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「皆さんの応援のおかげで遂に100巻という景色を観ることができます」──世界中に広がる自転車競技マンガの金字塔『弱虫ペダル』コミック100巻刊行記念! 渡辺 航先生ロングインタビュー【後編】

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

渡辺 航先生による漫画『弱虫ペダル』(『週刊少年チャンピオン』連載中)。TVアニメが第5期シリーズまで放送されているほか、劇場アニメ化に加え、ドラマ・舞台・実写映画など様々なメディアで展開されている人気作品です。

そんな『弱虫ペダル』のコミックス100巻が、2026年5月8日に遂に発売! 記念すべきその瞬間を祝して、アニメイトタイムズでは渡辺 航先生にロングインタビューを実施。前後編に分けて、貴重なお話をたっぷりとお届けしています。

後編となる今回は、事前に読者のみなさまよりお寄せいただいた「名シーン100選」の投票結果をご報告。ベスト5のシーンについて、先生からコメントをいただきました。そして先生からファンのみなさまへ送る、熱いメッセージもお伝えします。

【写真】『弱虫ペダル』渡辺航 単行本100巻刊行記念インタビュー【後編】

鏑木VS銅橋の対決も構想とは違う方向に!?

──先生のお気に入りのシーンをご紹介いただきましたが、100巻分の歴史を改めて感じています。

渡辺 航さん(以下、渡辺):あとはですね……まだまだ止まらないな(笑)。

94巻、3回目のインターハイの1日目。あの真波と坂道の勝負は、編集さんに「たしかに2人は「1日目の山岳賞」を約束していましたが、本当にこれを1日目に持ってくるんですか?」と言われました。この勝負をいかに盛り上げるかについて、鏑木が落車するなどのトラブルも考えましたが、やっぱり真波がストレートに飛び出せば、坂道も追いかけるんです。それが一番見たい展開だし、みんなも楽しみにしてくれているはずだと思いました。

少し話が脱線しますが、2回目のインターハイの決勝のときは、二人が闘うのは辛いけれど闘うしかないという葛藤があって。「こういうのは巡り合わせみたいなものだから」と、お互いに全力を出して闘っていたからこそ、描いていた僕でさえもすごく疲れました。最後に真波が「久しぶりに自転車から降りた気がするよ」と言いますが、僕も「ずっと自転車に乗っている絵しか描いていなかったな」と思いつつ(笑)。

──(笑)。

渡辺:その闘いの後「このあたりで少し休憩したいな」という想いから始めたのがMTB編でした。2年目のインターハイは胸が苦しくなったし、坂道と真波をはじめ、キャラクターたちに頑張らせてしまったので、ここでキャラクターたちにお休みをあげたかったんです。

箸休め的な意味もこめて「坂道くんと綾ちゃんにテニスをさせますか?」と、担当さんに言ったことを覚えています。でも「そうなったら坂道は頑張らなくなっちゃうかもしれないですね」なんて冗談を言っている時に、シクロクロスというオフロードの自転車競技があって。担当さんから「シクロクロスをやりますか?」と提案してくれました。

そこで僕は「季節はまだ夏なので、シクロクロスよりもマウンテンバイクじゃないかな?」と思ったんです。僕はマウンテンバイクにも乗っているし、大会にもよく出場していたこともあって「マウンテンバイク編やっていいですか?」と。そうしてMTB編を始めることになりました。

──MTB編が始まった時は意外で驚きました。

渡辺:そこから諸々あって、真波と坂道の勝負を3年目の1日目にきちんと描くことができました。最後に真波が勝ってくれたので「ああ、よかったなあ」と。一応、真波が勝つシナリオのつもりで描いていましたが、描いてみないとどちらが勝つのかわからないので……だから真波が勝ってホッとしました(笑)。

──今後の展開におけるキーマン的存在を一人挙げるとすると、いかがでしょうか。

渡辺:今、連載で描いている真っ最中の3回目のインターハイですが、こっそりキーマンと思っているのは杉元です。インターハイを賭けた合宿で、段竹に負けた杉元。二度目の悔し涙を流した後、彼は段竹に「頑張れよ。僕は精一杯サポートするから」と想いを託しました。でも編集さんと「杉元も出してあげたいですけどね」と話していたんです。

