【自民党静岡県連の新体制】47歳の井林氏がトップに。どんな方?知事選敗北後の党立て直しへ向け、求められている任務とは?
静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「自民党静岡県連の新体制」。先生役は静岡新聞の橋本和之論説委員長です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2024年6月11日放送)
(山田)今日は自民党静岡県連の新体制スタートという話題ですけども。今日の静岡新聞で、まさに話題になってましたね。
(橋本)6月10日に自民党静岡県連の県連大会が開かれ、衆院静岡2区選出の井林辰憲さんが会長になりました。会長は、例年だと大体4月に内定して、5月頃に行われる県連大会で他の三役などの役員人事とともに正式決定するのが慣例になっています。
今年も、県連会長だった城内実衆院議員(静岡7区選出)が続投と決まっていて、来年の知事選に向けて準備しなくてはいけないということが共通認識だったんですが、川勝平太前知事の突然の辞任でそれが1年早まってしまったんですね。5月の知事選で自民党の推薦した候補が敗れたので、城内会長は責任を取って辞任することになり、急遽井林さんの登板が決まったということになります。
(山田)城内さんは結構おなじみの感じがしましたが。知事選で自分たちの政党が推した候補が敗れると、会長は責任を取るというのが通例なんですか。
(橋本)自民党は、川勝さんの在任中ずっと対立関係にありましたので、選挙のたびにその対抗馬を出さなくてはならなかったということになりますよね。川勝さんが初当選した2009年の知事選以来、独自候補を擁立することができなかった2017年を含め、事実上の知事選5連敗ということです。
(山田)そうなんですね。
(橋本)前回の2021年の知事選では、自民党の推薦で前参議院議員の方が知事選に出馬しましたが、川勝さんに敗れ、就任間もなかった当時の塩谷立県連会長が辞任したということがありました。そういう前例はありますが、全部の知事選で、負けたからと辞めているわけでもないので、その時の状況や、ご本人がその責任についてどう考えるかということによって決まるのだと思います。
今回の知事選で推薦した候補は、当初は知名度で圧倒的に劣っていましたが、そこからスタートしてかなり追い上げて、むしろ「よくやった」という見方も党内にはあるんですね。
(山田)そうですか。
(橋本)城内さんの地元である県西部で票差が大きく、当選した鈴木康友さんの方がだいぶ多く得票したということや、自民党所属の浜松市議の方で、党の方針に反して鈴木さんを支援したという人もいて、そういう造反を防げなかったということが、城内さんの判断に影響してるのかなと思います。裏金事件の逆風で4月の衆院3補選以降、注目選挙で静岡県知事選も含めて自民党の負けが続いているので、そうしたことに責任を取るという意味合いもあるかもしれません。
(山田)確かに今の解説聞いたら、なんか納得できる感じがしますね。城内さんの地元である県西部で、自民党が負けてしまったというところも大きかったわけですね。
(橋本)はっきり得票に違いが出ましたので、そうしたことも影響があったんじゃないかと。
新会長は47歳で県連のトップに
(山田)井林新会長は、どういう方なんですか?
