Yahoo! JAPAN

渡辺えりと高畑淳子が語る「老後」の不安を赤裸々に告白!? 主演舞台『喜劇 老後の資金がありません』で初共演

SPICE

(左から)渡辺えり、高畑淳子

2015年に刊行され大ベストセラーとなった垣谷美雨による同名小説を舞台化した、『喜劇 老後の資金がありません』が2021年8月13日(金)より新橋演舞場、9月1日(水)より大阪松竹座で開幕する。コメディに定評のあるマギーが脚色・演出を務め、同い年の演劇人である渡辺えり高畑淳子がダブル主演を務める。

SPICE編集部は、今回が意外にも舞台初共演となる渡辺えりと高畑淳子にインタビューを実施。それぞれが描く「老後」を語ってもらった。

ーー今回の『喜劇 老後の資金がありません』という作品は原作がベストセラーになって、随分と話題になりましたよね。数年前には、政治家が「老後に約2000万円が必要」などと発言したこともありました。
 
渡辺:話題になりましたね。当時、2000万円持っている演劇人が誰もいなくて、みんなで「どうするんだ?」と飲み会をしながら話し合ったことを覚えています。しかも、2000万円だけでは暮らせないという話も聞きますよね。誰も2000万円を持っていないのに、2000万円あっても老後は暮らせないなんて! じゃあ、どういう風にしていけばいいのかすごく悩んだ記憶があります。
 
しかもコロナ禍になって、どんどん貯金は減っていくわけでしょ? そんなときにこの『喜劇 老後の資金がありません』という芝居をしなくてはいけないことに、ある意味重い責任を感じていますよ。老後の資金がなくても暮らせるようなアイディアを考えていく。そういう明るい方向に持っていきたいなと思っています。
 
高畑:私はものすごい用心深いタイプなので、意外と貯め込むタイプなんですよ。でも、お金のことだけではなく、もっと人生には大切なことがあると思うんです。心の持ち様というか。そういう部分の根っこが太くないと、死を迎えることや、老け込んでいくことには耐えられないと思うんです。絶対死ぬのが分かっていて、生きてるわけじゃないですか、人間って。だから、このお芝居は実際的なお金のことを言っているようで、実は大切なことはお金じゃなくて……という展開が、また良いところですね。

(左から)渡辺えり、高畑淳子

渡辺:……ただ、マンションって、管理費だけでも出ていきますよね。私は家があれば、もう大丈夫だと思っていたけど、管理費も毎月取られていくとしたら、その分働いていかないと、マイナスになっていく。しかも、年取ったら働けなくなるわけだし、介護施設にも月15万とかかわるわけでしょう? 脚本の中に「お金持ちの人はたくさん年金をもらえる」といったようなことが書かれていたけど、それ、本当?
 
高畑:厚生年金のことじゃないですかね。私たちのように自由なことをしてきた人の年金じゃなくて、会社で働いていた人たちがもらえる年金。
渡辺:え、会社から年金もらえるの?
 
高畑:うちの母は、亡くなった父の会社の年金を今でももらっていますよ。

渡辺:すごい! じゃあ、全然心配いらないじゃない。
 
高畑:いや、私じゃなくて母のお金ですから(笑)。
 
渡辺:知らなかったなぁ。それぐらい私、疎いんですよ。死ぬまでにあとどれぐらいのお金が必要なのかな。恐怖に近いものを感じます。だからそういうことを考えないで、演劇だけを観ていたいですね。逃げたいです、芝居に(笑)。

ーーお二人にとって「老後」とはいつからのことだと思いますか? また、幸せな老後とはどんなものでしょう?
 
