部署ごとに取引先情報をバラバラ管理 6割が手作業対応、データ整備に課題 Sansan調査
Sansan(東京都渋谷区)は11月11日、企業のデータ管理に関する実態調査の結果を発表した。
企業ではシステム導入が進む一方で、データ連携や整備の遅れが依然として大きな課題となっている。営業支援、契約管理、請求管理といった取引先情報の管理では、重複登録や表記ゆれなどの不整合を経験した企業が約8割に上った。
取引先情報が部門間で分断する「データのサイロ化」が深刻化
企業のDXが進んだこともあり、業務で利用するシステムの導入数は平均23.3個、そのうち取引先情報を扱うシステムは平均10.6個だった。同社によると、部門や業務領域ごとに個別導入するケースが増加。取引先情報が部門間で分断される「データのサイロ化」が深刻化している。
取引先データの管理においては、「重複」(83.5%)や「表記ゆれ」(82.2%)に加えて、「更新漏れ(異動・住所変更・契約条件など)」についても、81.8%の企業が何らかの形で経験している(「頻繁に」「ときどき」「あまりない」の合計)。
一方、「更新漏れはまったく発生していない」とした企業はわずか11.2%にとどまった。
回答者からは「異動時に担当の入れ替えが発生した際に、登録管理の漏れが発生しやすい」「複数システムで同じ企業が別に登録されており手間がかかる」といった課題や悩みが寄せられた。
システム連携の不備が原因で、6割以上の企業で手作業更新が発生
約3社に2社で、取引先データを扱うシステム連携の不備が原因で、6割以上の企業で手作業による更新が発生。(66.0%)別の質問では、AIとシステムを連携させていても、87.3%が「期待通りの精度が出ない」と回答しており、「データ基盤の整備不足が、AI活用の効果にも影響している」と調査では分析している。
一方で、3割以上の企業がシステム統合やデータ整備のプロジェクトを進行中で、すでに取り組みを終えた企業も含めると、その割合は過半数に達する(56.1%)。
プロジェクトへの平均投資額は6.4億円、期間は4.2年、関与人数は平均119人に上り、課題解決に向けて大規模なリソースが投入されている実態も明らかになった。
レガシーシステムは経営や事業の足かせ、指摘されている「2025年の崖」
経済産業省は、既存システムの課題に伴う経済損失のリスク、いわゆる「2025年の崖」によって、年間最大12兆円もの経済損失が発生すると指摘。DXを阻害するレガシーシステムは、「古い制度としがらみ」「IT投資がされていない」「技術の老朽化」「肥大化・複雑化」「ブラックボックス化」といった技術的・経営的観点から、経営や事業の足かせになっていると警鐘を鳴らしている。
同省が5月に公表したレポートでは、いまだに6割以上の企業がレガシーシステムを所有しているとして、企業がとるべき対策を次のように示している。
・経営層の強力なコミットメントの下、現行業務を見直しつつ、システムの可視化と内製化、標準化対応を進める。
・上流人材の育成・確保を進め、ベンダー企業は代替技術の開発と、ユーザー企業の内製化を支援。
Sansan執行役員の小川泰正氏も、データ連携や整備不足が課題となっている環境について、「2025年の崖に象徴されるように、既存システムの複雑化やデータの分断を放置すれば、DXの実現は困難」と指摘している。「自社のデータ環境を見直し、部門を超えて情報を活用できる状態をいかに構築できるかが、今後の競争力を左右する鍵になる」とコメントしている。
「企業のデータ管理に関する実態調査」は、従業員数100人以上の企業に勤務する全国のIT・情報システム系部門の担当者708人を対象に10月17日から22日の間、オンライン上でのアンケート調査で実施。発表の詳細は同社公式リリースで確認できる。