【直木賞候補作を読む②麻布競馬場さん「令和元年の人生ゲーム」】舞台の整えが巧み
静岡新聞教育文化部が200字でお届けする「県内アートさんぽ」。不定期で、7月17日に選考発表がある第171回直木賞の候補作を紹介する。第2弾は麻布競馬場さん「令和元年の人生ゲーム」。10日のSBSラジオ「3時のドリル」では、同賞の選考予想を行った。
慶応大のビジコンサークルの狂騒と失意を描いた「平成28年」を皮切りにした短編集。実在の経営者が浮かぶ「キラキラ系」ベンチャー、社会課題解決への強い意志を持つZ世代が集うシェアハウス、古き良き銭湯の再生を考えるコミュニティー。とにもかくにも、舞台の整えが巧み。この「板」なら誰が何をしても面白いだろう。独立した四つの物語それぞれで、中心軸から外れた場所に位置取りする「沼田」は、一つの小説的発明である。(は)