震災の被害を免れた輪島塗工芸約250点を紹介、近鉄百貨店四日市店で6月2日まで
能登半島地震で被害にあった工場などから救い出された輪島塗の作品を集めた「輪島塗工芸展」が5月29日、三重県の近鉄百貨店四日市店で始まった。輪島塗の老舗、株式会社五島屋の製品で、家具から汁椀まで大小約250点をそろえた。重要無形文化財の作家らの塗りの技術を間近に見ることができる。4階アートステーションで6月2日まで。
能登半島地震により本社ビルが倒壊、職人たちの工場も上塗りの部屋の天井が落ちるなど、五島屋の被害も甚大だった。工場の復旧はまだ完全ではなく、新しい製品がつくれない状況だ。今回、展示された作品は、いずれも、大地震の中で無事に見つけ出されたものだという。
五島屋は例年、秋に近鉄百貨店四日市店で展示を開いてきたが、今回、震災被害から初めて四日市で工芸展を開くことになったという。1月の震災発生直後から、顧客から励ましや販売再開を望む声があったといい、それらに応えたいという思いもあったという。
会場には、重要無形文化財保持者の漆芸家小森邦衛さんの四方盆、東野定治さんの漆額「水の紋」など有名作家の作品から、茶道具、汁椀、蒔絵箱、盆など多種多様な作品が並んでいる。価格では600万円を超えるものから3万円ほどのものまで、幅広い品ぞろえになっている。
家具から汁椀まで大小250点を紹介した会場
ひな人形などは、木地による漆塗りだが、塗りの輝きから陶芸品のように見える作品もある。本社ビルや工場から無傷で救い出された作品の幾つかは、「蔵出し品」としてお得な値段に設定されているという。
五島屋の営業を担当している白石高志さんは「輪島塗の職人のみなさんも今はまだ大変ですが、その技術を見ていただける機会です。ぜひ、輪島塗のよさを感じていただき、手に取る機会になっていただきたいです」などと話していた。
展示の横では、輪島塗の制作について紹介するビデオなどが流れているほか、被災地への救援募金箱も置かれている。
漆の輝きが陶芸品に見える作品も