ツイン・ピークス、ボニーM、バイオレンスジャック、トリッシュ・ゴフ……ゲームクリエイター・金子一馬さんに大好きな『仮面ライダー』の話を聞きにいったら、いつの間にか金子さんの創作のルーツを振り返ることになった1時間【特別インタビュー】
コロプラからスマートフォン&PC向けに絶賛配信中のアプリ『神魔狩りのツクヨミ』。
かつてアトラスに在籍し、『真・女神転生』シリーズや『ペルソナ』シリーズといった多数の人気タイトルを生み出してきた伝説的なゲームクリエイター・金子一馬さんがコロプラで手掛ける最新作としても話題を集めています。
同作のリリース時にコンセプトプランナーの金子一馬さんと開発プロデューサーの齋藤 ケビン 雄輔さんにインタビューさせていただいたところ「マスクのデザインの元ネタは『仮面ライダー』だった」という興味深い発言が金子一馬さんの口から飛び出しました。
そこで今回は改めて金子一馬さんにお時間を頂いて、大好きな特撮に関するインタビューを実施したところ……話は特撮からファッション、音楽、映画など金子さんを構成する様々なエンタテインメントの話に広がる結果に。
金子一馬さんの創作のルーツを辿る時間となった今回のインタビュー。ぜひ、お楽しみください!
【写真】ゲームクリエイター・金子一馬が振り返る創作のルーツ【特別インタビュー】
『仮面ライダー』の怪人にも通じる金子流「引き算」のデザイン
金子一馬さん(以下、金子):「仮面ライダースナック」はご存じですか? 僕は思いっきり世代なんですけど、たしかラッキーカードの一文字隼人がこんな感じで(ポーズをとりながら)マスクを小脇に抱えている写真だったんですよ。
ラッキーカードをカルビー(当時はカルビー製菓)に送るともらえる「仮面ライダーアルバム」があって、他愛ないものなんですけどどうしても欲しくて。
──そんな『仮面ライダー』の思い出を伺いたくて、今日は復刻版ですけどこんなもの(仮面ライダー図鑑)も用意してきました。
金子:当時はこれを何度も読み返しましたよ。第1話が「怪奇!蜘蛛男」じゃないですか。次が蝙蝠男で、その次がさそり男、そしてサラセニアンの順番だったかな。
──序盤の旧1号のスーツは色が暗めなので、背景にまぎれて見えづらいのも怪奇色を高めていましたよね。
金子:蝙蝠男の回とか特にそうでしたね。当時のテレビだとほとんど何も見えなくて、目だけが暗闇に光っているのは怖かったです。(図鑑を見ながら)ガニコウモルも良いですよね。でも、ガニコウモルの股間部分のデザインが何なのかはずっと気になっているんですよ(笑)。
ぶっちゃけて言うと、僕は「蜂女までしか許さんぞ」というタイプなので、藤岡弘、さん(当時は藤岡弘)が大怪我されるまでの本当に初期の頃が大好きです。
──以前のインタビューで『神魔狩りのツクヨミ』のツクヨミたちのベルトなどに『仮面ライダー』の意匠を取り入れているというお話が印象的でした。そこで今回のインタビューでは金子さんの好きな『仮面ライダー』などの特撮についてお話を伺えたらと思っています。『仮面ライダー』は初回放送からご覧になられていたんですよね?
金子:当時、初回の放送時間を忘れていて慌てて帰宅したら、ちょうど蜘蛛男によって緑川博士が溶かされてしまう場面だったんです。緑川博士の娘(緑川ルリ子)が「あなたが殺したのね」と本郷猛を問い詰める流れが大人びていて本当に好きでしたね。
──『神魔狩りのツクヨミ』のツクヨミでは、仮面の襟足から髪の毛が見えるところにも『仮面ライダー』の影響を受けていると仰っていました。
金子:ツクヨミたちが仮面を被るのが『仮面ライダー』っぽくて、要素として収まりが良かったんです。あと、ツクヨミたちが着るジャケットをショート丈にしたので、デザイン面で腰にポイントを置きたかったのもあります。ベルトが無かったら全体的に色味が真っ黒になってしまうので、どうしてもアクセントが欲しかったんですね。
──モチーフに取り入れるくらい『仮面ライダー』を好きになったきっかけは何ですか?
