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TEAM SHACHIのラウドポップ、EMPiREのSUPER COOL 海外ポップスのトレンドを押さえたJアイドルの深化|「偶像音楽 斯斯然然」第48回

Pop’n’Roll

TEAM SHACHIのラウドポップ、EMPiREのSUPER COOL 海外ポップスのトレンドを押さえたJアイドルの深化|「偶像音楽 斯斯然然」第48回

昨今、海外トレンドを押さえながら、さらに深化させたサウンドを聴かせているTEAM SHACHIとEMPiRE。独自の様式を持つ日本のポップミュージックシーンの中で、ある種、異質とも言えるこの2組のサウンドデザインを、冬将軍が独自の視点で分析する。

『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

Ringwanderungが1月10日に渋谷WWWで行なったワンマンライブ<hello hello>。2020年11月29日から紆余曲折あり、延期となってしまったこの公演、結果的には会場規模も大きくなって盛況。このコラムで何度か取り上げているように、動く幾何学模様ともいうべき趣を持ったグループで、緻密によく練られたリズムパターンと精巧に鍵盤とギターが絡み合っていく丁寧なアレンジ、繊細なサウンドプロダクトがたまらない。メンバーも全員歌えるし、キレと俊敏さを併せ持ったパフォーマンスも良い。そんなクオリティの高さは知っていたのだが、やはり長い時間でじっくり進行していくワンマンライブを観ると印象は変わる、もちろんいい意味で。こんなに個々含めて表現力があるとは思わなかったし、メンバーのキャラ立ちを考慮したような、「カブトムシ」(aiko)、「OIDEMASE!!〜極楽〜」(FES☆TIVE)をカヴァーという予想外のセトリも飛び出した充実の内容。

新衣装も初めて生で観た。軍服テイストのシュッとしたイメージを踏襲しながら大胆な赤青の色使いの衣装は、精悍さと艶やかさが共存するハイセンスなシルエット。何気に靴がめっちゃカッコ可愛いデザインであることに気づき、ついつい足下を追っていたり(何フェチだよ)。MCのゆるさ含めて、いいグループだと思った次第。強いていうなら、みょんの舌ペロに期待(詳しくは過去記事参照)。

来週20日には待望の1st EP『Re』がリリースということで、今後が楽しみで仕方ないRingwanderungの話題でした。

Ringwanderung - esライブ映像

さて、閑話休題。ここからが今回の本題。最近、ポップミュージックの海外トレンドを押さえた路線を、さらに深化させているグループを2組取り上げたい。

TEAM SHACHIの“ラウドポップ”

TEAM SHACHIがとんでもない曲を投下してきたぞ。2020年12月30日に配信リリースされた「JIBUNGOTO」。70年代~80年代の海外アニメ、『バーバパパ』あたりのサントラに使用されていそうな、なんともつかみどころのない質感。グループの大きな特色であるホーンセクション“ブラス民”だが、その絶妙なホーンの入れ方はKid Creole and the Coconutsが現代的なミニマルテクノに迎合を図ったような耳馴染み。それでいて、全体的にはどこかTalking HeadsやCabaret Voltaireあたりのニューウェーヴ~ニューロマンティックな香りもする……あ、初期の米米CLUBっぽいのかも?

TEAM SHACHI 「JIBUNGOTO」【Official Music Video】

ぬうっと語尾を伸ばした、キー低めのボーカルと、バリトンサックスの響きの交わりがたまらない。そんなことを考えていると、リズムと旋律がすっぽ抜けていくBメロで落としにかかり、サビで一気にはじけていく。振りかぶった荒ぶるドラムが足癖の悪いツーバスを合図に猛り狂い、爆発していくメロディはものすごくTEAM SHACHIっぽい。なんだこの怪曲は!? シュルレアリスム全開のハイセンスなMVも相まって、何度でも観れるぞ、何回でも聴けるぞ。リピート沼。

楽曲を手掛けたのは誰?と思ったら、日本国内初の音楽プロデューサーユニット、Face 2 fAKEということで納得。ジャニーズにEXILE、BoAから恵比寿マスカッツまで、シンフォニックとエレクトロニックをハイブリットさせた次世代サウンドを作らせたら右に出るものはいないであろう2人組である。

