釣ったらその場で即料理 爽やかな天然アユの香り! 清流の恵みを味わう!さっぱり和風パスタ
みなさん、季節はすっかり秋ですね! 朝晩も涼しくなり、アウトドアにお出掛けする方も多いのではないでしょうか? 秋は昔から「食欲の秋」なんていわれます。季節の変わり目で食欲が増す時期なワケですが、そんな季節にピッタリ(?)、釣りの現場で作るキャンプ飯、略して「釣りキャン飯」をご紹介しましょう!
毎度おなじみ「釣ったらその場で即料理」をコンセプトに、今回も釣りと料理を楽しんできました!
(やや旬を外して申し訳ないですが…)季節は少しさかのぼって残暑厳しい9月上旬。「釣った魚を新鮮なうちに、しかもその場で味わいたい!」というロマン(?)を叶えるべく、岐阜県の川へと足を運びました。果たしてどんな「釣りキャン飯」になったのか…お楽しみください!
夏の終わりに…
今回はアユを使ったパスタ料理を作りたい!
今回のターゲットは、清流を代表する魚「アユ」です! 夏に旬を迎え、爽やかな香りが特徴的なアユ。定番の食べ方は塩焼きや甘露煮、フライなどですが、そのほかにもさまざまな食べ方で楽しめるのもアユの魅力! 今回はアユを使ったパスタを作ります。
「香魚」と呼ばれるほど爽やかな香りが特徴的。アユ料理の定番といえば「塩焼き」です
スーパーで販売されているアユは「養殖」されたものがほとんどですが、今回のねらいは天然アユ! まずは食材を確保すべく川に向かいました。季節は9月…残暑のおかげでまだまだ暑く、夏を感じる気候ですが、果たしてアユは釣れるのでしょうか?
そもそも「アユ」ってどんな魚?
今回のターゲット「アユ」。海と川を行き来する「年魚」ですが、ひと夏で大きく成長します
さて、アユを使ったパスタを作っていく前に、ここで少しだけアユについて紹介しておきましょう。
アユは春先に海から川に遡上(そじょう)し、夏は川の中~上流域で過ごし、秋から冬にかけて産卵のため川を下り一生を終える「年魚(ねんぎょ)」と呼ばれる魚。短い一生の間に海と川を行き来します。
そんなアユは川に遡上してくると、自分のエサ場となる「縄張り」を形成し、主食である藻類(コケ)を食べ、夏にかけてグングンと成長します。
成長すると背中が盛り上がり精悍(せいかん)な顔つきに。良質なコケが育つ川のアユは美味しいといわれています
また、アユはスイカやキュウリのような爽やかな香りに加え、黄金色に輝く体色も特徴の一つです。胸ビレの少し上あたりに見られる斑点は「追い星」と呼ばれ、川底に縄張りを形成し、しっかりとエサを食べている目安とされています。
アユを釣るなら伝統釣法「友釣り」で!
まだまだ残暑が厳しい9月上旬、岐阜県の川へアユを求めて訪れました。この日は朝から気温が上昇、アユ釣りには最適なコンディションです。本来であれば、川を下り産卵の準備をする季節ではありますが…アユたちも季節感がズレているのか(?)、ここ数年は9月以降でも釣れる状況が続いています。
今回は日本古来から親しまれている伝統的な釣法「友釣り」で、天然アユを釣ってみることにしました。
釣行日は9月上旬。秋の気配を感じつつも、季節はまだまだ夏。アユ釣りには最適なコンディションです
「友釣り」ってどんな釣り?釣り方をちょっぴり紹介!
「友釣り」はアユを釣る代表的な方法の一つです。アユが持つ「縄張り」の習性を利用し、生きたアユ(オトリアユ)と縄張りを持つアユを喧嘩させて釣るという、なんとも独特な釣り方です。川の中で縄張りを形成するアユを効率よく釣っていくのに最適な釣り方といえるでしょう。
縄張りを守るアユは、自分の縄張りに侵入してくるアユに対して、体当たりをして追い払おうとします。その行動を逆手に、オトリアユに当たってきたところを掛けバリで引っ掛けて釣る、というワケです。
オトリアユに鼻カン、逆バリ、掛けバリ(イカリバリ)を装着する。体当たりしてきたらオートマチックに掛かる仕組みです
そして、釣れたアユを今度はオトリアユにして、次のアユを掛けにいきます。これを繰り返して釣っていくため、「循環の釣り」とも呼ばれています。
ハマったら抜け出せない!?アユの友釣りの魅力とは?