金子:子ども心に設定やデザインを格好良いと感じたんです。周囲にはライダーキックを真似してガラスを割ってしまうような子どもがいましたが、仮面ライダーになりたいとかそういったことには興味がなくて、どちらかと言うと怪人のデザインや設定が好きでずっと見ていました。ただ、シリーズを追うごとに徐々に「何か違うな」と感じて離れてしまいましたけれど。
──具体的にはどの作品までご覧になっていましたか?
金子:『仮面ライダーV3』くらいまでですね。そのあたりから少し色気づいたりする思春期に差し掛かったこともあって、子ども向け番組を熱心に見るのもどうか、と思うようになりました。
──特に好きな怪人はいますか?
金子:やはり『仮面ライダー』の初期の怪人ですね。マスクを被ってタイツに少し絵が描いてあるだけというのが、逆に非常にそれらしくてとても好きでした。特に好きだったのは「かまきり男」や「さそり男」です。
──金子さんのデザインにも通じるかもしれませんが、シンプルなものが好みなんですね。
金子:「キノコモルグ」とかも好きです。2号ライダーの頃に2話続けて登場していましたよね。あの頃から少し予算が増えたのか、以前はタイツに絵が描いてあるだけだったのが、プロテクターのように少し装飾が付くようになってきたじゃないですか。「サボテグロン」なども好きで見ていましたが、デザイン要素が増えていくと逆に僕は引いていくところはありました。
ゲルショッカーの怪人は凄く良かったと思います。デストロンも最初の頃は良かったけれどリアリティは減っていきましたよね。手にハサミを付けるくらいだったら、もっと凄い武器でも付ければ良いのにと子どもながらに思ったり。「カメバズーカ」は背中にバズーカーを背負っているというデザイン自体は面白いと思いました。
──そういった好みは、金子さんのデザインをシンプルにまとめる意匠とも通じる部分を感じますね。
金子:「シンプルにするべき」という思考はあります。足していくのはどうしても逃げだと思っていて、できるだけ少ない情報量で表現するのが優れたデザイナーではないかと思うんです。
デザインしていく上で自信がないと、つい何かを足してしまいがちですよね。白い面積が多いと何となく心配になって色々と描き込んでしまったり、そういったことは絵を描く人間として空間恐怖症のようなものとしてわかるんですけれど、やはり少ない情報量で表現するのが一番良いのではないかと思っています。
言うなれば「引き算の美学」ですね。
ツクヨミの設定秘話
──『仮面ライダー』が好きな金子さんが『神魔狩りのツクヨミ』でツクヨミのマスクを実際に作られたわけですが、製作にあたって何かオーダーはされましたか?
金子:造形が得意なところに設定画を見ながら作っていただきました。最近は3Dモデルで基本形を作るんですけれど、それが出来上がってきたら僕のほうで「もう少し引っ込ませて」とか「もう少し伸ばして」とか写真の上から絵を描いて指示を出しています。
ただ、個人的にはマスクのバイザー部分はパカッと上に開くようにしたかったのですが、素材面で難しいということで断念しています。でも、簡単に被れるように後頭部を調整していただいたり、色々と工夫されているなと思いました。
──金子さんご自身は被られましたか?
金子:僕は被っていないです。これはプロデューサーのケビンさん(開発プロデューサー・齋藤 ケビン 雄輔)の専用マスクなので(笑)。実際に完成したものを見たらイメージや雰囲気が合っていて、上手に作っていただいて良かったです。
──今回はマスクのみですが、ツクヨミたちの服は作らないのでしょうか?
金子:ケビンさんは「こうなると服も欲しいよね」と話していたんですが、残念ながらまだありません。少し洋風なシルエットにしてはいるんですけれど、実は袴のイメージから派生したパンツになっているんです。その下にもきちんと肌袴みたいなものを着ているとか、服飾デザイナーになった気持ちで全体をデザインしました。
──その設定が世に出ないのも勿体ないですね。
金子:もう少し『神魔狩りのツクヨミ』の人気が出たら、実現できるかもしれないので、それを楽しみにしています。
実相寺昭雄監督回の怪獣がみんな好き
──『仮面ライダー』以外にはどんな作品をご覧になっていましたか?