渡辺:私には幸せな老後はないなと思っています。幸せな老後って、NHKの番組に出てくるような、中国の田舎で、孫たちに囲まれて暮らしているおばあさんのことだと思うんです。100歳すぎても毎日芝刈りに行って働いているんだけども、正月になると、都会に出ている子どもや孫や玄孫たちも集まってきてさ。みんなで料理をつついて、どぶろくなんか飲んで、笑っている。そういうのが、老後の幸せだと思っています。
 
私は、定額給料をもらえるわけじゃないし、「演劇おばさん」みたいなあだ名になっていて、小劇場を観て、客席で死んでるみたいな。毎日芝居を観ているから、お金も底をついちゃって、なけなしの三千円を握り締めて、スズナリとかに行ってさ。それで、客席で、「渡辺が死んでるよ」とか言われちゃうんじゃないかと妄想してしまう……。
 
ーーでも、劇場で最期を迎えるのなら、それはそれで幸せなのでは?
 
渡辺:観てて死ぬのはいいんだけど、それがつまらない芝居で、死んじゃったら? 「あーこれは面白い」と思って死にたいのに、義理で観に行った面白くない芝居の途中で死ぬのは嫌ですよ。それなのに、渡辺が「この芝居を観て死んだ」と記事書かれるわけでしょう(笑)。
 
なんとか自分のやりたいことをやって死んでいきたいと思うんだけどねぇ。私の親が介護施設にいて、母親もかなりの認知症で。自分も認知症になったとすると、介護施設に行くわけじゃないですか。私は断捨離が苦手で、思い出のものを取っておくタイプなんです。施設に行くとモノを持っていけない。すごくシンプルなところにいなきゃいけない。それが耐えられないんですよね。本とかアルバムとか文房具がいっぱいあるところにいたいんです、寂しがりやなので。
それから書きためた生原稿の整理もしなくてはいけない。10年かけて生原稿を整理できるか。……それは老後? 老後っていつのことをいうの? 寝たきりになった後? 仕事を辞めた後? そうすると、森光子さんや杉村春子さんには老後はあったのかな? と考えてしまいますね。

(左から)渡辺えり、高畑淳子

高畑:私は自分で老いていると思います。おばあさんになったんだなってすごく痛感しています。
 
渡辺:本当に? どんな時に?
 
高畑:自分が写った写真とかオンエアーされた映像を見て、私はおばあさんになったんだなと思うんです。もうちょっときれいだと思っていたんですけど、そうではないと分かってきて。はっきりと、老いたんだって。それはそれで良いんです。
 
なぜかというと、お金もないですけど、66歳、こうやってお芝居の現場に呼んでもらって、稽古場にまだ行ける。66歳で、今日行くところがあるんですから。芝居をお仕事にできるなんて思わなかったです。「30歳までよ」と言われて、田舎から出てきて、箸にも棒にも掛からなくてね。30代は本当に綺麗で、体力も知力もあったけれど、仕事が全くなくて。ちょっとずつ朽ち果ててきた時に、お仕事ができるようになるなんてね~。

この仕事ができると思っていなかったので、ものすごく今楽しいんです。例えば2年後ぐらいに死んでも悔いはないです。今後、もっともっと仕事は少なくなっていくし、大きなお役はできなくなっていくかもしれないけど。よぼよぼのおばあちゃんがひょこっと舞台や映画に出てくるのって、すごく楽しいじゃないですか。そんな感じで、老いも楽しめたらいいなぁと思います。

ただ、迷惑はかけたくない。うちの母もホームに入って、お金がかかっていますけど……あれを自分の子どもたちにやらせるのは嫌だなぁ。
 
ーーお二人が節約生活をおくるとして、これは「譲れないぞ」というものや、「こんな節約をしています」というのがあったら教えていただけたらと思います。
 
渡辺:私は演劇・映画のチケット代が節約できないです。1ヶ月で15万円はかかりますね、観劇代。それは何も観にいかなかったら、節約できますよ。だけど、やっぱり節約したくないんですよね。反対に、節約しているのは……今はゴミ袋もお金がかかるじゃないですか。だから、ゴミを新聞紙で包んでみたりとか、食費を削って、一食をサバ缶にしてみるとか。いろいろアイディアを練りながら割と節約はしていると思いますね。