とはいえ「ここで段竹をはずすわけにはいかないし。無理無理!」と(笑)。それから一人で5時間くらい自転車の練習で走っている時「選抜だったらいけるかも」と思い浮かびました。実際、編集さんと話して、そうなる展開も考えられなくはなかった。でも「杉元は裏方でサポートすることも彼が輝ける場所だと思うんですよね」と話して、その回のネームに取り掛かりました。

──確かにロードレースは選手だけではなく、サポートを含めた全員の総力戦ですからね。

渡辺:ネームだけでも、杉元の「インターハイに出る」という夢を叶えてあげたいと思っていました。そのネームでは急に「選抜メンバーの1人が欠けたので、あと15分で準備できる人はいますか?」という展開になっていて。それを読んだ編集さんに「これは無理がありますよ」と言われたらそれでいいかなと思っていましたが、「杉元は出た方がいいです」と編集さんも予想外に熱く語ってくれました。

雉や壱藤などMTB編のキャラも出ているし、単純にキャラが増えるので、杉元も入れてちゃんと描けるのだろうかという心配もありました。だけど杉元を走らせてみたら、「杉元の目線はすごく大事だったな」と。

──「杉元の目線」。

渡辺:坂道、そして総北は2回優勝しています。1回目のインターハイのよかったところは、坂道くんがド素人として入部して、素人目線で色々なものを見てくれるし、語ってくれる。毎回ビックリしてくれていたのが新鮮だったと思うんです。2回目のインターハイでは、今まで出場経験のない手嶋さんがキャプテンになり、右往左往しながらも、あるいは今泉にヤキモキされながらも(笑)、彼は頑張る。そんな手嶋さんメインのストーリーになっています。

3回目では坂道や手嶋さんのような役回りをするのは六ちゃん(六代)かなと思っていたんです。でも描いていたら「その役回りは杉元かも!」と思って。

杉元は潜在的に、自分は努力したけど目標に到達できなかった人。そんな彼にもチャンスが与えられて、頑張ろうという状況ですが周りはツワモノぞろい……。みんな杉元より速いし、しかも杉元はインターハイで走るのは初めて。そんな彼の目線で描くやり方ができました。なので僕にとって影のMVPは杉元だと勝手に決めつけています(笑)。

「名シーン100選」の人気トップ5を先生が解説!

──今回、100巻刊行を記念して、ファンの方からの「好きなシーン100選」を募集しました。先生にもチェックいただき、ぜひベスト5のシーンについてコメントをいただければと思います。

渡辺:皆さん、こんなに投票していただいてありがとうございます。

1位は先ほどお話しした「ティーブレイクしてたんだよ!!」のシーンですね。実はあのシーンで今泉が出るという選択肢もありました。真波が出て、さあ総北はどうするのかという時に、今泉が出るのが順当だなと。

だけど真波がめっちゃ強いことを踏まえ、誰と闘わせたらおもしろいかなと考えたんです。結果「一番弱いヤツと闘わせたらおもしろいだろう」という発想から手嶋になりました。

センスは持ち合わせていない手嶋ですが、人一倍努力する男です。坂道とスイッチするのが少し見えていたので、手嶋でもいけるかなと思っていました。とはいえまさか、あんなに手嶋が頑張るなんて……。

その後手嶋は葦木場との山岳賞争いに勝ちますが、インターハイではリタイアしたら勲章はもらえません。次点でゴールした人のものになってしまうんです。あれだけ頑張った手嶋が無冠というところも手嶋らしくて好きだし、手嶋を描き切ったなと思いました。平凡な男が両手を挙げた瞬間を描けてよかったです。

渡辺:余談ですが、初代の担当さんと1回目の合宿についての打ち合わせをしている時、「手嶋と青八木が2年生にいるじゃないですか?」と言ったら「そんなの誰も覚えてないですよ。どうでもいいじゃないですか?」と言われたんです。だからこそ、手嶋と青八木のいいシーンを絶対に描いてやろうと思っていました(笑)。

そこで1年生3人組と2年生2人を対決させたことで、皆さんも手嶋と青八木の存在を知って覚えたと思うし、田所との繋がりも理解してくれたと思います。その次の年に繋がっているし、手嶋はインターハイに出場したこともないのにキャプテンを任されて。初日の一番大事な山岳賞に出るという重責と、彼がやり遂げたことの素晴らしさは記録には残らないけれど記憶に残る。描いていて楽しかったです。