金子:『仮面ライダー』の前には『ウルトラマン』がありましたが、僕は『仮面の忍者 赤影』や『ジャイアントロボ』といった横山光輝先生の作品にも夢中でした。
『仮面の忍者 赤影』は特に第1部の「金目教編」と第2部の「卍党編」が大好きなんですが、シリーズ後半になると忍者ものなのにロボットやUFOまで出てきますからね。このセンス・オブ・ワンダーは凄いと思って、子供ながらに感心しながら見ていました。
しかもアバンタイトルで「豊臣秀吉がまだ木下藤吉郎だった頃、琵琶湖の南に『金目教』という怪しい宗教が流行っていた……」といった口上から始まって、それから主題歌が入る流れが格好良くて。
──周りのご友人も皆さんご覧になっていたんですか?
金子:周りの友達はどうだったかなぁ。ただ、僕が『ウルトラマン』の怪獣にも詳しかったので「アーストロンとゴーストロンは兄弟」とか、そんなことを周りに教えていた記憶があります。
──いま怪獣の名前が挙がりましたが『ウルトラマン』はどのシリーズまでご覧になっていましたか?
金子:『ウルトラQ』から見ていて、『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』までが非常に好きでした。『帰ってきたウルトラマン』に関しては放送前から「テレビマガジン」や「テレビランド」といった雑誌で第1話に登場するタッコングとザザーンが紹介されていたんです。これらを楽しみにしていた思い出がありますね。
初代ウルトラマンのマスクは造形も非常に良くて、特にBタイプと呼ばれるマスクが非常に格好良かったんですが、『帰ってきたウルトラマン』は少し目が離れてしまっているのが気になっちゃって。
編集部注:初代ウルトラマンのマスクはA~Cタイプの3種類があり、全39話の中で2回切り替わっている。
その後のシリーズだと『ウルトラマンレオ』は変身前のレオが所属する防衛チームのMACが、基地ごと怪獣に食べられて全滅するという伝説の回があると聞いて見てみたのですが、スポ根だったり、ファミリーものだったり当時の事情が見えて面白かったですね。
──好きな怪獣は何ですか?
金子:子どもの頃は「シーボーズ」とか特徴的な外見の怪獣が好きでしたが、後々に気づいたのは実相寺さん(実相寺昭雄)が監督した回の怪獣がみんな好きだということですね。
あとは「ボーグ星人」もデザイン的には非常に好きだったんですけれど、大人になって見返したら意外と弱かったのが残念でした。ボーグ星人のやられ方をご存知ですか? ウルトラセブンのアイスラッガーで首をスパンと切られると、切断面から泡をブクブクと吹き出してバタンと倒れるんです。よく友達と怪獣ごっこをする時に、このやられ方を如何にリアルに再現するかみたいなことをやっていましたね。
こういった話ならまだまだいけますよ。『好き! すき!! 魔女先生』も見ていました。タイトル通り魔女の先生が活躍する学園ドラマだったんですが、途中から魔女先生が変身する特撮番組になるんです。あとは『美少女仮面ポワトリン(以下、ポワトリン)』とかも覚えていますね。
──『ポワトリン』は『仮面ライダー』や『ウルトラマン』よりも時代が少し後ですよね。
金子:僕がゲーム会社(アトラス)に入った頃に放送していたと思います。それこそ『女神転生』を作っている人たちと話していると「ポワトリンが面白いんだよ」と教えてくれて。脚本家が少しペーソスの効いた脚本家(浦沢義雄)だから面白いんだとか、そこでオタク的な知識というか見方を勉強させてもらった感じですね。
金子さんに影響を与えたファッション、音楽、映画
──金子さんのデザインを拝見していると特撮以外にもハイブランド的なファッションの要素も取り入れているように感じますが、ファッションからの影響もありますか?
