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認知症の方の気持ちがわからない…まずは良好な関係性を築くための適切な姿勢が大切

「みんなの介護」ニュース

髙橋 秀明

認知症は過去に「痴呆」と呼ばれていました。痴呆という言葉には「何もできない」「何もわからない」「おかしなことをする」「困った人」という意味合いが含まれます。認知症の方は非人間的扱いを受けてきた時代があったのです。

しかし時代は変わり、認知症になったとしても「人」として生きていくことに変わりはなく、できる限り「自分のことは自分で行う」「助け合える部分は助け合って生きていく」「建物の中に閉じこもっているばかりではなく、社会とつながりながら生きる」ことが主流になりつつあります。

支援を行うにあたって、大切になるのは理解しようとする姿勢です。認知症の方が「何ができて、何がわかっているのか」「何ができず、何がわかっていないのか」を理解しようとする姿勢が大切です。

今回は、認知症支援を行うにあたり、どのような考え方を持てばいいのかについて考えます。

認知症を正しく捉え、受け止める

認知症だと診断されたからといって、病状が急激に変化するわけではありませんが、周囲の人たちの見方や考え方、意識が変わってしまうことがあります。認知症と診断された途端に、生活の大部分が過度な制限や管理下に置かれてしまうのです。

なぜこのような状況になるのかと言えば、認知症になったら「何もできなくなる、わからなくなる」といった世間のイメージや思い込みが大きく影響しているのではないでしょうか。

世間一般のイメージや思い込みは、誤った対応につながりかねません。例えば、認知症の方の行動を注意したり、否定したり、過剰に介護してしまうなどが挙げられます。

このような対応は、認知症の方の自尊心を傷つけたり、不安にさせかねません。本人ができることさえもさせてもらえずに、機能や能力が衰えてしまうことも考えられます。

認知症を正しく捉え、受け止めるためには、まず認知症とは何かを知るとともに、どんな病気や怪我であっても、当事者が一番つらいというあたりまえの視点を忘れてはなりません。

「トイレの場所がわからなくなるってつらいだろう」
「今日が何月何日何曜日かわからなくなるってつらいだろう」
「自分が伝えたいことがうまく伝えられないってつらいだろう」
「目的があって外出したのに、その目的自体を忘れてしまうってつらいだろう」

このように、認知症によって困難になることを、本人の視点から考えることが、認知症を正しく捉えることにつながります。

認知症の方は次のような言動を繰り返すことがあります。

ご飯を食べたばかりに何も食べていないという
お風呂に入っていないにもかかわらず、毎日お風呂に入っているという
自分でお金を管理していないにもかかわらず、お金が無くなったという
手足にマヒはないけれど、洋服の着方がわからずに戸惑ってしまう
食べ物でないものを食べようとする
何年も前に仕事を辞めたにもかかわらず、仕事に行くと言って外に出ていこうとする
ゴミ出しの日でないにもかかわらず、ゴミを出してしまう

支援者としては困ってしまうような言動かもしれませんが、病が引き起こしている状態であると捉えることで、「そうなんですね」「こちらの方が〇〇じゃないですか」と柔らかい表現になったり、少し待つことができたり、できない部分をさりげなくサポートするかかわり方につながります。

「人間」そのものを理解しようと努める

果たして、完全に他人の気持ちを理解できる人は、いるでしょうか?たとえ認知症でなくても100%理解するのは不可能だと思います。

気持ちや心は決して見えるものではなく、一定ではありません。その日そのときの環境によっても大きく左右されるものです。

私自身、「相手の気持ちや考えていることが明瞭に把握できれば」と何度も考えたことがありますが、完全にできたことなど一度もありません。

ただ、今までの経験や学びから、人と人の間に「安全・安心」を感じ取ることができれば、コミュニケーションが比較的うまくできたり、良い関係性を構築しやすいことがわかってきました。

安全・安心の反対の言葉は、「危険・不安」です。人は相手に対して「危険・不安」を感じると、無意識に心を閉ざす傾向にあるのではないでしょうか。

相手に安心・安全を感じ取ってもらうためには、相手のさまざまな変化に気づくことが大切です。私の経験上、以下のようなことに注意すると良いとされています。

姿勢(背中を丸めているか、背筋が伸びているか)
表情(笑顔か真剣な顔か)
呼吸(浅いか深いか、呼吸が早いかゆっくりか)
ジェスチャー(手足の動き)
視線(目線の位置)
話すスピード(速いか遅いか)
声の大きさ(大声なのか静かに話しているか)
声のトーン(高いか低いか)
話すリズム(リズミカルか不規則なペースか)

これらをよく見て、可能な限り相手に合わせることが大切です。

また、共通点があると、心理的な距離感がグッと近くなり親近感がわくことがあります。お互いに「わかっている」という間柄になると、関係性は築きやすいものです。

「安全・安心」は認知症だけでなく、人と人のかかわりの基本だと思います。もちろん認知症支援の場でも、こうした基本姿勢が支援者には求められます。

最後に、認知症の方の気持ちを理解しようと努めるためには、当事者の声を聴くことが大事だと思います。認知症の方は、以下のように述べています。

支援をする人たちは、当事者(認知症の状態にある方)の「できること」探しをし、「できること」を見つけ、応援してみてください。ほかの家族には、当事者が「できないこと」や「失敗すること」ばかりを伝えるのではなく、できる工夫を教えてあげてください。ほめられると認知症の本人もさらに頑張ろうとなり、良い方向に向かっていきます。

仮に認知症が進行して、言葉は出てこなくても、表情などから認知症の状態にある方の感情を読み取るように努めることが大切です。病名ではなく、目の前の「人」を見て向き合うことが支援者には求められているのです。

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