戸田恵子×中尾隆聖が〈ばいきんまんの魅力〉を語る!映画『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』超貴重インタビュー【前編】
劇場版『それいけ!アンパンマン』第35作 全国公開中!
映画『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』が、2024年6月28日(日)より全国の映画館で公開中だ。
アニメ『それいけ!アンパンマン』劇場版35作目となる本作。公開前から話題を呼んでいたのは、ばいきんまんの「アンパンマンを呼んでこい!」という衝撃的なセリフだった。アニメシリーズから一貫して“アンパンマンに戦いを挑んで、やっつけられる”がお約束となっていたばいきんまんに、いったい何が起こったのか……?
このたび、アニメの放送開始以来アンパンマンとばいきんまんの声を演じてきた、戸田恵子氏と中尾隆聖氏がインタビューに応えてくれた。やなせたかし先生の意志を体現する不動のキャストでもあるお二人は、シリーズ初めての“まさかの展開”を、どう見たのか。たっぷり語ってくれたインタビューを前後編にわたってお届けする。
戸田「ばいきんまんとも一緒にお茶を飲んで、ご飯を食べてもいいと思っています(笑)」
―本作はアンパンマンとばいきんまんが力を合わせて戦うなど、これまでになかった設定がとても面白かったです。過去作と同じく子どもだけでなく大人も楽しめる作品になっていますが、脚本を読んだ際の率直なご感想を教えてください。
戸田:“絵本の世界”にばいきんまんとルルンが一緒にいて、力を合わせて頑張っているけれど、困った先には「アンパンマンを呼んでこい!」と言ってくれる。これまでの全作品を振り返ってもなかったことなので、すごく面白いですね。回を重ねていく中で、「ここでそうきたか!」と思いました。
中尾:まさか、ばいきんまんの口から「アンパンマンを呼んでこい!」という台詞が出るとは思ってもいなかったので、とても新鮮でしたね。
―ばいきんまんは誰よりも貪欲で、諦めない精神を持ち、そして飛びぬけた探求心も魅力的だと思います。とにかく愛らしいキャラクターですが、改めて「ばいきんまんの魅力」とは?
中尾:『それいけ!アンパンマン』は1600話くらいあって、平和に解決する日もありますが、ばいきんまんはほとんどが<アンパンチ>にやられて飛んでいってしまいます。でも、また立ち向かっていく、諦めないところがいいですね。
戸田:全力でアンパンチでやられたとしても、また次の回にも出てくるわけですからね。悪さをしなければ、パン工場で一緒にお茶を飲んで、ご飯を食べてもいいと思っています(笑)。ばいきんまんは、本当に掘り下げると面白いキャラクターで、ふとした時に「ばいきんまんは何者なんだろう」と考えてしまいます。バイキン城でドキンちゃんと暮らしていて、メカは何でも作れて、そしてすぐ変装をするでしょう?
中尾:なぜか女装が好きなんですよね。ドキンちゃんが男の子、ばいきんまんが女の子をやる。
戸田:そういう設定がすごく面白いんですよね。大人目線かもしれないけれど、必ず変装してくるのにバレてしまう。
中尾:バレるでしょうね(笑)。でもあの世界では、みんなが疑わない。
戸田:そういうところも楽しいですよね。「誰か気づかないの!?」と、収録現場でよく話しています(笑)。
中尾:最近は変装もだいぶ上手になってきたんですよ。
戸田:メカも壊れたらすぐに修理して、また新しいものを作って、本当に天才肌なんですよ。戦いに行く闘争心もある。
やなせ先生が絵本で描かれたキャラクターに、テレビアニメで声を入れることでイメージが固まってしまうので、本当に大変なことだと思っています。アニメで子供たちもその声に慣れてしまうし、おもちゃやステージショーなど、私たちがすべての声をやることになるので、本当に責任重大な仕事だなと思っています。
やなせ先生は、アンパンマンの声よりもばいきんまんの声をとても気にかけていて、あまり上手くいかなかったら俺がやる! くらいの勢いで、ばいきんまんの声が大事なんだとお話しされていました。物語にとってアンパンマンも大事なキャラクターだけれど、ばいきんまんという存在が非常に重要なキャラクターなのだと捉えられていたんだと思います。『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』で、ついに日の目を見たということですね(笑)。
戸田「アンパンマンの世界に“本当の悪人”はいない」
―本作ではルルンとばいきんまんが力を合わせて<ウッドだだんだん>を作るシーンがあります。バイキン城とは違って作る道具もない中、ばいきんまんが必要な道具作り方から黙々と作業をする、という名シーンでした。このシーンは演じられていかがでしたか?
中尾:映画の中で良いシーンがいくつかありますが、あそこも名シーンですね。バイキン城にある道具を使ってメカなどを作ることは多々ありましたが、手作りで道具から作るというのは初めてです。いろんなメカを作ってきましたが、その作るプロセスというのは見せてくれていなかったので、そこまで見られたのがすごく良かったと思います。
戸田:逆にアンパンマンは何かを作るというシーンはこれまであまりなくて、どちらかというと不器用で、でんでん一座に呼ばれてお芝居をやるときは棒読みになってしまうなど緊張しいだったりして、完ぺきではないというのがいいですよね。
やなせ先生は、アンパンマンは完ぺきではない、顔が濡れてしまうと元気が出なくなってしまう、カッコいいヒーローではないんだと仰っていましたね。弱点がある中で戦っていくし、負けない。ばいきんまんも同じで、何度負けても、また戻ってくる。アンパンマンの世界には「本当の悪人」がいなくて、強い言葉を言うキャラクターもいるけれど、みんな本心はそうじゃないとわかっているし、その中でうまく共存しているという世界ですね。
中尾「嫌われ者のばいきんまんでも必要としている子がいる。アンパンマンの物語が大切にしていること」
―ルルン(声:上戸彩)へのアプローチが、アンパンマンは寄り添って優しい言葉をかけて、ばいきんまんは背中で見せつつ力強い言葉をかけていて、対照的で興味深かったです。お二人はアンパンマンとばいきんまんのルルンへの接し方について、どう感じられましたか?
戸田:人間の世界でも同じだと思うのですが、アンパンマンはルルンを一人にさせないというか、「誰かがいるんだよ」というのを伝えていたのかと思います。アンパンマンの物語では、メインの子が勇気がなかったり、悩んでいたりというのが多くて、アンパンマンはその子に寄り添って、側にいてあげたり、言葉をかけてあげていますね。
中尾:ばいきんまんは、ばいきんまんのスタンスの中でルルンと向き合っていますね。すいとるゾウ(声:岡村隆史)がいなくなれば絵本の世界を仕切れるという中で戦って、最終的には「アンパンマンを呼んでこい!」になるんですが、いつもは一人で頑張っているばいきんまんも、最後にルルンが「(この絵本の世界に)一緒にいて」と優しく言ってくれる。嫌われ者のばいきんまんでも必要としている子がいるんだと、アンパンマンの物語が大切にしていることが描かれているんだと思います。
【👇️インタビュー後編は明日公開!👇️】
「アンパンマンを呼んでこい!」の真意とは?映画『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』戸田恵子×中尾隆聖インタビュー【後編】
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