金子:色気づいた頃からファッションにも興味を持ちました。荒木飛呂彦さんという漫画家さんがいらっしゃいますよね。僕が携わった『ペルソナ』では「ペルソナ」という守護霊みたいなものを使役して戦うんですが、それが荒木先生の『ジョジョの奇妙な冒険』のスタンドと概念が似ていると一部で言われたことがあるんです。
僕と荒木先生のデザインの感じも似ているところがありますけれど、2人ともリアルな感じの描き方が好きというだけでお互いにパクったりはしていなくて。
共通しているのはファッションのコレクションが好きという点なんです。お互いに洋服もデザイナーの作品も好きだから、それらが創作物に影響として出てしまうことが一致していたんです。
例えば『ジョジョの奇妙な冒険』の第5部にトリッシュ(トリッシュ・ウナ)というキャラクターが出てきますよね。『ペルソナ』にもトリッシュという名前のキャラクターが出ているんですが、それは何故というとトリッシュ・ゴフというモデルさんが関係しているんです。以前に荒木さんと対談をした際に「トリッシュ・ゴフって美人だよね」という話で盛り上がって、お互いのキャラクターの元ネタが一緒だったということもありました。
しかも荒木さんは洋楽がお好きじゃないですか。僕も洋楽が大好きなんです。洋楽のミュージックビデオなどを見ていると、面白いデザインの服とかも出てくるので、お互いそういった趣味嗜好が混ざり合って何かを創造しているのかなと思います。
──荒木先生の洋楽好きは有名ですが、金子さんはどんなジャンルを聴かれるんですか?
金子:すごく影響を受けたのは、多感な時期に聴いたボニーMやアラベスクとかですね。
──ディスコミュージックですか⁉
金子:ボニーMやアラベスクを聴いて衝撃を受けたのがきっかけで洋楽一辺倒になった感じです。ただ、友達はそういった洋楽を全く知らないってことが多いじゃないですか。学校で『ザ・ベストテン』の話になると、洋楽を知っている人なら「西城秀樹さんの『ヤングマン』はヴィレッジ・ピープルのカバーなんだよ」とか思うところを、それは言わずに話を合わせていましたね。
──金子さんの口からボニーMの名前が出るのは意外でした。「怪僧ラスプーチン」とか「サニー」とか良い曲が多いグループですよね。
金子:正にその「怪僧ラスプーチン」やモチーフになった「ラスプーチン」が好きで『デビルサマナー葛葉ライドウ』シリーズにラスプーチンを出したことに繋がっていくんです。若い頃は歌舞伎町のディスコにも行ったりしていたので、机に向かう勉強よりも、そういった方面の勉強の影響はありますね。
大好きな『ツイン・ピークス』へのオマージュ
──私は映画が好きだったので、歌舞伎町と言えば映画館の記憶が強いのですが、金子さんにとってはディスコだったんですね。
金子:映画も大好きですよ。しょっちゅう歌舞伎町でオールナイト上映をやっていたし、当時は今みたいに入れ替え制ではないから1回入ったらずっと見ていられたんです。混んでいたら立ち見だけでなく、床に座って見たりと凄い時代でしたよ。
僕はディスコにも行ったりしていたので、当時は『グリース』という映画を見に行っていました。劇中で『グリーズド・ライトニング』とか流れるじゃないですか。振り付けがあるんですけど、観客もみんなで歌いながら同じ振付をやっているんですよ。もちろん座りながらですが。
今で言うと『マインクラフト』の映画も海外ではそんな風に盛り上がっているらしいじゃないですか。応援上映みたいなもので、そういったことをやりたくて映画館に行く感じでした。
編集部注:『グリース』は1978年に公開されたジョン・トラボルタ主演のミュージカル映画。サウンドトラックは同年にアメリカで2番目に売れたアルバムであり、1979年に行われた第51回アカデミー賞には歌曲賞でノミネートされるなど楽曲人気も高い。
──金子さん好きな映画ジャンルも『グリース』のような作品ですか?