そんなアユの習性を利用した友釣りですが、最初にそろえなければならない道具が多く、とにかくコストもかかる…。かつては「ハードルの高い釣り」といわれてきました。しかし最近では、エントリークラスの道具も増え、比較的スタートしやすい釣りとなりました。
友釣りには、生きたオトリアユを操る難しさや繊細な技術、アユを掛けてから取り込むまでのスリリングなやり取りなど、エサ釣りやルアーフィッシングでは味わうことのできない、違った魅力があります。
9m近い竿でオトリアユを操る。体力が決まっている生きた魚を使うため、イメージ通りに操る難しさと面白さといった、相反する要素が友釣りの魅力です
あまりにも人々が熱中することから、江戸時代には幕府が「アユ釣り禁止令」を出したという逸話も…それだけ魅力的でハマってしまう人が多い釣りなのです。もちろん、アユは食べても美味しい魚なので、釣ってからのお楽しみも魅力の一つかもしれませんね。
いよいよ釣り開始!清流で天然アユが乱舞!
川に降りたら竿に仕掛をセットして、オトリアユに掛けバリを付けたら準備完了です。「いってらっしゃい!」とオトリアユを送り出し、縄張りアユがいるであろう、ねらいのポイントに誘導します。
竿に仕掛をセットしたら準備完了。いよいよ食材確保がスタートです!
しばらくすると…カツンっと目印が下流へと走ります! これがアユのアタリです。
ハリに掛かると一気に川の中を走り回り抵抗します。この抵抗がとにかくメチャクチャ引くんです! 竿をグッと起こして流れの中からアユを引き抜いたら網でキャッチします。
淡水魚とはいえアユは想像以上に引きます。オトリアユと掛かったアユの2尾分の重みがあるので油断はできません
さっそく1尾目のアユをキャッチ。少し小ぶりなサイズですが、バッチリと背中に掛かっていました。縄張りを持った追い気の強い天然アユです。
1尾目はキレイな背掛かりで。アユの掛かりどころで追い気が強いかどうかを判断することができます
今度は釣れたアユをオトリアユにして、次の1尾を掛けにいきます。ここから循環の釣りがスタートです。少しずつ川の中に入りながらポイントを探り、大きな岩の周辺や強い流れの中などに、オトリアユを通していきます。
岩の周辺や瀬の中など、アユが縄張りを持ちそうな場所を探っていきます
オトリアユが弱ってしまうと縄張りアユの掛かりが一気に悪くなるので、弱らせないよう集中しながら探っていくと、再び目印が下流へ吹き飛びました! またもや追い気の強い縄張りアユが掛かりました。
オトリアユを弱らせないように探っていると目印が吹き飛びました。爽快なアタリがたまりません!
気温は高いものの水温が低いせいか、入れ掛かりにはなりませんでしたが、ポツポツと縄張りアユを掛けることができました。小ぶりなサイズが多かったとはいえ、1時間ほどで7尾のアユが釣れ、パスタ用の食材確保は無事に終了! 調理を開始することにしました。
天然アユを確保!いよいよ調理開始!
さて今回は、釣った天然アユを使った「アユと大葉の和えパスタ」を作っていきます。
アユの香りをパスタにもしっかりと残したいので、新鮮なうちに氷水で締めていきます。ところが…いざ締めようと取り出すと、アユが大暴れ(汗)。なんとかアユの動きを止めつつ、締めることに成功しました。
釣りたてのアユを氷水で締めますが…鮮度抜群。少し苦戦しました(汗)
ちなみに、今回の材料はこちらです。
【調理器具】
・カセットコンロ
・フライパン
・トレイ
・トング
・箸
・包丁
・まな板
・食器類
【食材】(2人分)
・アユ 5尾ほど
・パスタ 2束
・大葉 適量
・柑橘類(今回はライムを使用)
・塩
・コショウ
・鷹の爪(輪切り)
・オリーブオイル
香りと彩りを仕込む、アユの下ごしらえ
さて、さっそくアユを下処理していきます。藻類を食べるアユは、昆虫や川虫を食べるアマゴやイワナなどの渓流魚とは違い、腹ワタを出す必要がありません。釣ったあとの下処理が少ない魚としても知られていますが、今回はパスタ用ということで背開きにしていきました。
少し手間ではありますが、背開きにすることで火の通りも早く、調理時間を短くすることができます。
アユを背開きにしていきます。これが思いのほか難しい…なんとか形に(?)
頭を落とし、背開きにしていくのですが…これがなかなか難しい! ヌメリが多く、とにかく滑りました(笑)。そしてアユが小さいのでさばくのにも一苦労。これまた苦戦しながらも、なんとか背開きが完成。
5尾分を背開きに。アユが小さい場合は小型の包丁を使うとやりやすいでしょう。ヌメリには要注意です
このタイミングで大葉とライムを切っておきます。大葉はパスタに絡めたときに食感も味わいたいので少し大きめにきざみました。
そして今回は、夏らしいサッパリ感も出したかったので柑橘類を添えてみました。ライムのほかにカボスやスダチなどでもよいでしょう。こちらは輪切りにしておきます。
大葉や柑橘類はパスタにもベストマッチ。料理の彩りや風味を引き立てる役割があります香ばしく焼いて、旨味を閉じ込める
さて、具材がそろったら背開きにしたアユをフライパンで焼いていきます。フライパンにはオリーブオイルを多めに入れて、鷹の爪とともに熱しておきます。
フライパンが熱くなったところでアユを投入。薄っすらと塩コショウを振って、両面に焼き色がつくまで焼いていきます。このときアユが焦げつかないように火加減などを調整し、注意しながら焼いていきましょう。
焼き色が付き始めると香ばしいアユのニオイが…。これだけでも十分美味しそうです
あれだけ焦がさないようにと言っておきながら…はい、ちょっと焦がしました(笑)。フライパンにくっ付いてしまったので残念ながら背開きの姿を保てていませんが、なんとか焼き上げることができました。
(あとからきざむので細かいことは気にしません!)
