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野生のサカナが麻薬中毒に? 音楽フェス後に違法薬物成分が河川に流入

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魚が麻薬中毒に?(提供:PhotoAC)

人間の社会で問題になっている違法薬物が、いま河川に棲む魚たちをも苦しめている可能性があることが、各国の研究で明らかになってきています。

違法薬物が野生生物に影響

イギリスで先日開催されたとある野外音楽フェスの会場を流れる川から、高濃度の違法薬物が検出され、生息する希少な魚などの野生生物を脅かしていることがわかりました。イギリスのバンガー大学の研究チームが先月28日、発表しました。

イギリス連邦イングランドのサマセットで行われた野外音楽フェスの会場内を流れる「ホワイトレーク川」から検出されたのは、高濃度の合成麻薬MDMAやコカインの成分です。

野外フェスのせいで川に違法薬物が!?(提供:PhotoAC)

河川水のサンプルを取って調査したところ、イベント前と翌週で、MDMAの濃度は4倍になっていたそうです。またコカインの濃度は、当河川に生息する絶滅危惧種「ヨーロッパウナギ」の存続を脅かすほど高まっていたといいます。(『英音楽フェス会場を流れる川から高濃度の違法薬物、魚の脅威に』AFPBBニュース 2021.9.28)

なぜ河川から薬物が検出?

しかし、そもそもなぜ河川から違法薬物の成分が検出されるのでしょうか。

ヒトが摂取した覚醒剤やMDMAなどの薬物は、体内に吸収され作用をもたらしたあと、主に尿や汗から排出されます。そのため薬物使用者の尿には大量に薬物の成分が含まれています。

件の野外音楽フェスでは、薬物を使用した観客が会場内外で放尿したと考えられ、それによって排出された薬物成分が会場周辺の土壌に吸収され、さらにそこから河川に流出したと考えられるのです。

排水から河川に薬物成分が流出する(提供:PhotoAC)

薬物汚染の著しい欧州の一部地域では、日常的に河川から薬物成分が検出されることもあるといいます。また違法な薬物だけでなく、抗うつ剤などの一般的な医薬品成分も河川水からは検出されています。

現在の下水処理技術では、下水中に溶け込んだ薬剤や薬物の成分を除去することは困難なのだそう。そのため、ヒトが排出し、下水に流れ込んだ各種の薬物・薬剤の成分が、容易に河川に流出してしまうのです。

違法薬物が魚に与える悪影響

今年の7月、チェコのプラハにあるチェコ生命科学大学のチームが行った研究では、河川に生息する魚類が上記のような薬物の影響を受けていることが明らかとなりました。

実験ではまず、マスの一種「ブラウントラウト」40匹を水槽に入れ、淡水河川と同じ濃度の覚醒剤成分「メタンフェタミン」を含む水の中で8週間飼育しました。そしてその後、この40匹をきれいな水を入れた水槽に移した上で、1日おきにメタンフェタミンが入った水と入っていない水を選ばせました。

ブラウントラウト(提供:PhotoAC)

実験の結果、ブラウントラウトの多くは、水槽を出たあとの4日間、メタンフェタミンが溶け込んだ水を選択したそうです。研究チームによれば、これはブラウントラウトにメタンフェタミンの禁断症状が出ていることの表れだということです。

さらに加え、メタンフェタミン中毒になった魚はそうでない魚に比べて活発さがなくなり、実験後最大で10日間、脳にメタンフェタミンの痕跡が見つかったそうです。

魚類は、神経を活性化させる作用のある物質にとても敏感に反応すると言われています。そのためヒトと同じようないわゆる薬物中毒を発症する可能性があるのだそうです。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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