「20年前にはいなかった生き物が」“生物ハンター”が語る「神秘の島」の現実【テレビ寺子屋】
独自の生態系をもち、神秘の島と呼ばれるマダガスカル。生物ハンターとして知られる加藤英明 准教授によると、マダガスカルでさえも外来種が入り込み、危機に瀕している動物たちがいるそうです。
テレビ静岡で6月2日に放送されたテレビ寺子屋では、静岡大学教育学部の加藤英明 准教授がマダガスカルの生物多様性とその変化について語りました。
固有種が8割を占める神秘の島
静岡大学教育学部 准教授・加藤英明さん:
アフリカ大陸の南東にある島、マダガスカル。日本の1.6倍の面積を持つ世界で4番目に大きな島で、生息している生き物たちの80%は固有種と言われています。そんなマダガスカルの生き物たちを紹介します。
葉っぱに擬態するカメレオン
まずはは虫類。カメレオンも固有種がいっぱいです。世界にいる200種類ぐらいのうち、半分以上がマダガスカルに生息しています。
例えば「パーソンカメレオン」は、全長60cmを超える世界最大のカメレオンです。私も現地で見ましたが、大きいのに葉っぱの色に擬態していたため見つけるのがとても難しく、移動も含め8時間以上かかりやっと見つけました。
キツネザルだけで100種類以上
ほ乳類では、キツネザルの仲間が100種類以上もいて、どれもマダガスカルにしか生息していない固有種です。
キツネザルの仲間は樹上で生活し、ほとんど下りることはないのですが、「ベローシファカ」は木々をジャンプして移動できない場合などに、地上を二本足で横跳びして移動します。独特な動きですが、地上の危険を回避するために素早く動こうとした結果です。
長いしっぽに黒い輪っかの模様がある「ワオキツネザル」も、野生ではマダガスカルでしか会えない固有種です。
体温を上げるのが得意ではなく、冷えた体を温めるために朝起きて最初にすることが日光浴。みんな同じ向きで日を浴びる姿を見ることができます。
ただ、マダガスカルに行けばどこでも会えるというわけではなく、どんどん数が減り、残念ながら絶滅危惧種として保護されている状態です。
歌に登場して有名な「アイアイ」も固有種。歌詞にある「南の島」というのはマダガスカルのことですね。目が大きく、夜行性のサルです。
マダガスカルには大きな肉食動物がいないのでキツネザルの仲間が繁栄し、長い年月をかけて独自の生態系が作られていったと言われています。しかし、今、野生動物たちに危機が迫っています。
すみかを奪われる生き物
例えば「ヘサキリクガメ」という大きなリクガメ。現在、野生は200個体ほどと言われ絶滅の危機に瀕しています。
いろんな原因がありますが、一つは乱獲。食用として食べられてしまっています。その他に環境破壊。森林面積もどんどん狭くなり、生き物たちのすみかが奪われてしまっています。
原因を見てみると、どれも人間によるものです。最近は外来種による影響も大きくなっていますが、その外来種を連れてきたのもやはり人間で、食用として持ち込んだ生き物です。
私が最初に訪れた20年前にはいなかった生き物たちが、今マダガスカルの自然の中に入り込んでしまい、固有種たちを絶滅に追い込んでいます。ただ、これらも食用としてマダガスカルの人々の暮らしを支えてくれている一面もありますから、しっかり管理して利用していくことが必要です。
神秘の島マダガスカル固有の生き物たち、そして豊かな自然環境を守るために、私たち人間に何ができるのか。一人一人がマダガスカルについてもっと興味をもち、知り、絶滅しそうな生き物たちを守っていけたらと思います。
加藤英明:1979年静岡県生まれ。農学博士。世界中のジャングルや砂漠を駆けめぐり生態系を調査。カメやトカゲの保全生態学的研究をしながら、学校や地域社会で環境教育活動を行っている。
※この記事は6月2日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。