この「JIBUNGOTO」がFace 2 fAKEの楽曲だと聞いて、1番最初に思い浮かんだのはSMAPの「Peace!」(1997年9月)である。ちょうど、「セロリ」(1997年5月)と「夜空ノムコウ」(1998年1月)の間にリリースされたシングルで、地味な印象があることは否めないが、華やかなホーンセクションとキレの良いリズム、柔軟性のあるメロディラインが印象的な名曲だ。特に、アルバム『SMAP 012 VIVA AMIGOS!』(1998年)に収録されているバージョンは、スティング、デヴィッド・ボウイ、 ダフト・パンク……参加したアーティストを挙げればキリがないセッションドラマー、オマー・ハキムと、『CBSオーケストラ』のベーシスト、ウィル・リーのリズム隊に、ニューヨークのブラスセクション、East 4th HornSがビシビシキメてくる名音源である。同曲は、Face 2 fAKEのアレンジではないものの、どう聴いてもブラスが入っていることを想定して作られた楽曲であると思われる。この手の楽曲に珍しく、ファンクリズムを抑制させているところも注目だ。そんなFace 2 fAKEの駆け出し作品「Peace!」と、現在最新作であるこの「JIBUNGOTO」、楽曲のタイプはまったく異なるのだが、この各ホーンセクションアレンジを軸とした楽曲に、時代の流れとそれぞれのトレンドを感じたのである。

TEAM SHACHIが今回、Face 2 fAKE曲で来たという攻め方も興味深い。前作の『SURVIVOR SURVIVOR / MAMA』はJosef Melin、Agnes Grahn、Viktor Strand、Ida Pihlgren、Chantal Richardson、Paulina Cerrillaといった、ジャニーズ方面のポップスを多く手掛ける制作陣の起用と、コライト(複数人によるチーム制作)で制作されていた。それを考えれば、「JIBUNGOTO」にしても、TEAM SHACHIが目指すところが何となくわかってくる。

TEAM SHACHI 「MAMA」【Official Live Music Video】

TEAM SHACHIが掲げる“ラウドポップ”は、いわゆるオリジナル性を出した造語であり、一般的な音楽ジャンルとして使われる言葉ではない。“ラウドロック”は、90年代の世界的なオルタナティヴロックの隆盛から、ミクスチャーロック、モダンヘヴィネスと並んで使用された和製英語だ。ゼロ年代以降は、Emoが加わった日本独自のヘヴィミュージックシーンを指す言葉として浸透している。では、ラウドポップとは何なのだろう。

改名したTEAM SHACHIがブラス民と呼ばれるホーンセクションを従えて、かき鳴らしたのは、スカ~ロックステディをベースにしたものだった。ホーンを加えたバンド編成とくれば、そういった音楽に行き着くのは至極当然。これをラウドポップと言われても頷ける。ラウドとは“騒々しい”、“派手な”という意味である。

TEAM SHACHI「Rock Away」【Official Music Video】

そうした中で、TEAM SHACHIがさらなる進化を見せたのが「SURVIVOR SURVIVOR」「MAMA」の2曲である。いうならば、ダンスミュージックに寄ったポップス、現在の世界的なポップミュージックのトレンドを押さえたものだった。それをTEAM SHACHIらしくホーンを加えたバンド編成で、ラウドにかき鳴らしているのである。

TEAM SHACHI 「SURVIVOR SURVIVOR」【Official Live Music Video】

この手法は、このコラムの読者の方ならお気づきかもしれないが、BLACKPINKと同じベクトルである。BLACKPINKは、音源では打ち込みのダンスミュージックだが、ことライブにおいてはアフリカ系アメリカ人の凄腕プレイヤーを従えたバンドセットで、ラウドにかき鳴らしているのである。“ロック(バンド)は終わった”と囁かれる昨今、その対抗馬であるダンスグループがそうやってバンドに重きを置いているのは注目すべきところなのだ。

