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処遇改善加算で冷遇されたケアマネ。人員不足解消に賃金アップは有効?

「みんなの介護」ニュース

大内田省治

【科目】介護✕ケアマネ  【テーマ】新政権の賃金アップでも冷遇されるケアマネージャー

【目次】

賃金アップが人員不足解消につながるのか?
「きつい」「汚い」というイメージの改善が必要
ケアマネージャーが冷遇される理由
地域包括ケアシステムにおいてケアマネージャーは不可欠な存在

ケアプランセンターはぴるす代表の大内田省治です。

2022年2月から介護職・看護職に対して、月額9000円の賃上げを行うことが政府から発表されました。

現在の介護職の賃金は、全産業の平均よりも低い状況となっており、それを引き上げるための措置として行われます。介護職の魅力をアップして、人員不足を解消しようとする狙いがあります。

賃金アップが人員不足解消につながるのか?

介護事業所は、介護保険法で定められた報酬によって運営されています。また、介護職の給料は「処遇改善加算」や「特定処遇改善加算」というものがあり、それを基にして介護職の賃金上昇などを行っています。

賃金は、3年ごとの報酬改定のたびに見直されてきましたが、いまだ全産業平均よりも低い状況です。そこで、今回は報酬改定ではなく、政府が直接賃金上昇に働きかけました。

確かに賃金上昇は喜ばしいことですが、それだけで人員不足が解消されるかどうかは疑問が残ります。

その最たる要因として、介護に対する仕事へのマイナスイメージが挙げられます。

介護職は一般的に「きつい」「汚い」と考えられています。個人的には、これらのイメージを払拭する必要があると考えます。

「きつい」「汚い」というイメージの改善が必要

イメージを改善するための賃金アップだと考えられますが、やはり「きつい」「汚い」というイメージは、今もしっかりと根づいています。しかし、あくまでイメージであり、必ずしも実態を的確に表現しているわけではありません。

まず「きつい」について考えてみましょう。確かに介護職は、直接介護において、体を使います。そのため、腰痛持ちが非常に多いともされています。ただ、介護職員初任者研修や事業所内での研修で、正しい動作を学べば腰痛などは予防することができます。肉体的な「きつさ」を軽減する余地はあるはずです

一方で精神的な「きつさ」も少なからずあります。しかし、プロフェッショナルとして「仕事として割り切る」という姿勢を身につけることができれば、利用者との間で起こるトラブルにも適切に対処できるようになります。

次に「汚い」についてです。排泄介助や入浴介助などを行うので、汚物を扱うこともあります。ただ、汚物を扱う際はビニール手袋などを使用するので、直接触れることはありません。また、新型コロナウイルスに象徴されるような感染症対策を十分に行いながら介助を行うので、一般的に考えられているイメージよりも「汚い」ことはありません。

そうしたイメージとは違い、実際の介護現場では「知的な側面」を求められることが多くあります。どうすれば利用者が安静に過ごしてもらえるか?どうやったら利用者に喜んでもらえるか?を考えながら対応するため、実は知的な作業の積み重ねが必要になるのです。

個人的には、こうした「知的な側面」をもっとアピールしていく必要があるのではないかと考えています。

ケアマネージャーが冷遇される理由

しかし、「知的な側面」を発揮するケアマネージャーについては、処遇改善において冷遇されています。ケアマネージャーは、以下のような国家資格を取得して、実務経験が通算5年以上かつ900日以上の実務経験がないと受験資格が得られないようになっています。

医師・看護師・保健師・助産師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・柔道整復師・はり師・きゅう師・歯科衛生士・管理栄養士などの医療従事者
介護福祉士などといった高齢者や障害者の介護に携わった人
社会福祉士・精神保健福祉士などの相談援助職に携わった人

以前は、ホームヘルパー2級(現在の介護職員初任者研修)を取得して、実務経験が通算で5年以上かつ900日以上あれば受験資格が得られていましたが、そこから取得条件はより難しくなっています。

また、介護職員初任者研修から介護福祉士を目指す場合でも、介護職員実務者研修を受講した後でないと、介護福祉士の受験資格が得られないようになっています。そのため、介護職員初任者研修からケアマネージャーを目指すとしたら、最低でも8年はかかります。

条件が厳しくなっている理由の一つとして、「ケアプランのAI化」や、それに伴う「ケアマネ不要論」などが挙げられます。

現在、国はデイサービスやデイケアなどに対して「科学的介護推進体制加算」というものを算定できるようにして、リハビリによって利用者の身体機能がどの程度改善されたかといったデータを集めています。

そのデータを基に、ケアプランの作成をアシストできるような体制を整えようとしています。それによって「ケアマネ不要論」というものが盛んに議論されるようになりました。

前述のデータをビッグデータ化し、最終的にはAIにケアプランを作成させようといったことを目指しているとも言われています。実際に介護ロボットの開発と同時に、ケアプランのAI開発も進んでいます。

ただ、ケアマネージャーは「介護保険制度の要」であり、利用者や家族にとっては「最後の砦」です。

そもそもケアマネージャーは、介護保険サービス(フォーマルサービス)と、それ以外のサービス(インフォーマルサービス)を結びつける役割を担っています。

例えば、寒い時期には「水道管が凍って破裂した」など、日常生活にまつわる相談などもよく受け、対応しています。インフォーマルサービスは、医療保険制度や地域ボランティアだけではなく、地域にある一般的な業者なども含まれています。

地域包括ケアシステムにおいてケアマネージャーは不可欠な存在

各地域で構築が進められている地域包括ケアシステムにおいて、ケアマネージャーは必要な存在だと考えます。

地域包括ケアシステムは、医療・介護・地域ボランティアなどの連携力を高めて、高齢者が住み慣れた地域の中で、いつまでも生活できるような体制づくりを目指すものです。

ただ、利用者の在宅生活全般を考えたとき、医療・介護・地域ボランティアだけではなく、それらをつなぐ役割の人間が必要です。

前述のように、地域のあらゆる業者が関わることにより、利用者の在宅生活は支えられています。そう考えると、ケアマネージャーは地域包括ケアシステムの中心的役割を担うべきです。

そういった意味でも、処遇改善においてケアマネージャーを冷遇することはあってはならないことだと思います。ただでさえ、その業務は多岐にわたり、提出しなければならない書類も非常に多くなっています。

「ケアプランのAI化」は、業務量軽減の一環でもありますが、現段階ではケアマネージャーに取って代わることは難しいでしょう。つまり、もっとケアマネージャーの処遇についても真剣に議論をするべきではないでしょうか。

介護職の処遇改善を図ることは良い取り組みですが、まず介護職へのマイナスイメージを払拭することに力を入れることが先決ではないでしょうか。また、地域包括ケアシステムの構築を推進していくためにも、ケアマネージャーの評価を見直すことが大切ではないでしょうか。

利用者が住み慣れた地域で、いつまでも安心して生活ができるように、もっと介護業界全体を考えたイメージアップを図る取り組みが求められています。

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