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【通年連載企画】「シリーズ上越偉人列伝」第3回 日本ワインぶどうの父・川上善兵衛(再掲載)

にいがた経済新聞

直近の記事を再掲載します

初回掲載:2024年3月3日

新潟県上越市北方にある岩の原葡萄園の本社

2024年新企画の新潟県上越市近現代の偉人を連載で紹介するコーナー、「シリーズ上越偉人列伝」の第3回は日本ワインの父・川上善兵衛。

岩の原葡萄園の「岩の原ワイン」は、世界的なソムリエで有名な田崎真也さんが「岩の原の『深雪花』の赤は美味しい」と発言したのをきっかけにブレークした経緯がある。今や、新潟県上越市のお土産ではトップを争う人気と言ってもいいのではないだろうか。

「貧困だった農民を守るため」

新潟県上越市ホームページによると、明治初期には文明開化のシンボルとしてワインに注目が集まり、ワイン造りを志した人々が多く生まれたが、酸味や渋みのあるワインは当時の日本人になかなかなじまず、事業としてのワインづくりは困難を極めたという。

また、乾燥した気候を好むワイン用ぶどう栽培は日本の風土では難しく厳しいものだったが、善兵衛はこれらの苦境に打ち勝ち、日本の風士に合った品種を育成し、ワイン用の良質なぶどう品種(マスカットベリーA)を誕生させ、今や国際的にも認知されるワインを誕生させた。かつて岩の原葡萄園の社長だった萩原健一氏に筆者が取材した時に「善兵衛さんは枯れたこの土地に莫大な私財を投入して、高士地区に葡萄園を作ったんです。それもこれもみな貧困だった農民を守るためです」と語っていたのを思い出す。

善兵衛は独学で英語やフランス語を学び、海外で出版されているぶどうに関する研究書を読み、驚異的な勢いでぶどう栽培とワインの知識を吸収し、実践していった。

上越市指定文化財登録の第二号石蔵

寿屋創業者・鳥井信治郎との縁(えにし)

経営不振に陥った時に、上越市の縁が結んだ運命的な出会いがあった。

「赤玉ポートワイン」で甘味葡萄酒のブームをおこしていた寿屋(現・サントリーホールディングス株式会社)創業者の鳥井信治郎は、スペインやチリから輸入していた「赤玉ポートワイン」の原料酒を国産化できないかどうかについて、新潟県上越市出身であり醸造学の権威であった東京大学の坂口謹一郎博士に相談した。坂口博士は「よいワインはよいぶどうからしかつくれない」と示唆し、その指導ができるのは川上善兵衛をおいて他にはないと信治郎に告げたという。

信治郎はすぐさま善兵衛のもとを訪れ、ふたりはお互いのワインづくりにかける情熱が同じであることを確信。1934年(昭和9年)寿屋との共同出資で「株式会社岩の原宿萄園」を設立、経営の建て直しが行われた。

1941年(昭和16年)、日本農学会は善兵衛の論文「交配に依る葡萄品種の育成」(「園芸学会雑誌」第11巻第4号)に対し、「日本農学賞」を贈って、その功績を称えた。

上越市の本社近くのぶどう畑

(文・撮影 梅川康輝)

<参考文献>
上越市ホームページ
川上善兵衛資料室

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