よくも悪くもガラパゴスとも呼ばれる日本のポップミュージックシーンの中で、TEAM SHACHIがこうした世界的なトレンドを見据えているのは実に興味深い。そして、それをただの真似事ではなく、ホーンアレンジであったり、独自のエッセンスを散りばめているところも抜け目ない。今回の「JIBUNGOTO」も、ぬらっとしたデジタルビートで飄々としながらも、サビではTEAM SHACHIらしい、ラウドなバンドサウンドで攻めてくるハイブリット感は流石の手腕。どこか元気なイメージの強いメンバーのボーカル力の、さらなる多彩さを感じることができる曲である。きちんとTEAM SHACHIのオリジナリティが確立されているのだ。それにしても、無機質な不気味なアレンジでも、躍動感ある派手なアレンジでも、突き抜けながら馴染んでいく秋本帆華の声の強さよ……。

これから益々面白くなっていくであろう、TEAM SHACHIから目が離せない。

EMPiREの“SUPER COOL”

そして、もう1つ、現在のトレンドをしっかりと押さえながらもオリジナルに昇華しているグループがEMPiREだ。以前、高らかに声をあげる“This is EMPiRE SOUNDS”、それこそが彼女たち流のガールクラッシュ、EMPiREの謳う新機軸“SUPER COOL”なのだろう、と述べた。

先日、1月4日の東京国際フォーラムでのライブでサプライズ披露された「ERROR」は、EMPiREがそうやって切り拓いてきた新たな境地をさらに推し進めた楽曲。ダークなエレクトロサウンドと、凛とした強さを放っていくように、低めのキーから登っていくメロディラインが印象的だ。

EMPiRE / ERROR [EMPiRE BREAKS THROUGH the LiMiT LiVE] at Tokyo International Forum HallA

EMPiREの面白みは、ロック系アイドルのパイオニアというべき、WACK&SCRAMBLESが、お洒落感のあるエレクトロミュージックをやっているというところにある。松隈ケンタ節ともいうべき、キャッチーで時折オリエンタルな香りのする旋律を、歪んだエレクトリックギターではなく、煌びやかなエレクトロニックなサウンドが迎え撃つ。80年代ニューウェーヴから、90年代のエイベックス的J-POP、そして近年のダンスミュージックに至るまで網羅している。もし、完全にダンスミュージック畑のクリエイターが手掛けたら、こうはならなかったのだろうな、ということがEMPiREの魅力にもなっているのだ。「WE ARE THE WORLD」や「FOR EXAMPLE ??」といったサビを持たないEDM手法も、“ロック畑の人から見たEDM”という、ある種のアイコン的なわかりやすさがある。それが現代的なJ-POPスタイルのアピールとしても、功を奏していると思う。

EMPiRE / WE ARE THE WORLD [EMPiRE’S GREAT REVENGE LiVE] @Zepp DiverCity

「ERROR」を手掛けたoniは、女性ならでは蠢く黒い感性を音に表したようなダークなニューウェーヴサウンドを得意とするクリエイター。

微睡むようなサウンドは、「ERASER HEAD」や「maybe blue」に見られるように、MAYU EMPiREの内向的な歌詞との抜群の相性を見せてきたが、今回の「ERROR」はMAHO EMPiREによる作詞。メロディに対する詞の置き方、独特の香りを放つ柔らかな言葉選びを作家性とする彼女だが、同曲はWACKの伝家の宝刀というべき決め台詞“行かなくちゃ”を使用し、強い決意を全面に感じられる作風になっている。

重厚感溢れるダークエレクトロにのしかかっていく、勇ましいボーカル、鬼気迫るラップ……といった歌声が織りなす臨場感は、かっちりとまとまったスタジオ音源よりも、YouTubeにアップされている国際フォーラムのライブ映像からの方が感じられることだろう。本編37曲をノンストップで披露した直後のアンコール1発目とは到底思えない完成度。いや、であるからこそ、この張り詰めた緊迫感が作り出せているのかもしれない。いい意味でのドライな感触のする完成度の高いスタジオ音源と聴き比べてみると、よりこの楽曲の深みに気づくことができるはずだ。

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