金子:SFとかも大好きですよ。どちらかと言うとタルコフスキー(アンドレイ・タルコフスキー)みたいな変わった映画が好きです。あとはデヴィッド・リンチも大好きなので『神魔狩りのツクヨミ』をプレイしていただくとわかると思いますが、残月などが出てくるボス戦前の赤いカーテンの部屋(休憩所の斬月の部屋)は『ツイン・ピークス』の赤い部屋のオマージュなんです。
しかもあの部屋の絨毯は『シャイニング』のオーバールック・ホテルのイメージです。子どもが三輪車で走るのをカメラが追いかけるシーンがあるじゃないですか。あの有名な絨毯の模様っぽくしてほしくてデザイナーに依頼したり、自分の大好きなものをゲームにも取り入れようとしています。
だから逆に驚いたのは、僕が他のメンバーに『ツイン・ピークス』を見せたら、そこで初めて休憩所の残月の部屋の元ネタが『ツイン・ピークス』だと気付いたんです。今の若い人たちは昔の作品をあまり見ていないんだなと感じましたね。
金子さんが神や悪魔に興味を持ったきっかけとは?
──たしかに自分の周囲でも新旧どちらの映画も見る人は少なくて、アニメ映画だけは見るという人が増えている印象はあります。
金子:でも昔のアニメは見ないでしょ。『伝説巨神イデオン(以下、イデオン)』とか『無敵超人ザンボット3(以下、ザンボット3)』みたいな名作を知らないというのは悲しいですよね。こっちは『ザンボット3』なんて最後を知っているから、もう主題歌を聴いただけで悲しくなってしまうのに。
──『ザンボット3』と言うと「人間爆弾」とかハードな設定と演出が多かった作品ですよね。
金子:戦う理由も、敵は銀河の安全を守るコンピューターで、宇宙にとって問題がある種族がいたら自動的に排除するために動いているんです。そのために地球へやって来て人類を抹殺しようとする設定なので、敵からしたら地球人が悪なんですよね。
そういった戦う理由や設定が徐々にわかってくるというお話でした。頑張ってもなかなか報われないって悲しいじゃないですか。例えば手塚治虫先生の『W3(ワンダー・スリー)』なども同じような雰囲気なので、ああいった作品はとても好きですね。
──ディスコミュージックや映画から『ザンボット3』まで、幅広いジャンルに興味がある金子さんが、神や悪魔に興味を持つようになったきっかけは何があったんですか?
金子:怪獣とか妖怪が好きだった延長ですね。子供の頃にジャガーバックスという出版社から「世界の妖怪図鑑」や「日本の妖怪図鑑」みたいな本が出ていて、それを怪獣の延長として捉えながら熱心に読んでいました。最初は「ガネーシャという神様がいるんだ」くらいに思いながら読んでいたのが、段々と世界の神や悪魔にも興味を持つようになって、聖書や神話の本を読み始めるうちにどんどん詳しくなっていきました。
まだ当時は『ムー』という雑誌はありませんでしたが「ピーリー・レイースの地図には南極大陸が描いてあるんだよ」といったオカルトや都市伝説みたいな話など、とにかく面白いものが好きだったのがきっかけですね。
編集部注:「ビーリー・レイースの地図」はオスマン帝国の海軍軍人ピーリー・レイースが作成した地図の1つ。当時の最新の地理知識を使った地図と言われているが、南極大陸らしきものが描かれていることからオカルトやオーパーツの文脈でも有名。
『日本書紀』を知っていると更に楽しめる『神魔狩りのツクヨミ』
──『神魔狩りのツクヨミ』では「十六夜」や「ツクヨミ(月詠)」など、これまで以上に和の神話的な要素が強いのには何か理由がありますか?