──2位はコミックス12巻収録の「1年目インターハイ1日目、巻島と東堂の山岳賞争い」です。

渡辺:第2位の巻島と東堂の山岳賞争いのエピソードも先ほど話してしまいましたが、巻島さんを描きながら「たぶん読者の皆さんからは気持ち悪がられているんだろうな」と思っていました。

東堂もハコガクの強い人というポジションではあるけれど、当時はまだキャラがそこまで深掘りされていませんでした。巻島から坂道に「ああいう男は無視しろ」と言ったり「わっはっはっ、巻ちゃん、勝負だ!」なんて言ったりしているけれど「うざがっている巻島が塩対応している人」でしかありませんでした。

だけど二人を勝負させて、掘り下げていくうちに「俺たちは3年生で最後のインターハイじゃないか」と。ここでしかもう勝負できないという機運が高まった時、坂道が落車してしまったので「俺はもう行けない。」「準備しとけよバカヤロウ!!」という別れがありました。 

そこから坂道が100人抜きでやってきた時に、ちょうどスイッチして間に合うタイミングになって。あそこは館林が鉄壁の盾と言われながら二人に置き去りにされて……名脇役として本当にいい仕事をしてくれました(笑)。どんな名勝負の裏にも支えてくれる存在、脇キャラは必要だと思っているので。手嶋と真波の時はそういうキャラはいませんでしたけど。

──3位の「1年目インターハイ3日目、荒北がチームを引いて落ちていくシーン」も泣ける場面ですね。

渡辺:3位は坂道の1年目のインターハイ3日目ですね。メインキャラの中で一番最初に落ちたのが荒北でした。例えば異能バトルでは、キャラクターがギリギリの極々まで行った際の死に際の描写があります。ロードレースの場合はリタイアが死に際で、僕はいつもキャラクターがリタイアした時は「その人の死にざま」を描こうと思っているんです。

この荒北と福富のシーンは「福ちゃん、おまえにだけはほめてほしいんだ」と力尽きてつぶやく荒北を振り向きもせずに、前を向いて走る福富は「おまえは最高の走りだった!!」と言って去っていきました。でも荒北は別に死んだわけではないので、後でひょっこり現れることができるんです。またその前々回あたりで、荒北さんは「一番イキがいいヤツほど最初に散っていくんだよ」と予言するようなことを言われているんです。そして荒北は、チームを引っ張るだけ引っ張って「インハイラストステージの先頭はハンパなくキモチイイ」という言葉を残して散っていきました。このシーンはロードレースらしさを表現できたと思っています。

ロードレースではエースがゴールするシーンがニュースになりがちだけど、荒北のようにアシストが素晴らしい仕事をして、勝利をチームに託して散っていくシーンも美しいんですよね。

そして福ちゃんは振り向きもせずに走っていきましたが、実は振り向かせるかどうか、すごく悩みました。でも荒北と福富の固い信頼関係だったら振り向かないだろうなと思って。その次の回で坂道が「今、荒北さんが落ちていきましたよ。どうすればいいですか?」とすごく動揺するけど、いずれみんなリタイアしていって、一人になるというロードレースの厳しさをチームメートが「これがロードレースなんだよ」というセリフで伝えました。このシーンでもロードレースらしさを描けて嬉しかったです。

同じ3日目で青八木さんがハコガクの集団に追いついた後にリタイアした時もそうでした。鏑木が涙を流しながら「何で涙が出るんですか!?」と言って去っていく。任務をやり通した男が最後に散っていく……すごい死に際を見せておいて、レース後に行われた表彰式にひょっこり現れて、みんなと優勝の喜びを分かち合えて。まるで死んだ人が生き返ってきたみたい。そのロードレースの構造はすごいなと自分で描いていて思ったし、キャラクターが誰一人死なないエンターテイメントっていいなと改めて思いました。

──4位は「1年目インターハイ1日目、巻島が東堂に追いつくシーン」です。笑いあり、感動ありの名場面でした。

渡辺:1年目の2日目、坂道の奇跡の100人抜きにより、一度はあきらめかけていた巻島との一騎打ちが実現した東堂が「巻…ちゃん…オレは たった今絶好調になった!!」と言ったシーンです。東堂があんなに浮かない顔しているのはあのシーンくらいしかないと思います。

……あっ! あと今「SPARE BIKE」で東堂を描いていますが、巻島さんからイギリスに行くことを告げられた時も浮かない顔してましたね(笑)。東堂の一喜一憂、いろいろな表情が描けて、おもしろかったです。

