【わが子の不登校】多様化する「フリースクール選び」で大切な5つの判断基準[教育ジャーナリストが解説]
不登校のフリースクール選び「5つの判断基準」を新書『フリースクールという選択』(著:おおたとしまさ/講談社+α新書)から紹介(第3回)。居場所か学びか、学校っぽさの有無など、わが子に最適な場所を見極めるための補助線とは。全4回
【▶画像を見る】教育ジャーナリスト・おおたとしまささん子どもが学校に行かなくなったとき、選択肢として「フリースクール」が浮かぶ保護者は多いでしょう。しかし、いざネットで調べてみると情報があふれかえり、規模も教育方針もバラバラ。「どう選べばいいのか」と途方に暮れてしまうことも少なくありません。学びの現場を約20年取材し続ける教育ジャーナリスト・おおたとしまさ氏は、新刊『フリースクールという選択』(講談社+α新書)5月11日刊行で、そんな迷える親たちのために、フリースクールの世界を読み解く「5つの観点(補助線)」を提案しています。
わが子の「いま」の状態に最適な場所を見つけるための勘どころについて、本書より一部再構成してご紹介します。
違いが見えてくる5つの補助線
多種多様なフリースクール探しの途中で迷子にならないための5つの観点を提案したいと思います。
これらの観点でフリースクールを見る目を磨けば、実際のフリースクールの説明会に参加したり、見学に行ったり、体験させてもらったりしたときにも、自然にそれぞれの特徴や違いが見えてくるようになるはずです。
①居場所↔学び
居場所としての機能を重視しているか、学びや自己表現に重点を置いているか。
要するに、「ここにいてくれるだけでいいよ」とそーっとしておいてもらえる雰囲気か、「あれをやってみよう!」「これなんか面白いんじゃない?」と学びを促す刺激が多いか。
学校で散々つらい目にあって傷ついて、不登校になって自信を失って、心のエネルギーがものすごく低くなっているときに、キラキラした体験学習を押しつけられたり自己表現を求められたりすると「無理……」ってなります。
子どもがそういう状況なら、心のエネルギーが十分に充電されるまで焦らず居場所的なフリースクールですごしたほうがいいわけです。
逆に、なんらかの理由があって学校への不信感が募り、心は元気なのに不登校になっているような場合には、居場所的なフリースクールだと物足りなく感じることがあります。
そういう状態の子どもは、刺激の多いキラキラしたフリースクールやオルタナティブスクールを選ぶといいでしょう。
ただし、100%居場所に特化したフリースクールも、100%学び重視のフリースクールもありません。そのあいだにグラデーションがあります。集まってきた子どもたちの状態に合わせてフリースクールの立ち位置が揺れ動く場合もあります。
いわゆる読み書き計算的な教科学習に軸足を置いているのか、教科横断型の探究活動や体験学習に軸足を置いているのかという違いもあります。
教科学習の重要性をどれだけ強調しているかに着眼すると、一見似たようなフリースクールのあいだにも違いが見えてくるはずです。
②学校っぽくない↔学校っぽい
学校に傷ついた子どもは学校っぽさそのものを嫌う傾向があります。ですから、なるべく学校っぽさを薄めようと、多くのフリースクールが腐心します。一方で「なるべく学校っぽいところで育ってほしい」という気持ちの保護者もいます。
校舎の表情が学校っぽいか学校っぽくないかは見ればすぐにわかるでしょう。写真ならホームページでも見られます。名称に「学校」「学園」「スクール」などとついているかどうかもわかりやすいポイントです。
スタッフを「スタッフ」と呼ぶか「先生」と呼ぶか、「○○さん」と呼ぶかニックネームで呼ぶかによっても場のニュアンスが変わります。本書ではこのあたりの違いもできるだけ表現します。
また、時間割は各フリースクールの輪郭をつかみとるのに便利です。
「基礎学力養成」「探究・体験学習」「対話の時間」「自由時間」などのどのへんに重点を置いているかというバランスも、時間割からおおよそ想像できます。時間割はほとんどのフリースクールのホームページに掲載されています。
③個人商店↔チェーン店
運営母体が小さいか、大きいか。個人や親の会がつくった個人商店のようなところか、大手の学校法人や株式会社がつくったチェーン店のようなところかという違いです。
個人商店のようなフリースクールはアットホームで意思決定も柔軟ですが、利用できる教育資源が乏しかったり経営が不安定だったりという面もあります。
隠れた名店があるかもしれない一方で、いいお店は予約でいっぱいで入れないし、空いているお店はやっぱりおいしくないということもある。当たり外れが大きいということです。
チェーン店のようなフリースクールは経営的に安定していますし、看板に見合った一定のクオリティが期待できる一方で、融通が利かなかったり、マニュアル的だったりします。
会社の人事異動で割り振られただけで、不登校当事者に寄り添ったり自由な学びを追究したりすることには関心のないひとが現場を担当している可能性もあります。
また、大規模な組織ではとりあえずいろいろなコンテンツを用意して子どもたちに選ばせる形になりやすいですが、小規模な組織では限られたお金や時間や人員をどう使うべきかを子どもたちと話し合って決めること自体が教育の一環になっている傾向があります。
④個別↔集団
少人数が落ち着くという子どももいますし、大人数でいろいろなタイプの子どもがいるほうが楽しい子どももいます。完全にマンツーマンのフリースクールもあります。
いっしょに学ぶ子どもたちの年齢幅も意識してみましょう。
年の近い子ども同士だからこそ盛り上がる話題もありますし、小さい子が大きい子に憧れて頑張る場合もありますし、し、小さい子がいてくれることで大きい子が頼られる役を引き受け、精神的自立が促される場合もあります。
他者との距離感でいえば、オンラインという距離感が新しい選択肢です。家を出ることができなくても、オンラインならひととつながれるという子どもがいます。オンラインフリースクールについては本書第3章で紹介しています。
⑤中継型↔継続型
元気になって学びの意欲があふれてきたら、別のもっと活動的なフリースクールに移ってもらってもいいし、学校に戻ってくれてもいいし、中学進学や高校進学の段階で一般的なルートに戻ってもらってもいいというスタンスのフリースクールか、なんなら自分たちは一般的な学校よりも優れた教育をしている自信があるから、傷ついた羽が癒えたとしてもこのままいっしょに学び続けて大人になろうというスタンスのフリースクールか。
フリースクール全体ではほとんど前者ですが、オルタナティブスクールを自称するフリースクールは基本的に後者です。オルタナティブスクールは本書第4章で紹介しています。
【編集部より】
これら「5つの補助線」を念頭におきフリースクールを探してみると、各校の特徴が驚くほど明確に見えてくるはずです。
新刊『フリースクールという選択』(講談社+α新書)では、多種多様な約20校を著者・おおた氏がルポ。運営側の葛藤や失敗まで迫り、フリースクールのリアルがよくわかります。
「良い場所を少しでも早く見つけなくては!」と焦りすぎず、まずは肩の力を抜いて、その場所の空気を感じとることが、わが子にとって安心できる場を見つける一歩になるかもしれません。
おおたとしまさPROFILE
教育ジャーナリスト。1973年東京生まれ。リクルートから独立後、教育に関してさまざまな観点から取材を行い、著書は90冊以上。どこの組織にも属さない在野の視点で現代の教育への考察・提言を続けている。メディアへの出演や講演も多数。
“フリースクール探し”で最初に読む本、登場! 『フリースクールという選択』(著:おおたとしまさ/講談社+α新書)