金子:作中に「金鵄(きんし)」というモチーフが出てくるんですが、これは『日本書紀』に登場した神武天皇による日本建国を導いた金色の鵄(とび)のことなんです。過去に僕が作った作品では『古事記』の流れのものもあったんですけれど、今作に関しては『日本書紀』ですね。詳しい方はそれがポイントになっているのがわかるかなと思います。
それ以外にも目玉と鳥居を組み合わせて秘密結社っぽくしていますが、日本で結社や国家を守護する裏の組織と言えば「八咫烏(やたがらす)」の都市伝説がありますよね。その八咫烏も「古事記」や「日本書紀」に出てくるカラスであり、導きの神だったりします。
永井豪先生の『バイオレンスジャック』という漫画も好きなんですけど、バイオレンスジャックを導くのが金色の鳥なんですよね。八咫烏って神話だと道案内をした鳥なんですが、今思い返すと『バイオレンスジャック』の金の鳥も八咫烏のイメージなのかなと思ったりもします。まあ、『バイオレンスジャック』は後半に進むと八咫烏とは全く違うものだということがわかるんですけど(笑)。
同じく永井豪先生の『デビルマン』の最後も、先ほどの終末論にも関連していて『ヨハネの黙示録』などの最後とよく似ているんですよね。永井先生もそういったものをご覧になっていたのか、お互いの創作物に似ているところがあるのは面白いですね。
──永井豪先生で神話だと『魔王ダンテ』もありましたよね。
金子:正に『魔王ダンテ』は先ほどの『ザンボット3』の話ではありませんが、一般的な神と悪魔の立場が逆転していて、主人公たちにとっては敵が「神」であり侵略者なんです。あの逆転の発想は凄く好きです。
──漫画だと永井豪先生の作品が好きなんですか?
金子:子供の時に色々な漫画を読んでいた中で、永井豪先生の作品には非常にショックを受けましたね。『デビルマン』に関しては先にアニメの方を見ていたんですけど、いとこのお姉さんが原作を勧めてきたので読んでみたら、テレビとはまるで違う衝撃の展開が待っているではないですか。「嘘でしょ?」と衝撃を受けて。小学三年生くらいだったと思いますが、それ以降は漫画の読み方も変わっていきました。
──永井豪先生やその少し後の世代だと、荻野真先生の『孔雀王』や夢枕獏先生の『魔獣狩り』シリーズのようなSFと神話が入り混じった名作が多い印象です。金子さんも含めて世代的な何かがあるのでしょうか?
金子:平井和正先生の『幻魔大戦』や『ウルフガイ』シリーズとか、現実世界と魔界などの異世界がうまく合わさったような作品はたくさんありましたよね。自分も現実世界に少し生きづらさみたいなものを感じていて非日常に少し憧れていたので、そういったことを考える方が多かったのかもしれません。
僕はジョージ・A・ロメロ監督の映画『ゾンビ』が大好きなんですけど、現実ではあまり許されないことも相手がゾンビだったら大丈夫じゃないですか。そういった世界観にしたくて『真・女神転生』などを作ったんです。
『デジタル・デビル物語 女神転生II』というゲームも、シェルターから物語が始まるのは同じジョージ・A・ロメロ監督の映画『死霊のえじき』からインスピレーションを受けています。
──私も『ゾンビ』は大好きで何度も見返していますが、ダリオ・アルジェント版もロメロ版とは別の魅力があってどちらも良いんですよね。
金子:アルジェント版と言うとゴブリンの音楽ですよね。そうすると『サスペリア』などもお好きですか?
──あとは『フェノミナ』とかも好きです。
金子:『フェノミナ』は良いですよね、ジェニファー・コネリーが蛆のプールに落とされるところとか。(ラジオの出演時間が迫っていたため)映画だけで1時間は話せますが、また別な機会に話したいですね。
──このインタビューだけでも『神魔狩りのツクヨミ』は様々な引き出しのある作品だと感じましたが、最後にアニメイトタイムズの読者にメッセージをお願いします。
金子:アニメや漫画、特撮などが好きな読者さんが読んでいると思いますが、今回の『神魔狩りのツクヨミ』は過去の様々な作品の影響を受けているゲームなので、そういったところを見つける楽しみもあるかなと思います。是非そのようにして楽しんでいただけたら嬉しいです。
『神魔狩りのツクヨミ』 作品情報
◆ゲーム名:神魔狩りのツクヨミ(じんまがりのつくよみ)
◆ジャンル:カード創造ローグライク
◆対応端末:iOS、Android、PC(Steam)
◆対応言語:日本語、英語、中国語(繁体字・簡体字)
◆価格:アイテム課金制(基本プレイ無料)
◆ストアページ
>>App Store
>>GooglePlay
>>Steam(PC)
>>公式サイト
[企画・記事・写真/岩崎航太]