あの名店のオーナーシェフが板宿に焼菓子専門店をオープン!“新鮮さ命”の伝統焼菓子 神戸市
今年3月、板宿にオープンした『Star焼菓子研究所』(神戸市須磨区)。12年前に惜しまれつつ閉店した苦楽園の人気パティスリー『ポワソンダブリル』のオーナーシェフが手掛けたお店とあって、連日多くの人が訪れています。
板宿駅からほど近い大通り沿いの一角、大きなガラスが印象的な窓からは、中の様子がよく見えます。小さな子どもがのぞき込むと、中から楽しげに手を振る人が。その人こそ、オーナーシェフの雑部さんです。
有名雑誌の表紙を飾ったこともあるほど注目を浴び、ファンも多かった『ポワソンダブリル』と雑部さんのお菓子。不況の影響を受けお店を閉じてからは、職を転々とし、私生活では病気などさまざまな出来事を経験。辛いことも多かったそうです。
そんな時に偶然通りがかった板宿の物件に強く惹かれ、「やっぱりお菓子づくりをしたい。ここでやりたいことをやろう」と決意。雑部さんのオーナーシェフとしての第二章がスタートしました。
同店は『Star焼菓子研究所』という店名のとおり「焼菓子専門店」です。「世の中には間違って解釈されているお菓子も多い。本来の姿を伝えていきたい」そんな思いをもって作られるのは、世界各国の伝統焼菓子を含む焼菓子の数々です。
フランス、ブルターニュ地方の「ガレット・ブルトンヌ」、オーストラリアの「レミントン」、イギリスの「ビクトリアケーキ」・・・。
製法に忠実に、日本人に馴染むように少しのアレンジを加えて、そして何より“新鮮”であることを大切に、毎日ひとつひとつ手作りされています。
前店でも大人気だったフランス、ブルターニュ地方の郷土菓子「ファーブルトン」は、賞味期限なんと数時間。そのままだと「ういろう」のような食感だそうですが、レンジで少し温めると、焼き立てに近い食感に戻ると教えてもらいました。
温めてみると、ぷるふわに!カスタードの柔らかい甘さにほんのりと香るラム酒、プラムの酸味がアクセントです。厚焼きクレープのような食感で、なんだか懐かしいような、ほっとする感じがしました。この味を求めて遠くから来店する人もいらっしゃるそうです。
その名のとおり、しっとりシュワンとフォークが入るこちらは「しっとりレモンティー」。レモンピール入りの自家製ジャムの爽やかな酸味と、アールグレイ香るパウンドケーキの組み合わせは、まさにレモンティー。甘すぎず、もっと食べたい!と思わせるお菓子です。
「ちょっと大人の味ですよ」と紹介いただいたのは、ラム酒をたっぷり使った「ガトーナンテ」。こちらはフランス西部の都市ナントの伝統菓子だそうです。
しっかりラム酒が効いていて、とてもしっとり。優しい甘さがあるので思ったほどお酒がきついとは感じませんでしたが、お酒が飲めない人は要注意なほど、たっぷりラム酒が入っているそう。寒い地方のお菓子なので、身体を温める目的もあって作られたというお話も楽しくうかがいました。
平日にも関わらずひっきりなしにお客さんが訪れる同店。「これ、どんな味なんやろ?」という声が聞こえれば、カウンターから飛び出して説明する雑部さん。パン屋さんのようにずらりと並べられた焼菓子に「これ本物?」と尋ねる子どもには「本物やで〜」と笑顔で応じます。この距離感こそが、雑部さんの“やりたかったこと”のひとつです。
忙しくて休む暇がないそうですが、なんだかとても楽しそう。「洒落たお菓子づくりはもう十分やってきた。ベーシックで安全・安心なものを、お客様(Star)に召し上がっていただき、笑顔になっていただければ嬉しい」とにっこり。
一流の技術に温かさが加わり、復活を果たした雑部さんの焼菓子たち。お店も気取らない“街の洋菓子屋さん”という雰囲気です。スタッフの皆さんがとても親切で温かいことも、お店全体の空気の良さを表しています。
最後に雑部さんからのお願いが。「焼菓子もフレッシュさが命。ベストな状態で店頭に並べているので、購入後はぜひ早めに召し上がってくださいね」とのこと。あと、「記事を見て急いでお越しになると、売り切れ続出で好みのものを選んでいただけないこともあるので、ゆっくり、忘れた頃にお越しください」と笑顔。
すでに多くの人を笑顔にしている『Star焼菓子研究所』。板宿の地に再び灯った火が、末長く続くことを願います。
場所
Star焼菓子研究所
(神戸市須磨区大田町3-4-22 1F)
営業時間
10:30~19:30
※売り切れ次第終了
定休日
火曜日、水曜日