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「人の家のテレビを双眼鏡で見てた」しまおまほが語る禁止の反動と“とにかく脱力”の子育て

コクリコ

「人の家のテレビを双眼鏡で見てた」しまおまほが語る禁止の反動と“とにかく脱力”の子育て

エッセイスト・しまおまほさんインタビュー第2回。ミュージシャンの子どもに取材を続け書籍にまとめた、しまおさん自身の子育てや、“脱力”の大切さについて。全2回。

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エッセイストのしまおまほさんが、ミュージシャンの子どもたちにインタビューした書籍『しまおまほの おしえて!ミュージシャンのコドモNOW!』(リットーミュージック)。本書には、UAさん、在日ファンク・浜野謙太さん、スチャダラパー・Boseさんなど19家族の“ミュージシャンの子どもと親”が登場します。

ミュージシャンの子どもたちにはフラットに話を聞けるのに、我が子となると難しいと笑う、しまおさん。子どものおもしろさは、親が力むと途端に出てこなくなる──?

第2回は、インタビュー経験と10歳の息子さんとの日常から見えてきた、肩の力を抜いた子育ての大切さについて伺いました。

●しまおまほ PROFILE
エッセイスト。1978年、東京生まれ。多摩美術大学美術学部二部卒業。雑誌や文芸誌でエッセイや小説を発表するほか、ラジオのレギュラーでも活躍。2015年に男児を出産。『家族って』(河出書房新社)、『しまおまほのおしえてコドモNOW!』(小学館)、『さいしょのにんげん』(堀道広共著/三輪舎)など著書多数。

我が子となると圧がすごい

エッセイスト・しまおまほさんの新著『しまおまほの おしえて!ミュージシャンのコドモNOW!』(リットーミュージック)では、子どもたちの驚くほど自由な発言がそのまま飛び出し、その向こう側に、ステージとはまた違うミュージシャンの親の姿や、家庭の空気感が見えてきます。

子どもたちへのインタビューでは、肩の力が抜けた雰囲気で、どんな子どもとも自然体でやりとりを楽しむしまおさん。さぞかしご自身の子育てでも、子どもから本音を引き出すのが上手なのかと思いきや──?

「いやいや、我が子となると難しい。何かを聞きたいとき『答えろよ』みたいな圧がグッと出ちゃうんですよね。『あなたの話を聞かせて!!』というオーラがすごいんだと思います。

息子も、『母は学校や勉強のことを探りたいんだな』と察知してしまい、『めんどくさい』『どっちでもいい』といった反応に……。

自分の子どもに関しては、他の人に聞き出してもらって、それをこっそり私が盗聴するくらいがいいのかもしれないですね(笑)」(しまおさん)

他人の子どもには「好きにしゃべっていいよ」と構えずにいられるのに、我が子となるとつい答えを引き出そうとしてしまう。その力みこそが、子どもの本音を遠ざけてしまうのかもしれません。

だからこそ、しまおさんは我が子と向き合うときにも、できるだけ肩の力を抜くことを意識しているといいます。その背景には、息子さんが通っていた保育園の影響も大きくありました。

「雨の日も雪の日も外へ出て、泥んこ遊びが当たり前の園でした。園長先生からは、『ほかの子と比べない』『“もう◯歳なんだから”と言わない』『子どもの行動に先回りしすぎない』などとよく言われていました。『とにかく肩の力を抜いて子育てしなさい。どうにかなるから』と。

例えば、つい子どもに『寒くない?』って聞いてしまうじゃないですか。すると園長先生は『それじゃあ子どもがかわいそうだよ』と言うんです。寒かったら、子どもは自分で『上着を着たい』って言うから、その“気づくチャンス”を大人がうばわないでと。そういうことをよく言われましたね」(しまおさん)

園長先生の言葉に、ハッとさせられるパパママも多いのではないでしょうか。「ケアをしなくちゃ」と力みがちな気持ちを、大切な我が子だからこそ、ときにゆるめること。その考え方が、しまおさんに強く残っているのだとわかります。

向かいの家のテレビを双眼鏡で見ていた!?

書籍では、“子どもとデジタルコンテンツとの距離感”についても、興味深いエピソードが多く見られました。

「UAさんの息子、ゆーまくん(当時9歳)は、『ゲームをやりすぎて、パパにゲーム機を隠された』と言っていました。カナダの離島にあるご自宅ではニワトリやガチョウを飼っていて飼い猫のお産の話も出てきたりするのに、そんな自然豊かな環境でもゲーム機は持ってるんだと意外でしたね」(しまおさん)

しまおさん自身は、ゲームやYouTubeに対して「適度なルールで見守る」スタイル。その理由は、自身の幼少期体験が影響しているといいます。

「私が小さいころ、家にテレビがなかったんです。だから普段は向かいの家のテレビを双眼鏡越しに見てました。やがて待望のテレビがやってきましたが、父から見ていいと許されたのはなぜか『オレたちひょうきん族』だけでした」(しまおさん)

