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荒牧慶彦&北村 諒「エンタメの世界で僕らの“頭脳戦”に没入してください」~舞台『憂国のモリアーティ』case 2 インタビュー

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(左から)荒牧慶彦、北村 諒

2020年に上演された、舞台『憂国のモリアーティ』のシリーズ第2弾『case 2』がもうじき幕を開ける。19世紀末の英国、階級制度による人間同士の差別をなくし理想の国を作ろうと暗躍する青年ウィリアム・ジェームズ・モリアーティと、そのライバルであり、ウィリアムの計画に必要不可欠な存在となるシャーロック・ホームズの物語。稽古が進む中、ウィリアム役の荒牧慶彦とシャーロック役の北村 諒にインタビューを実施。このダークヒーローが織りなすスリリングな人間ドラマを演じる楽しさと、エンターテインメントとしての魅力を語った。

ーーまずは初演を振り返って。どんな印象が残っていますか?

荒牧:西田(大輔)さんの演出は前回が初めてだったんですけど、「こんな演出方法あるんだ!」っていう僕自身の役者としての新しい発見を得られることが楽しかったです。例えば椅子を浮かせたりとか、階段を動かして、その動きを続ける階段の上で芝居とするとか……みんなの息が合わないければできない表現に果敢に挑戦される演出の姿勢がすごいなって思いました。

ーーいわば“芝居をするセット”は西田演出の特徴のひとつですね。

北村:そうですね。だから僕は「いつもの西田さんだな」って(笑)。「階段をそう動かすことでここはこう行きたいんだなぁ」という意図もわかりますし、中で(階段などを)動かしてくれている人たちが他の作品でも共演していた人たちだったので、そこの安心感もありつつ楽しんでやれてました。初演は「もう1年半も前なんだ」っていう感覚。ついこの間やったような感じなんですよね。というのも前回公演のすぐ後に最初の緊急事態宣言が出て、その後に自分的にも“空白の時間”ができてしまってたので……新しいメンバーも迎えつつ改めてまたこうしてみんな集まれて、その空白の時間を埋めることができる、パワーアップしたモリステを届けられることができるのは嬉しいです。

荒牧:うん。2作目ができると聞いて、僕もシンプルに嬉しかったです。

ーー現在稽古中の『case 2』、手応えは?

北村:全体の構成が……ウィリアム陣営とシャーロック陣営の描き方なども前回と結構対比した作りになっているのでなんかそれがすごく面白いなぁって、そこは僕らも楽しんでますし、お客様にも楽しんでいただけるポイントかなって思っています。あの、これはめちゃくちゃネタバレになるんですけど(笑)、前回、僕、1幕ほとんど出てなかったんですよ。

荒牧:ホントだよね〜。前回は僕ら一切言葉を交わさなかったので……すれ違ったくらい、か。

北村:違う役で会話はしましたけど。僕が(孤児院の)子ども役で(笑)。でも今回は1幕から出てますし(笑)、ちゃんとシャーロックとウィリアムとして会話できるし、列車のエピソードでもがっつり推理でのやりとりもできるので嬉しいですね。まっきーと1年半越しの共闘って感じです。

荒牧:初演のきたむー、子ども役の時に客席から自分の顔が見えないからってすごい変な顔で僕のこと見てきて、笑いこらえるのが大変だったよ(笑)。ま、そういうちょっとしたハプニングも僕たちは楽しめるので……人としてお互いにお互いの性質も知ってるんでね、「ここだったらアドリブできるな」「笑わせられるな」ってこともできてるんでしょうね。

荒牧慶彦

ーーコンビネーションは盤石ですね。

荒牧:ホントに尊敬できる役者の一人、昔から同じジャンルの中で一緒に戦ってきた仲なので、その安心感を持って一緒に芝居ができるっていうのはひとつの楽しみです。前回できなかった掛け合いの芝居、頭脳戦をがっつり楽しんでいきたいなって思っています。