(橋本)京都大学大学院から国土交通省に入って、官僚として働いておられた方なんですが、2010年に自民党県連が実施した候補者公募に応募し、選ばれて政界に転身しました。
2010年というと、2009年に政権交代があったじゃないですか。自民党が野党だった頃です。自民党がある意味落ち目になっていた時に、公募に応じて選ばれたんですね。2年後の2012年の衆院選で民主党の前職に勝って初当選しました。ここでまた民主党から自民党への政権交代があった衆院選です。以降4回連続で当選し、昨年9月の岸田内閣改造で内閣府の副大臣に就任しています。
(山田)そうなんですね。
(橋本)で、年齢が47歳なんですよ。
(山田)お、若い⁉
(橋本)政治家とすると、若いという感じがしますよね。80代の方が活躍されたりしているので。自民党の静岡県連の国会議員で一番若いんです。もう1人47歳の方がいますが、本当に若手が県連のトップに立ったということになりますね。
(山田)そうか、一番若いのに静岡県連の会長ということですよね。
(橋本)国会議員が会長になるのが慣例になっています。県内にいる県議会議員がやった方がいいとかいろんな意見もあったりはするんですが、国会議員が代々務めています。今回、若返りが図られたということになるかと思いますね。
(山田)狙いもあるんですか、若い人にしたことに。
(橋本)あるかもしれませんが、そればかりではないです。
今、自民党がこういう状況の中で、世代交代した方がいいということも一方にあると思うんですが、苦しい台所事情で、なり手がいないということも背景にあります。
裏金事件で岸田内閣も自民党も相当支持率が落ちているので、衆院解散・総選挙が今国会中はできなくなったという見方が強いですが、秋ごろにあるのではないかということも言われています。選挙が行われる時に世論がどういう状況にあるか分かりませんが、よほどの特別なことがない限りは、自民党にとっては次の衆院選は相当厳しい選挙戦になると予想されています。
(山田)新会長も大変ですね。
(橋本)「選挙に絶対に負けない」という強い議員だったら、県連会長をやってもどうということはないかもしれないですが、多くの自民党議員の方は「次の選挙に自分が当選できるかどうか」という不安を抱えて選挙戦に挑むような可能性もありますよね。
自分の選挙戦に集中したい時に、県連会長は全県の状況を見なくてはならないので、本音では、正直やりたくないという人が多いと思います。そこで、あえて井林さんは火中の栗を拾ったというか、就任したということです。
(山田)確かにおっしゃる通りで、自分の選挙になかなか集中できなくなるんですよね。
(橋本)自分の選挙区に帰って支援者を回りたいと思ったときに、会合が入ったりしてそちらに行かなければならないとか、そういうことも増えていきます。
(山田)自分の選挙に使える時間も少なくなっていくんだとしたら、自分だったらやりたくないな。会長という立場だから、なんかすごい感じはしますけども。
(橋本)厳しい党の状況なので、次の県連会長には、知事選の敗北から県連組織を立て直して、次期衆院選に備えるという重要任務があります。
まず、知事選で党の推薦に反して鈴木さんを支援した浜松市議3人の処分をどうするかという問題が持ち上がっているので、それを決着させなければいけません。また、現職の離党と辞職があって、衆院8区と3区は自民党候補がいない状況になっているので、それをどうするのかというのも、井林新会長にかかっていると。難題を解決しなければいけないという状況です。
世代交代を感じさせる人事、今後の党の行方に注目!
(山田)今日の解説を聞くと、結構、井林新会長は大変じゃないですか。
(橋本)一番状況をわかっていて党を仕切らなければいけないというのは、本当に大変だと思います。
(山田)大丈夫なんですか。
(橋本)何とも言えないところがありますが、せっかく若手で世代交代を感じさせる県連トップの人事だったので、井林さんに結果を出してもらいたいなと思います。
けれどもそうした課題を解決したとしても、やはり次の選挙は自民党には厳しい選挙になるというのはやむを得ないのかなと思いますね。
(山田)自民党県連の会長として、知事とのやり取りだったりとか、繋がりだったりとかは…?
(橋本)川勝さんはそんなに積極的ではなかったですが、静岡県として、例えば「こういう政策をやりたいからこの支援をお願いします」とか、「こういう法律をぜひ作ってほしい」というようなことを地方から国や国会に要望するわけですよね。今は自民党が政権与党ですから、知事が「自民党に働きかけたい」という時には、当然接点を持たなければならないと思います。
今、鈴木新知事に代わって、川勝知事の時代よりも前の状況に戻った感じがするので、通常通り国会に要望すべきことは要望していくと思います。その時に、「知事選で敵対したからもう自民党とは関係ありませんよ」というわけにはいきません。そこはやはり、渡り合う、交渉するということが必要だと思います。
(山田)いや、でも47歳。すごいですね。われわれ静岡県民としては、見守っていかなければいけない存在ですからね。どうなっていくんでしょうか?今日の勉強はこれでおしまい!