文化を新たな舞台へ
福山駅前シネマモードの閉館は、福山市民にとって、そして映画ファンにとってさみしい出来事です。
しかし藤井支配人は、それは終わりではなく、新たな挑戦の始まりであると意気込みます。
フューレックは、福山の地で映画文化を長年にわたり育んできました。そして、これから美術館という新たな舞台へ受け継がれていきます。
映画の灯火を絶やさないための、そして映画の可能性を広げるためのフューレック社の挑戦に期待がふくらみます。