子どもが不登校でモヤモヤ…。親に求められる力「ネガティブケイパビリティ」とは?
臨床心理士・公認心理師のyukoです。新学期が始まっても子どもが学校に行けないと、親としては言葉にできないモヤモヤが募っていきますよね。「いつ行けるようになるの?」「なぜ行けないの?」と聞きたくても、責めてしまってはよくないし……。そんな先が見えない時に身につけたい“能力”についてお伝えします。
答えがでない毎日にモヤモヤ、イライラ
去年から登校を拒否し始め、家で過ごすのがほとんどのわが子。夏休みが明けたら再登校のチャレンジをしてみると話し合っていたものの、やはり難しそう。在宅ワークで1日一緒に過ごす日もあるが、周りの子が当たり前に登校しているのを見ると悶々とする気持ちが大きくなるばかり。この先ずっと行けないのだろうか、いつ頑張れるのだろうか、この気持ちはいつまで続くのだろうか。
いじめや友人とのトラブル、学業不振や集団生活の不得意など、不登校の子の理由は様々。一方、登校が難しい子を支える親御さんの気持ちは共通する点が多いのではないでしょうか。
・いつ登校を再開できるのかわからないもどかしさ。転校も視野に入れたほうがよい?
・子どもが今どんな気持ちで過ごしているのか見えてこない。親としての関わり方はあってる?
・いつまで、どんな風に見守ったらいいの?それとも背中を押すべき?
先が見通せない、子どもの気持ちがわからない、自分がどうしたらよいのか答えが見つからない。そんなモヤモヤを抱えながら日々過ごしている方は多いですよね。
曖昧さや不透明さ、モヤモヤとの付き合い方を考えていきます。
登校が難しい子の親に「求められる力」とは?
人は一般的に、わからないものや先を見通せないものに不安を感じやすいもの。
特に、計画的で行動力のある方や、論理的に物事を考えて解決に向かう思考力が身についている方は、自分の力ではどうしようもない曖昧な状況を苦痛に感じてしまうことがあります。
そんなとき思い出したい考え方があります。それは、今注目されている「ネガティブケイパビリティ」。ネガティブケイパビリティとは、現時点で解決できない状況に耐える力、不確実さや曖昧さを受け入れる力を指します。
もう少し具体的にかみくだくと、
・すぐに答えを出そうとせず、現状を受け入れる。
・辛いことは考えすぎず、一度ふたをしたり、置いておく。
・いろいろな意見に耳を傾けながら、自分の考えに囚われすぎないようにする。
一見、積極的な解決を避ける、本質から逃げる、よくないものにも捉えられそうですが、実はひとつの大切な能力(ケイパビリティ)なんですね。なのでまず、今自分は「ネガティブケイパビリティ」という力を求められているんだ、と認識するのが大切になってきます。
ネガティブケイパビリティを「身につける方法」
ネガティブな状況に耐える力が必要とはいっても、ただ単に我慢し続けるのがよいとは限りません。では、どのように身につけていけばよいのでしょうか。
モヤモヤした気持ちを自分1人で抱え続けるのは負担が大きいもの。まずは少しずつ自分の気持ちと距離を置く、手放していくのが重要です。その過程で、何がわからないのか、どんなモヤモヤを抱えているのか、を言葉にしていくことが役立ちます。
具体的な方法としては、話をわかってくれる周りの方に打ち明けてみる、親自身の悩みとしてカウンセリングを利用するのがひとつです。また、誰かに話すのはハードルが高いと感じる場合は、ノートや日記に書き出してみるだけでも効果を感じられます。
その中で気づいたことや、今までの考え方とは異なる考えを認識するのが第一歩。
例えば、
・曖昧な状況=悪い状況ではない。
・短期的に見たら不安だけど、長い目で見たら焦りすぎるのもよくない。
・一度蓋をして休憩するのも今は大切。
など、視野を広げて考えるのが重要です。
少しゆとりをもって考えられると、見えてくる風景が徐々に変わってきます。変わらない現状にイライラ、モヤモヤしたときは「ネガティブケイパビリティ」を思い出してみてください。
yuko/臨床心理士・公認心理師