「後ろから1人やってくるぞ~!」という声が聞こえてきて思い切り振り返ったら館林だったので、すごくガッカリして。後でもう1回「後ろから1人やってくるぞ~!」と聞こえた時は「もう振り向かないよ」と言ったけど、今度は「フラフラしているぞ」の声で振り向くと巻島がいて。そしてあのセリフが東堂の口から出てきた。ベタベタといえばベタベタですが、東堂と巻島という組み合わせかつ良い演出として描けたかなと。そして二人が命の限り走って、山岳賞を競い合う彼らの表情と走りが描けたのですごく満足しています。

──5位も荒北の名シーン「1年目インターハイ3日目、小野田・荒北・真波の協調」です。

渡辺:3位のシーンの前にあった荒北が坂道と真波を引っ張ったシーンですね。荒北から「お前には俺がどう映っているんだ?」と尋ねられた坂道は「こわくて、こわくて、今にも食べられそうな人です!」と答えました。

野獣の荒北と草食動物の坂道の相性は最悪ですが、どうしても行かなければならない状況です。坂道も決死の気持ちで協調を申し出て、結果荒北が「ちょっとだけ、福ちゃんに似ているな。」と思い「のってやるよ」と了承したら、ひょっこり真波も後ろから現れて。「お前も集団に飲み込まれていたんかい!」と(笑)。

3人で走って、荒北の「見せてヤンよ!箱根学園2番の引きってヤツを!」と先頭を走っていった荒北さんが超カッコよくて、ここから荒北さんムーブが始まりました。二人を引っ張った後、広島と闘って、ヤンキーの過去編をやって「一番イキがいいヤツが落ちていくんだよ」というところで、落ちていくという。荒北さんが光り輝いたエピソードでしたね。

荒北を登場させた時はギャンギャン言っていて、みんな嫌いだろうなと思いながら描いていました。基本的に自分の名前と作品名でネット検索はしないというルールがあるので、読者の方の反応を知ることができるのはイベントなどで直接お会いした時だけなんです。連載が進んでいくと、イベントなどで読者の方とお会いするたびに「荒北さんが好きです」と言ってもらえて。荒北や巻島は読者の方に怖いとか気持ち悪いと思われているだろうなと思っていたので、好きという声をたくさんいただいたのが意外でした。

また荒北さんのヤンキーエピソードは1日目の夜に少しやろうかなという話をしていました。でも田所さんが倒れてしまったので、それを放っておいて、別のキャラの回想エピソードをやるのは情緒不安定になるなと思って、1回置いておくことにしました(笑)。

その段階ではヤンキーエピソードを「もうやる機会はないだろうな」と捨てるつもりだったんです。でも待宮くんとの闘いの中で、「これはもしかしてワンチャンいけるかも」と思って。1年生の時の荒北と福富の出会いを描くことができてよかったです。

坂道以外のキャラの人気が高いのは、読者が「みんな坂道くん目線」だから

──『弱虫ペダル』ファンの方からの人気投票の結果を見て、上位に坂道がらみのシーンが少ないことが意外でした。この結果は坂道目線で描かれている本作ならではであり、全員が主人公という『弱虫ペダル』らしいかもしれませんね。

渡辺:それは僕も感じていて、読者の人はみんな、坂道くん目線なんですよね。だからキャラクターのことを話す時は、坂道くんから見た呼び方の「巻島さん」だし「鳴子くん」なんです。色々なキャラクターがいて、みんな主人公を通して関わっていく。ハブのような存在になれているのはいいことだなと思っています。

イベントなどで読者の方からサインを頼まれることがありますが、最初の10年くらいは坂道を描いたことは一度もありませんでした。もちろん書店さんやショップの方へのサイン色紙には坂道くんを描きますが、ファンの方とお会いしてサインを頼まれる時は、新開さんや荒北さんの絵を頼まれることが多くて。あと男性の方からは田所さんを頼まれることが多いです。「待宮も意外に人気があるんだな」とか思いながら描いていました。

たぶん坂道の絵を頼まれることがなかったのも、皆さんが坂道目線で読んでいるから。「自分のことはいいから!」みたいな感じだったのだと思います。最近は、みなさんやっと坂道くんを再認識してくれたのか、坂道くんのリクエストも多くなっています(笑)。

