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Nulbarich、約1年半ぶりの有観客ワンマンは音楽が放つ光=希望にあふれた一夜に

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Nulbarich

Nulbarich ONE MAN LIVE-IN THE NEW GRAVITY
2021.6.13 東京ガーデンシアター

有観客のワンマンライブとしては2019年12月1日のさいたまスーパーアリーナ以来。初めての会場である東京ガーデンシアターに集まったファンの、マスク越しの笑顔や溢れるときめきがすでにライブだ。

4thアルバム『NEW GRAVITY』(2021年4月発売)は、JQが拠点をL.A.に移し、ちょうどそのタイミングで遭遇したBlack Lives Matterやその後のデモなど、彼の音楽ルーツであるヒップホップやソウルなどブラックミュージック、その中でもメッセージ性の強い楽曲の根幹に触れた。そして孤独な環境の中で必然的に自分自身と向き合う時間が増えたことで、内面的な楽曲が多くなったと取材で語ってくれた。また、自然な反動として他者とモノづくりをする興奮や感動を求めたコラボレーション作品が一つのアルバムに収録された経緯も腑に落ちる。

1年半ぶりの再会は、単にその長さを埋めるだけのものではなく、JQ個人から発生し、バンドで共有された2020年という奇妙で特別な時間を目の前にいるファンとともにようやく分かち合えた、話ができたような機会だったのだ。暗闇の中でも光は探せる、そして光そのものを鳴らしているような、これまでのNulbarichのライブで感じたことのないような新たなエモーションが溢れ出していたのだ。

6月19日からのストリーミング配信が初見の人のために、オープニングの演出などは見てのお楽しみにしていただくとして、選曲はアルバム冒頭の意思表示的な「TOKYO」。続く「Twilight」は雲間の光のようなライティングに照らされたフロアが各々自由に体を揺らし、冒頭から尋常ではないエネルギーが放出される。それをキャッチしてメンバーのプレイもより輝度を増すように感じられた。楽曲ごとの光の演出はトータルで素晴らしく、「VOICE」ではモノクロの映像とセピア調のメンバーへのライトのバランスが美しく、エレガントなピアノソロと生音ヒップホップ・マナーのドラムが彼らならではのバランスを生み出し、小気味いいギターカッティングが冴える「Super Sonic」ではステージの上も下も巨大なダンスフロアへ。《また話の続きをしよう/someday》というフレーズがことのほか染みる「CHAIN」では間奏でJQが「Let’s Go!」と煽り、しっとりどころか再会の歓喜、音を出すことの歓喜で楽曲のスケールがこの場で更新されていることを実感。歌詞もこれまで以上に明快に心に響くのだが、それはセットリストの流れや、こちらのマインドセットも関係しているのかもしれない。

この日は、MCもいつもより多く、メンバーのソロもフィーチャーされ、演出は楽曲の世界観を総力戦で盛り上げているが、ステージの上は上で、人間味を大いに増して、広めのライブハウスのような親密なコミュニケーションがとれているのも、自然なことなのだろう。

メンバーのプレイヤビリティとライブアレンジの妙を堪能させてくれたのが、曲そのものがワイワイ、ガヤガヤと音で会話するような「Mumble Cast #000」で、最近披露していない曲を挟むメドレー。ネオソウル、生音ヒップホップの醍醐味をビート、絶妙なギターのオブリガードなどで彩りつつ、スムーズに「Kiss Me」や、かなり久々となる「Handcuffed」に繋ぎ、切なさを滲ませつつ、エンディングは温かみのある「Mumble Cast #000」のアウトロに着地。その見事さに小さく感嘆のため息が洩れた。一転、ステージ上の映像が投影され、リアルタイムでこのライブのドキュメントを見ているような気持ちになる「Lonely」が、音源よりグッとハードなギターのフレージングも相まって、フィジカルに訴えかけてくる。メンバーそれぞれの見せ場がカタルシスを生む要因にもなっている。

Vaundy

Vaundy

唾奇

さて、ニューアルバムのDISC 2に参加しているゲストはどこでどう登場するのかも楽しみな今回のライブ。結論としては一つのブロックで続々と、しかもそれぞれのコラボの必然を知らしめるトークも交えて展開。「やっべえな」と、本人が最もワクワクしている様子のJQが最初に招き入れたのはVaundy。この日一番のジャンプで「ASH」に応えるオーディエンス。《今灰にして》のリフレインに尽きることのないレスポンスが続いた。続く唾奇は時代を切り取った渾身のラップで、おなじみ「It’s Who We Are」をアップデート。ファンも当然、湧く。「カッケーな。生き方だからチャラく見えない」と、心からの賛辞がJQから飛び出す。さらに、長年の知人でありつつ、ようやくコラボが実現したAKLOが貫禄を漂わせて登場。出会いや、オンライン飲みで朝まで語り合ったことなどをバンドのセッションに乗せて話す二人。男っぽさもありつつスムーズなAKLOのラップの説得力が「Sweet and Sour」に新たな年輪を加えていた。そして最終兵器、もといドン、Mummy-D(from RHYMSTER)はすでに立ち姿で圧倒。多くを語らず、「ストレス抱えてるみんなに一言言いたいのは、きっと大丈夫。うまく行くよ」――そこからの彼のライフストーリーでもある「Be Alright」はこの日のハイライトの一つだった。

AKLO

Mummy-D

Mummy-D

大きな見せ場に感極まっているJQを認識したのか、次のブロックで聴こえてきたギターリフ、「Kiss You Back」のイントロでは頭から大きなクラップがJQに燃料を注いでいるように見える。「え? ここで(クラップ)?」というJQの笑顔が一瞬見え、プリミティブなビートやコーラスが力を注ぐと同時に、ステージに設置されたミラーボールが祝福するように光の粒を会場に届ける。アッパーに盛り上げるだけじゃなく、光も音も透明で清冽な印象で自然物に触れるような感動があった。声は出せないがシンガロングしてるのが聴こえる気がするとJQが言った「Break Free」、小気味いいカッティングの「LUCK」と、90年代フレーバーなダンスチューンが続き、フロアのうねりはますます熱を帯びる。しかもかつてないほどの多幸感を伴って。

ラストのブロックを前にJQはユーモアも交えて「やっててよかった、Nulbarich」と、クスッとさせてから、「光、見つけてるから。見つかるよ」と、この日のライブを経て感じたと思われる確信を口にしたのだった。

大団円というより、続いていく日々を照らすように聴こえた「Almost There」、そしてアルバムの最終曲「In My Hand」で2時間に渡るライブは終演した。これまでもコアファンは感じていたことかもしれないけれど、確実に実人生にNulbarichの音楽は近くで鳴っている、そう感じた1年半ぶりの再会だったのだ。最後の最後までこの日のストーリーをつなぐ演出も素晴らしかった。

なお、ストリーミングでは現地ではわからなかった視点の映像なども加わり、謎が解ける編集で届けられるとのことで、そちらも楽しみだ。

取材・文=石角友香 撮影=岸田哲平 Victor Nomoto

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