北村:僕もまっきーは一緒にお芝居してて「あー、なんか安心できるなぁ」って思える俳優ですよ。

荒牧:フフッ(笑)。

ーーそれぞれのキャラクターについてもお聞かせください。

荒牧:僕、ダークヒーローモノがすごく大好きで、この『憂国のモリアーティ』はまさにそう! 自分は悪に徹するけれど、でもやりたいことは結局民衆のためというか正義のためなので、そうしたウィリアム・ジェームズ・モリアーティの思想、非道をも厭わないやり方というのは大好きですね。もちろん現実でそういう人だったらヤバイですから共感はできませんけど(笑)、できないからこそ、その姿に切なさを感じるし、羨ましいし、「かっこいい」って感情移入してしまうのかもしれないです。なので、やっててすごく面白いですし、演じがいがあります。具体的な役作りとしては……前作ではより悪く見せようというのは意識してましたね。なるべくはっきり悪い顔をしてみたり、声色も荒げてみたりとか。多分原作ではそこまでではなかったんですけど、そういうところを増長させた方がよりウィリアムの抱える苦難や苦悩が引き立つなっていう僕の判断で、ちょっとそういう表現をやらせてもらいました。

ーーウィリアムはシャーロックをどう見ているんでしょう?

荒牧:現段階ではウィリアムの手の上で踊る駒なので、そこを楽しみつつも……劇中でも「オーディション」って言うんですけど、ホントに査定をしたり、僕たちの行き着く先にちゃんとハマるピースなのかっていうのを見極めるためにシャーロックの言動を眺めているというか。だから僕も今回、きたむーの芝居をそういう視点で楽しんで行きたいなぁって思ってますね。シャーロックがひとりでに自ら育っていく、ピースにはまっていく様子をウィリアムが楽しんでいるように、僕もきたむーのアドリブなんかも側で見ながらニコニコ楽しんでいきたいなぁと思ってます。ザ・黒幕の主役なんでね(笑)。

北村:僕も『憂国のモリアーティ』のようなテイストはめちゃくちゃ好きな世界観ですね。まっきーとはいろいろと趣味合うんですよ。アニメとか映画とかも好きなモノが似てるんで。

荒牧:うん。

北村:だからまっきーのウィリアムが楽しそうなのもすごいわかる。悪巧み、いいよなぁって(笑)。あと、スッと立っているだけで知的に見えたり、この表情読めないなって思わせるところは、もともと頭のいいまっきーの本質とも重なるなぁと感じています。一方の僕はもう無邪気にシャーロックに徹して……シャーロックは基本的にすごい自分に正直なんですよね。それが一番の魅力だなぁと思うし、めちゃくちゃ頭も切れるけど子供っぽいところがあったり、あとウィリアムに踊らされているという自覚も本人にはないので……。

ーーあんなに頭がいい人なのにそこだけはわからないのが、シャーロックのピュアさを際立たせてますよね。

北村:そうなんですよぉ。だから彼はただ自分が信じる道に進んでいて、でもそれがあくまでも盤上で踊らされているように見えたらいいのかなって思いますね。ウィリアムと出会えたのはやっぱりシャーロックにとってはすごい嬉しいことで、レベルの高いところでの会話ができる相手がやっと見つかったというか……遊び相手を手に入れた子どもみたいな感覚。僕はその表情とかが好きなんです。なのでクールで虚無的、自分の理想に向かって眈々と仕事をこなす犯罪卿としてのウィリアム。それに反してシャーロックはできるだけ明るく楽しく……というのは、前回から意識して少し強めに演じていた部分はありましたね。そこは僕がそうしようと思ったというよりは作品の中でのバランスをいろいろ見つつ、作品としてより面白くするためにはこっちの方がいいかなって。

ーー「悪」を増長させたウィリアムと「明るさ」に振ったシャーロック。その二人がいよいよ真っ向から物語を支えていきます。

荒牧:列車のエピソードの「Catch me if you canMr.Holmes.」のシーンは『憂国のモリアーティ』という作品の中でも多分みんな大好きな印象に残るシーンだと思うので、今回そのシーンができるのはすごく嬉しい。待ってました! って感じ。その瞬間の挑発的なウィリアムの顔とかも、上手〜く表現できたらいいなと思いますね。

北村:今回はウィリアムとはもちろんモリアーティ陣営ともしっかり絡めるので、しかもそれぞれが腹の探り合いみたいなことしてるからそこらへんは本当に楽しいですよ。前回は芝居で絡めた人間がジョン、ハドソン、アイリーンくらいだったんで……あと、お兄ちゃん(マイクロフト)もか。でも今回はやっぱりそういうみんなとの芝居がどうお客様に伝わっていくのかも楽しみですよね。

北村 諒

ーー2021年前半はお二人ともIHIステージアラウンド東京での100回公演というビックプロジェクトを走り抜けました。舞台俳優としてあの体験から新たに得たことはありますか?