残念ながら形は崩れてしましたが…味は変わらないのでOK!
アユが焼けたところで形がギリギリ残っているものはトッピング用に確保、それ以外は和える用にざっくりときざみます。今回はアユも小さく骨まで食べられそうだったので、そのまま一緒にざく切りにしました。
こちらはパスタに和えるためにざく切りに。骨までしっかりと焼いているのでそのまま食べられます
アユの背開きからここまで、想像以上に時間がかかってしまいましたが、いよいよパスタを茹でていきます!
パスタを茹でて、アユの風味とともに!
今回用意したのは「早ゆでパスタ」。2分ほどで茹で上がるので、外でサクッと作る釣りキャン飯にはピッタリだと思います。また、本来であれば別の鍋でお湯を沸かしてパスタを茹でるワケですが、私(あくまでも自己流です)はアユを焼いていたフライパンに少量の水を加えて茹でていきます。こうすることでアユの旨味や香りをそのまま残せるんじゃないかなと…(笑)。若干ワイルドな感じですが、フライパン1つで調理も進められるのでオススメです。
フライパンに残ったアユの身から旨味や香りが出るはず…
パスタが柔らかくなったら少量の塩を加えて下味を付けます。パスタの硬さ具合を確認しながら茹でていくのですが、自分好みの硬さになる少し手前で、きざんだアユと大葉を投入します。少し硬めの状態で具材とパスタ、茹で汁をフライパンの中で和えていくイメージです。
パスタが茹で上がる前に具材を投入、茹で汁と一緒に和えていきます
茹で汁がなくなりはじめ、具材がパスタとしっかり絡んだら完成です! 熱々のうちにお皿へと盛り付けます。トッピングのアユとライムを載せたら…特製「アユと大葉の和えパスタ」の出来上がり! さぁ~、食べますよ~!
茹で汁がなくなるまで和えていき、具材とパスタが絡んだところで完成です。お皿に盛り付けます!
釣りたてアユを贅沢に使ったパスタが完成!
そのお味は…?
天然アユを贅沢に使ったパスタが完成。さっそく食べてみましょう!
苦労して(?)作ったパスタのお味はどうでしょうか。さっそく食べてみます。ざく切りしたアユと一緒にパクリ。
「うん、美味しい! アユもちゃんと感じられる!」
ぶっつけ本番、初めて作ったパスタでしたが、なんとか成功といった感じです! なんといってもアユが美味しい! 香ばしさの中にしっかりとアユの爽やかな香りが感じられました。また、大葉とも相性抜群です。大葉はちゃんと食感が残せており、香りが強いかと思いきや、アユとのバランスもバッチリでした。
今回は凝った味付けにせず、あえてシンプルに。アユの美味しさを感じられるパスタに仕上がりました
お次は味変で輪切りにしたライムも絞ってみます。
「めっちゃ爽やか! 柑橘系はやっぱり合う!」
ライムを絞るとまた違った味に変化します。夏らしくサッパリとした味わいになりました。
想像以上の出来栄えに大満足! ついさっきまで目の前の川で泳いでいたアユを美味しくいただくことができホッと一息。改めてアユという魚の美味しさを実感しつつ、自然の恵みに感謝です!
無事に料理が完成したことにホッとしつつ、自然の恵みに感謝するのでした
さて今回は釣りキャン飯として、天然アユを使ったパスタを作ってみました! 釣りたてのアユから調理を開始したワケですが、難しいながらも楽しんで作り、最後は美味しく食べることができました! そして、アユの美味しさも再認識! まだまだいろいろな食べ方があると思うので、また次の釣りキャン飯で試してみたいと思います。
アユは1年で短い一生を終える魚ですが、季節が進むごとに味わいや香りが変わっていきます。そういった変化が楽しめるのもアユの魅力です。ぜひ、みなさんも来年の夏はアユを釣るところからスタートして、アユを使った釣りキャン飯を作ってみてはいかがでしょうか?
レポーター
プロフィール:鷲見 大地
1998年岐阜県生まれ /岐阜県在住
「海なし県」育ちということもあり河川で釣りを覚え、渓流ルアーフィッシングや鮎の友釣りをメインに釣りを楽しむ。釣具メーカー・ハヤブサに勤務し、最近は堤防・磯釣り・船釣り、SWルアーフィッシングなどに触れながら、日々勉強中。