──いよいよコミックス100巻が5月8日に発売されます。見どころや注目ポイントを教えてください。

渡辺:100巻の表紙はこの取材の1週間前(取材は3月上旬に実施)に納品しました。最初はキャラクターがたくさん集合した表紙にしようかなと思いましたが、それはファンブックでよくやっているので、ファンブックと間違われたら嫌だなと(笑)。そして3人にするか4人にするかなど編集さんと打ち合わせを重ねた結果、この3人になりました。

100巻では坂道にとって最後のインターハイの2日目がスタートして、駆け引きあり、大きな決断ありと熱いレースが展開されますので、楽しみにしてください。

──ありがとうございます。今時計を見たら既に予定の取材時間を20分近く過ぎていました。申し訳ございません。聞きたいことを厳選したつもりだったのですが……。

渡辺:聞かれたら何でも話しますよ(笑)。『弱虫ペダル』を描くまでマンガがなかなか売れなかったので、こんなにお話を聞いていただけること、毎回ありがたく思っています。アニメや映画など、たくさんメディア化もしてもらって、「まさかこんなに『ペダル』の世界が広がっていくとは」と今も信じられません。

自転車イベントにもよく呼んでいただきますが、それも珍しいですよね。マンガ家が出演するのは自分が描いた作品メインというケースがほとんどのはずですし、自転車とマンガは一見関係ないように思えるし。でも自転車のイベントに呼んでいただいて、会場にも『ペダル』を読んでくださっている方がたくさんいらっしゃって。人生って何が起こるかわかりませんね。

──先生が『弱虫ペダル』の衣装を着て、イベントに登場することが当然のようになっているような気もしています。

渡辺:あの衣装を着ていないと誰なのかわかってもらえないかなと(笑)。

最初の頃はいろいろなイベントに行くたびに、ハコガクジャージを着たり、総北ジャージを着ていました。ある日「これは認識されていないな」と気付いたので、毎回総北ジャージに坂道くんのTシャツと同じ服装に決めたほうがいいなと思い、固定したんです。皆さんも僕の顔では作者だと判断できないと思うので、首から下の服装で判断して、声をかけてください(笑)。

──(笑)。では最後に『弱虫ペダル』ファンの皆さんへメッセージをお願いします。

渡辺:作品を読んでくれる人がいないと連載を続けることはできません。皆さんの応援のおかげで遂に100巻という景色を観ることができます。本当にありがとうございます。

僕の予定ではマンガ家になって、ポンポンとヒット作を世に出して、順調なマンガ家生活を送る予定でしたが、現実は全然うまくいかなくて。色々な壁にぶち当たりまくりでした。『週刊少年ジャンプ』の読み切りに『ONE PIECE』の尾田(栄一郎)さんや『BLEACH』の久保(帯人)さんと一緒に掲載されたので、僕もあんな感じでデビューしていくんだろうなと思っていましたが、まったくそんなことはなくて。地中奥深くに潜って全然日の光に当たることもないまま、必死に描いていました。

やっとマンガ家になれても、マンガ家になることと売れることは全然別のことだと気付きました。マンガを一生懸命描いていたけど、なかなかみんなに読んでもらえなくて、何度も連載が終わって。みんなが読んでくれることがマンガ家を続けることに直結することをよくわかっているので、ここまで来られたことはとてもありがたいです。

そんな状況の中、連載がこんなに続いてコミックスの100巻が出せるなんて、まったく想像できるわけもありません。『弱虫ペダル』が始まる前に描いた作品のコミックスの最高冊数は5巻でした。『弱虫ペダル』と並行して描いていた『まじもじるるも』が最終的にシリーズ累計で20巻まで行きましたが、その時の『弱虫ペダル』はもう60巻まで発売されていました。

少年マンガでコミックスが100巻を超えているのは『こちら葛飾区亀有公園前派出所』『はじめの一歩』『名探偵コナン』『ONE PIECE』の4作品。『弱虫ペダル』が5作品目になると知った時もビックリしました。

たくさんの人が読んでくれてファンレターを送ってくれたり、イベントに足を運んでくれる方がいるのは本当にありがたいことです。このまま土を耕すように、おもしろいお話を紡いでいけたらと思っています。

今後も『弱虫ペダル』を気軽に楽しんでいただけたら幸せです。連載では現在、3度目のインターハイで激しくて、熱い闘いが繰り広げられていますが、今後もいろいろなキャラクターがガンガン活躍していきますので、楽しみにしながら読んでください。

【インタビュー:永井和幸】

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