しまおさんのデビューは大学1年生のとき。自身が高校生のときに描いた、コギャルを主人公にした漫画『女子高生ゴリコ』(扶桑社)だった。

テレビを双眼鏡で、とは驚きですが、制約があるとかえって気持ちが強くなることも。しまおさんは大学生になって自分の部屋にテレビがきたとき「とにかくなんでもいいから見たい!」と一日中つけっぱなしにするようになりました。

「子どものころはお菓子も自宅にほとんどなかったから、いまだにお菓子にはちょっと特別感がある。心のどこかで執着してる自覚があります。だから、この反動ともいえる現象はいかがなものか……という気持ちもあって、ゲームもYouTubeも適度に許容しています。実際は、適度を超えてゆるゆるなんですけどね」(しまおさん)

最短より“寄り道”を

ゲームやYouTubeの存在だけでなく、今の子どもたちは情報の入り方もスピードも、しまおさんが子どものころとは違います。

「子どもたちの知識の入り口はネットであることも多いから、どこから何を知るのか分からないですよね。

この前、小4の息子の口から『バレンシアガ』という単語が出たときは驚きました。本人はトイレ掃除ボランティアのときにもらった便器柄のTシャツを気に入って着てるくせに。

インタビューでも知らない単語や世界を子どもたちからたくさん教えてもらいました。『ボカロP』について苦戦しながら学ぶ私の様子が今回の本にも載っています」(しまおさん)

今の社会は「効率よく最短で成果を出す“タイパ”」が良しとされがちです。最短距離で“正解”や“好きなもの”にたどり着ける時代。だからこそ、しまおさんは“寄り道”の価値を改めて感じています。

「SNSを開けば、アルゴリズムによって『好きそうなコンテンツ』が次々と表示されて、特定の価値観だけが強化されるから、行き着く先は結局みんな同じなんじゃないかってよく言われますよね。興味が枝葉に広がりにくいから、“寄り道”しづらい気がするんです。

自分の経験で言えば、CDを借りに行ったときに、隣の棚の、ちょっと気になったCDも一緒に借りてみるとか。好きなアーティスト目当てで買った雑誌の、“余計な記事”まで覚えていたりとか。そういう“ムダな寄り道”、実は結構楽しかったけどなぁと思うんです。

小中学生のとき、ファンだった米米CLUBが載っていた雑誌を買っていたおかげで他のバンドにもやたら詳しくなったりしました」(しまおさん)

自分の子ども時代とのギャップを語りつつも、しまおさんは一概に「昔のほうがよかった」とは考えていません。

「私がそう育ったからといって、それが正解かは分からない。今の子は今の子で、こうした世界観のなかでおもしろいことを見つけていくのかなとも思います。枝葉の広がり方が違うだけで、その中に新しい楽しみがあるのかもしれないですね」(しまおさん)

脱力して子育てをしたい

書籍では、音楽ユニット「Chocolat & Akito」の息子・王子くんが8歳にして「それこそ」と前置きしてみたり、UAさんの息子・ゆーまくんがママのライブに対して「なんか、歌ってるだけ」と、さらっと言い放ったり……。

どの子どもも、言葉の選び方や親との距離感がそれぞれで、読んでいて思わず笑ってしまうやりとりに満ちています。

「インタビュー中は『私、自分の子どもとより、うまく話せてるじゃん』と感じることもあって、息子ともこの感じでしゃべれたらいいなって思うんです。この脱力した感じを、自分の子育てにももう少し持ち込めたらと考えています」(しまおさん)

そう話すしまおさんにとって、子どもたちへのインタビューは、もはやひとつのライフワーク。「やっぱり子どもと話すのはおもしろいから」と、これからも肩の力を抜きながら、子どもたちとのおしゃべりを続けていきたいと考えているそうです。

子どもから話を聞くコツは、親の「圧」を消して、子どもを1人のおもしろい人間としてフラットに向き合うこと。しまおさんが見つけたそのスタンスは、私たちの子育てもふっと軽くしてくれそうです。

撮影/安田光優(講談社写真映像部)
取材・文/稲葉美映子

ミュージシャンの親を持つ子どもたちへのインタビューを通して、ミュージシャンの親としての素顔に迫る『しまおまほの おしえて!ミュージシャンのコドモNOW!』(著:しまおまほ/リットーミュージック)。人気連載(ウェブメディア『音楽ナタリー』掲載)をまとめ、追加アンケートなど書籍限定コンテンツを追加した。著者によるユーモアあふれるコメント付きイラストも必見。

〈参加アーティスト(親)〉※順不同・敬称略
マキシマム ザ ホルモン・ナヲ(書籍限定新録インタビュー)、UA、在日ファンク・浜野謙太、スチャダラパー・Bose、橋本絵莉子、氣志團・白鳥松竹梅、坂本美雨、Chocolat & Akitoなど19家族。

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