高畑:私は節約を苦しいと思ったことなくて。若い頃、本当に貧乏でお金がなかったので、今苦しいとも思わないんです。夕方、スーパーにいくと夕方割引きのものを買いますし、お腹も強いので、結構古い物も食べられますし(笑)。
 
渡辺:わかる!(笑)
 
高畑:お弁当ももらって帰って、冷凍しておいて、また食べたり。特に食べ物に関しては、我慢強いですね。お金がかかるものは、母のホーム代とおうちのローン。何もしなくても出ていくので、それが、大変ですね。でも、お洋服とかは、別にね。

渡辺:だって、今着ているお洋服も自分でお作りになっているんですよね!
 
高畑:そうそう。布だけ買ってきて、自分で縫ったんですよ。
 
渡辺:さすが劇団育ちですよね。劇団育ちの人って、辛抱強いし、ご飯を食べなくてもいいし……。
 
高畑:いや、食べなくていいわけじゃないですよ(笑)。

(左から)渡辺えり、高畑淳子

ーー舞台初共演ということで、稽古場で何か楽しみにされていることはありますか?
 
高畑:私は、今日ほぼ初めてえりさんとお芝居のお話をしたのですが、話が面白くて。稽古自体は黙々とやるというよりも、余計なこと考えていたり、話したりしている方が、根っこが太くなると思っているんです。いかに無駄なことを考えている時間をもったかで、芝居のできに違いが出る気がします。
 
40年前ぐらいですかね。3〇〇(さんじゅうまる)の女優さんととても仲良しで、会うたびに「渡辺えりはすごい。天才だ」と言われて。それが分かるような気がします。そういう刺激のされ方をする女優さんには滅多に会えないんですよ。ものすごく楽しみです。
 
渡辺:そうですね、私もいろいろな話をやっていきながら稽古することが楽しみで仕方ないです。
 
ーーお互いの印象を教えていただきたいのですが、何かキャッチコピーで表現していただけますか?
 
渡辺:一言で語れないという、いい意味の言葉ないですかね……いい意味で高畑さんは予想がつかない。全部役が違うように見えるのが好きなんですよね……。あぁ、「ボーダーレスな存在感」なんてどうですか? 境がないというイメージで。
 
高畑:えりさんは「知的なトラクター」という感じですかね。お話しさせていただいて、本当に知的な方だな、ものを書く方だなと痛感しました。それでいて、とてもパワフルだし、搭載エンジンがターボだから。「知的なトラクター」。
 
ーーストーリーの特にここが面白そうだなと言うところは? また、どんな芝居を見せていきたいと思いますか?
  
渡辺:毎回新鮮にやりたいですね。今回の役は、自分にない部分が多い。私はいい意味でも悪い意味でも、子どもっぽいところがあるのですが、割と大人の部分が篤子さん(※渡辺が演じる役名)にはある。それに、周りから縛られているところもあるので、それをちゃんとリアルに演じることが私にとっては難しいかな。そこは挑戦でもあります。
  
見所は、こういう人柄だと思っていた人が、実はそうではない面が出てくる瞬間ですね。そして、突然歌ったり踊ったりするシュールな部分も見所だなと思います。
 
高畑:お話として面白いのは、年金詐欺にいきそうなところは非常に劇として楽しいと思います。
……お客様から見たら、えりさんと私は年も近いし、イメージも似ているところがあると思うんですよ。その2人が同時に食べられるというか。これはメニューとしてはすごく豪華だと思うんです。私も、好きな俳優さん同士がお芝居してくれたら、どんなに楽しかろうと思うんだけど、意外となさらないんですよね。

その役をどう演じるかというのももちろんあると思うけれど、素のえりさんや、素の私がそこにいて、その時間が愛おしいと思っていただけたら。2人がいることが楽しそうだったわ、劇場に行ってよかったわと。そんな芝居になるような気がしています。

(左から)渡辺えり、高畑淳子

取材・文=五月女菜穂  撮影=iwa

【関連記事】

おすすめの記事