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黒澤明監督の名画『醉いどれ天使』の舞台版で、主人公に思いを寄せるヒロインを演じる佐々木希を独占インタビュー

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佐々木希

日本映画史上最強コンビと言える、名匠・黒澤明と名優・三船敏郎。二人が初めてタッグを組んだ映画が『醉いどれ天使』だ。この伝説の作品が、演出・三池崇史、脚本・蓬莱竜太という興味深い顔合わせで令和の時代に新生・舞台版として蘇る。

物語の舞台となるのは戦後の混沌とした時代。闇市の界隈に住む人々が荒々しくも力強く生き抜く姿が、骨太に描かれていく。

キャストは、映画版で三船が演じた闇市の顔役である松永役に桐谷健太、同じく志村喬が演じた町医者の真田役に高橋克典が扮するほか、佐々木希、田畑智子、篠田麻里子、髙嶋政宏といった豪華な顔ぶれが揃うことになった。

この個性豊かな面々の中で、松永と同郷で彼に思いを寄せる女性・ぎんを演じるのが佐々木希。『ブロッケンの妖怪』(2015年)以来、6年ぶり二度目の舞台出演となる彼女に、今作への想いや見どころなどを語ってもらった。

佐々木希

ーー6年ぶりの舞台ですね。出演オファーが来た時の、率直な感想はいかがでしたか。

とにかく、驚きました(笑)。もちろん嬉しかったですが「来たか~、舞台!」と、姿勢を正すような気持ちにもなりました。

ーーそのくらい、覚悟が必要な仕事だと?

はい。前回は初舞台だったこともあって、ものすごく怖さがあり、毎日不安で気が休まらなかった記憶があります。ですが、本番が終わった時の感動と達成感、そしてお客様の前でお芝居をするという喜びも味うことができました。だからこそ、お話をいただいた時には本当に嬉しかったし、怖さよりも「やりたい!」という気持ちのほうが勝りました。でも、やはりそれと同時に「ああ、これは覚悟を決めなきゃ!」とも思いました。以前三池さんが演出された舞台を拝見したことがあり、エンターテインメントとして素晴らしく、とても楽しませていただいたことを強く覚えていました。それに加えて黒澤明監督の映画が原作ですし、これは、やらないという選択肢はなく「ぜひ、やらせていただきたい!」と思いました。

ーー台本を読まれた感想としては。

登場人物の心情が本当に丁寧に描かれていて、それぞれ自分の心で思っていることを吐露する場面があるのですが、どれもすごく心に刺さりました。私が演じるぎんの場合は、今は足が悪いけれど、昔はこんなに踊れていたんですと言う場面があり、そこを上手に表現できたらいいなと思っています。人間のただ綺麗な部分だけではなく、奥の深い人間臭さを感じ取れる本当に素敵な脚本です。三池さんが手がける作品にも多いと感じるのですが、ちょっと泥臭くて人間味の溢れているこういう作品が私大好きなんです。だから「ああ、これは私が好きなジャンルの作品だ!」と思って、台本を読んでいるだけで嬉しくなりました。

佐々木希

ーーぎんという役を演じるにあたって、今はどんなことを思われていますか。

戦後の時代を生きている人たちって、とてもエネルギッシュというか、「負けてたまるもんか!」「生きるしかない!」という強さがあると思うんです。ぎんという女性からも、そのパワフルさをとても感じました。幼なじみの松永に寄り添って、ズタボロになっていく彼を何とか助けたいと願っている。たくましいけれど、けなげだなと思いましたね。

ーー少し訛りがあるところも、ちょっと難しそうですね。

そうなんです! 昨日初めてセリフの音源をいただいて「このような感じなんだ」と知ったところなんです。

ーーでは、まず耳から聞いて覚えるんですね。あれはどこの方言なんですか?

石川、能登の訛りだそうです。実は私、以前出演させていただいた『さいはてにて~やさしい香りと待ちながら~』(2015年)という映画が能登を舞台にしたものだったので、少し馴染みのある方言ではありました。とにかく稽古中も繰り返し音源を聞いて、方言指導の方と相談しながら自分のものにしていこうと思っています。

ーーセリフもそうですが、足が悪い役というのも演じるのが大変そうだと思いました。

こればかりは稽古で、役と真剣に向き合って身体に染み込ませていくしかないと思います。

ーーかなり、やりがいのある役ではありそうです。

本当にそうですね。なんとか全力で、ぎんをまっとうできたらと思っています。

佐々木希

ーーご自分に似た部分はありますか。

私よりはるかにエネルギッシュな人だなって思います。ちゃんと人を思いやりながら、強さもあるところがいいんですよね。

ーー三池さんからは、どんなことを言われていますか。

「いやあ、ぎんはいい役だよね!」って言っていただきました(笑)。方言や足のことも尋ねてみたのですが「それはこれから、稽古でいろいろやっていきましょう」とおっしゃっていたので、今は稽古が楽しみで仕方ないです。気持ちがすごく高まっていて、一刻も早く稽古に入りたいと思っているくらいです。

ーー映像や別のお仕事とは違う、舞台ならではの面白さとは。

独特のアドレナリンが出るところ、そしてお客さんと一体になれるのを肌で感じられるところ。本番がほぼ毎日あるので、毎日違うことが起きる可能性もあるという、あの緊張感。そして、それに対応する柔軟さが必要なところ。その柔軟さというものを私は今回、もっと身に付けたいなと思っています。

ーーハプニングが起きても、すぐ反応できるように?

そうです。たとえば衣裳や小道具を落としてしまったり、セリフを飛ばしてしまったりしても上手く立ち直せるように。

佐々木希

ーーそれが一番怖そうですね(笑)。

想像するだけで、怖ろしいです!(笑) そのようなことを起こさないためにも、稽古を一生懸命やらなければと思うばかりです。ただ、足が滑って転んじゃった、のようなハプニングは稽古をやっていても起きてしまう可能性がありますし、そういうとっさの出来事にもスムーズに対応できたら、いいなと思います。

ーー役が身体に染み込んでいれば、自然と反応できるのかもしれません。

違和感なく、身体が動ければいいですよね。お客さんに「あれっ? 大丈夫?」って思わせてしまうのが、一番良くないと思うので。せっかく物語の世界観に入っていても、現実に戻してしまうことになっちゃいますので。

ーーでは最後に、お客様にお誘いの言葉をいただけますか。

今回の舞台では、個人的には生バンドが入ることが、特にすごく楽しみなんです。音楽の持つ力というのも、すごくあると思うので。あとは、登場人物みんなに見せ場がちゃんとあること。セリフにしても、脚本の蓬莱さんがそれぞれのキャラクターの感情をかなり深掘りして書いてくださっているので、そこにも注目していただきたいです。さらに、タイムスリップした気分になれるのも今作の魅力ではないかなと勝手に思っています。どんな舞台装置になるかまだ全然知らないのですが……(笑)。原作の黒澤明さんの映画を見ると、戦後の混沌とした闇市の様子や、「生きるぞ!」というエネルギーに満ち溢れた雰囲気がとても印象深かったので、「昔って、こんな感じだったんだ」としみじみ思わせてくれるんじゃないかなと。それと具体的には言えないのですが、脚本や演出にも様々な仕掛けがあって、本当に見どころばかりの舞台なんです。ぜひ楽しみに、観に来ていただければと思います。

佐々木希

取材・文=田中里津子  撮影=池上夢貢

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