「宇宙人のような仮面」で知られる3000年前の三星堆遺跡 〜新たな研究成果
三星堆遺跡とは
三星堆遺跡(さんせいたいいせき)とは、中国四川省広漢市にある古蜀文明の代表的な遺跡である。
1934年に初めて発掘が行われ、1986年には1号・2号祭祀坑から巨大な青銅仮面、青銅神樹、金製品、玉器などが相次いで出土した。
それまで知られていた古代中国文明のイメージとは大きく異なる造形の遺物が大量に見つかったことで、三星堆遺跡は古代史を塗り替える大発見として、世界的な注目を集めることになった。
三星堆遺跡で特に有名なのは、大きな耳や突出した目を持つ青銅仮面である。
特に目が大きく突き出た青銅仮面は、その異様な姿から「宇宙人のようだ」と形容されることもあり、今なお多くの人々を惹きつけている。
三星堆遺跡の重要性は、その奇抜な造形だけにあるのではない。
それまで古代中国文明は黄河流域を中心に語られることが多かったが、三星堆遺跡は四川盆地にも高度な青銅文明が存在したことを示す、非常に重要な存在となった。
近年も三星堆遺跡では発掘と研究が続けられている。
2019年以降には新たに6つの祭祀坑が見つかり、従来知られていた1号・2号祭祀坑と合わせて、合計8つの祭祀坑が確認された。
2025年9月の三星堆フォーラムでは、放射性炭素年代測定により、3号・4号・6号・8号祭祀坑の埋蔵年代が紀元前1201年から紀元前1012年ごろ、つまり商代末期にあたる可能性が高いことも発表された。
現在もなお、三星堆遺跡は新しい発見を生み出し続けているのである。
今回は、その中でも特に注目を集めた「彩色された青銅器」について取り上げたい。
出土品には彩色がほどこされていた?
2025年9月27日、四川省徳陽市で開かれた「2025三星堆フォーラム」において、三星堆遺跡に関する新たな研究成果が発表された。
その中で特に注目を集めたのが、三星堆遺跡から出土した青銅器には、大量の彩色が施されていたという発見である。
私たちが青銅器と聞いて思い浮かべるのは、青緑色をした古びた金属の姿だろう。
しかし、あの青緑色は長い年月を経て生じた錆の色で、もともとの青銅器は現在見られる姿とは大きく異なっていた可能性が高い。
三星堆遺跡からは、金の装飾が施された青銅仮面なども出土している。そのため、古蜀の人々が青銅器を金で飾っていたことは以前から知られていた。
だが今回の研究では、金だけではなく、赤や黒といった色彩が青銅器の表面に広く用いられていたことが明らかになった。
見つかった赤
赤色は、青銅神樹の花びら、青銅製容器、人物像の衣服に刻まれた細かな文様の溝などから確認された。
さらに、数百点に及ぶ青銅人像、神獣、龍頭などにも赤い顔料が使われていたことが明らかになった。中には、肉眼でも赤色の痕跡を確認できるものがあるという。
この赤色には、天然の鉱物顔料である辰砂が使われていたとみられている。辰砂は鮮やかな赤色を出す顔料であり、古代中国でも祭祀や装飾と深く結びついていた。
青銅神樹の花びらが赤く彩られていたとすれば、それは単なる装飾ではなく、太陽や生命力、神聖な世界観を表す意味を持っていた可能性もある。
見つかった黒
黒色の痕跡は、青銅人像や青銅仮面の眉、目の周辺、さらに特殊な文様や記号の部分などから確認された。
青銅製の鳳凰にも黒色の彩色が使われていたことから、鳳凰の羽には、流れるように鮮明な黒い羽模様が描かれていたとみられる。
使われていたのは天然漆だが、黒色の漆塗装はA4用紙の厚さの半分にも満たないほど薄かったという。
三星堆遺跡の彩色が注目を集めているのはなぜか
三星堆遺跡の彩色青銅器が注目されているのは、単に美しいからではない。
これまで古代中国の彩色青銅器は、主に戦国時代から秦漢時代のものと考えられてきた。
しかし今回の三星堆の例で、それより約1000年も早い時期に、高度な彩色技術が存在したことが明らかになった。
四川省文物考古研究院も、三星堆の彩色青銅器は数が多く、技術水準も高く、天然顔料が使われていた点に大きな意義があるとしている。
また2025年の三星堆フォーラムでは、祭祀坑から出土した金器の総重量が約2000グラムに達することや、三星堆の青銅器に複数部品を組み合わせる高度な鋳造技術が使われていたことも発表された。
三星堆遺跡は、彩色、金器、鋳造技術の面から見ても、古蜀文明の高度な技術と独自の美意識を示す重要な遺跡なのである。
参考 : 四川省文物考古研究院「2025三星堆論壇相關研究成果」他
文 / 草の実堂編集部