荒牧:ロングラン公演を終えたことで、すごく感慨深かったりいろいろ思ったことはあるんですけど……それで役者として方針が変わったということは特にはないかなぁ。でもやっぱりあれをやってみて……いつも思ってるんですけど、改めて舞台は役者だけじゃ本当に成り立たない仕事、エンターテインメントだよなぁっていうのは感じましたね。僕らを支えてくれるスタッフさんがいなかったら本当に千秋楽まで到達できなかったし、日々劇場を点検してくれる方がいなければ劇場だって上手く機能しなかったし、何より観に来てくださる方がいなければ何をやったって何の意味もないわけで……「全て」がなければできないもの、すごいモノを作り上げたよなっていうことは実感しました。周りに対する感謝の気持ちは増えたかもしれないですね。

ーー長丁場を乗り越えるコツや武器を手に入れたりは……。

荒牧:ないです! それを手に入れてたらもっと簡単だったのかもしれないですけどね〜。本当に大変だったので(爆笑)。

北村:ハハハッ(笑)。やっぱりこれだけ長い公演ってなると客席が埋まっていない回もあって、そういうのがあったからこそ、より劇場に来てくださるお客様には感謝しかないですし、もちろん配信とかで観てくださるのも嬉しいんですが、劇場で観てもらえることがどれだけかけがえのないことなのかっていうのがあったりして。しかも僕らは緊急事態宣言が出て間の17公演が止まってしまって、その期間にしか来られなかった方もきっといたでしょうし、そこに届けられなかった悔しさはもちろんあるんですけど……。だから本当に劇場で板の上に立ててお客様がいてくれるっていうのは幸せですよね。あとは「100公演」ってモノが全然想像できてなかったんですけど、今は、「人間やればどうにかなるんだなぁ」って(笑)。

荒牧:そうだね。なんとかなったもんね(笑)。

北村:わからなすぎて「無理だろう」とも思ってはいなかったんですけどね。でもそれを終えて、もう今後はちょっとやそっとのことじゃ驚かない耐性はできました。

ーーさらなるむちゃぶりも待ってますと。

北村:あー、それはそれでいいんじゃないかな。うん、まだやってないこと、やってみたいですもんね。

荒牧:うんうん! だから得たものは……めちゃくちゃ筋肉はつきました。足に。パンプアップされちゃって、履けてたズボンが結構パンパンになっちゃったりとか。

北村:僕も体がアスリートみたいになりましたよ(笑)。始まる前に比べて痩せてはいるんですけど体重が変わってないので、多分脂肪が落ちて全部筋肉になったんですね。おかげで身体がめちゃくちゃ締まったので、引き続きこの体をキープしていきたいですね。

ーー心身ともにさらに鍛えられたおふたりのタッグで挑むクライムサスペンス。最後に改めてお客様へのメッセージをお願いいたします。

荒牧:前作はモリアーティ三兄弟の絆がメインのお話だったんですけど、今回はがっつりウィリアムとシャーロックの宿命の対決が描かれていますので、すごい頭脳戦になってるんですよ! シャーロックとの頭の良さの勝負、みたいなところがあるので、そこを舞台で表現するとなるとお客さんに理解していただけるのかなっていう不安もあるけれども、西田さんの演出や僕らの表現方法を信じてもらって作品に没入してもらえるように作っていきますので、どうか楽しみにしていてください。

北村:今回バチバチに頭脳戦をやり合うのでそこがすごい見どころでもあると思うし、僕たちの楽しいやりがいでもあるので、舞台装置や演出とともにみなさまに楽しんでもらえるエンターテイメントとしてきっと素晴らしいモノになると信じています。楽しみに待っていてください。なかなか難しいとは思いますけどぜひ劇場で見て欲しいなぁ。

荒牧:(頷く)。

北村:演劇だからこその迫力になると思います。よろしくお願いいたします!

(左から)荒牧慶彦、北村 諒

取材・文=横澤由香  撮影=荒川潤

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