Q&Aでわかる!京都・観音めぐり ~洛陽三十三所観音霊場再興20周年記念~
寺院を訪れたとき、「第◯番札所」と書かれた石柱や看板を目にした事はありませんか?
日本には霊場巡りの文化があり、霊場巡りで参拝する寺院のことを「札所」といいます。
霊場巡りは僧侶の修行や貴族の願掛けのため平安時代頃から始まったと考えられ、後に旅行要素も加わり庶民にも普及していきました。
石柱(画像提供:平成洛陽三十三所観音霊場会)
霊場巡りと聞くとなんだかハードルが高く感じるかもしれませんが、難しい作法や特別な参加資格はありません。特に、今回紹介する「洛陽三十三所観音霊場巡り」は京都市内だけで巡ることができ、霊場巡りビギナーにもおすすめです。
普段の生活から少し離れ、自分自身を見つめ直すきっかけになるかもしれません。
本記事では、洛陽三十三所観音霊場の礼所一覧から、霊場巡りのために知っておきたい基礎知識まで詳しくご紹介します。
洛陽三十三所観音霊場とは
「洛陽三十三所観音霊場」とは、広域で巡礼が難しい「西国三十三所」に代わるものとして平安時代に後白河法皇が定めたとされる京都市内にある33の霊場(=寺院)のことをさします。「洛陽」とは京都を意味し、札所はすべて京都市内にあります。
「西国三十三所」は和歌山、大阪、兵庫、京都、奈良、滋賀、岐阜と2府5県にまたがりますが、こちらは京都市内で完結するため、効率よくまわれば3日間ほどで全ての霊場を巡礼することも可能です。長距離の移動が難しい人やスケジュールに余裕のない人でも全ての霊場を巡ることができるのが嬉しいですね。
20周年記念印の御朱印(画像提供:平成洛陽三十三所観音霊場会)
明治時代の廃仏毀釈の影響により途絶えていましたが、2005年に現在の札所に定めなおされ復興。2025年は再興20周年を迎えます。
2024年10月8日~2025年12月末日の期間中は、特別デザインの御朱印「再興二十周年記念朱印」が授与されるほか、記念法要や記念品の贈呈などが行われます。
巡礼所一覧
①六角堂 頂法寺 ②新京極 誓願寺 ③護浄院(清荒神) ④革堂行願寺 ⑤新長谷寺(真如堂) ⑥金戒光明寺(黒谷) ⑦長樂寺 ⑧大蓮寺 ⑨青龍寺 ⑩清水寺善光寺堂(旧地蔵院) ⑪清水寺奥の院 ⑫清水寺本堂 ⑬清水寺朝倉堂 ⑭清水寺泰産寺 ⑮六波羅蜜寺 ⑯仲源寺 ⑰蓮華王院(三十三間堂) ⑱善能寺 ⑲今熊野観音寺 ⑳泉涌寺 ㉑法性寺 ㉒城興寺 ㉓東寺 ㉔長圓寺 ㉕法音院 ㉖正運寺 ㉗平等寺(因幡堂) ㉘壬生寺中院 ㉙福勝寺 ㉚椿寺 地蔵院 ㉛東向観音寺 ㉜廬山寺 ㉝清和院
巡礼前に知っておきたい5つのポイント
そもそも観音様とはどんな仏様?
聖観音像(画像提供:平成洛陽三十三所観音霊場会)
観音様こと「観音菩薩」とは、さまざまな姿に変身して人々を苦難から救うといわれている仏様です。
世の中のあらゆる人を救い、あらゆる願いをかなえるため、兵士や僧侶、美しい天女など、臨機応変に33の姿に変身するといわれています。これを観音三十三身といい、洛陽三十三所観音霊場の札所でも如意輪観音、千手観音、十一面観音、聖観音など、さまざまな観音様に出会えます。
どの順番でまわればいい?
霊場にはそれぞれ「第◯番札所」と数字が振られていますが、番号通りにまわらなくてはいけないわけではありません。
洛陽三十三所観音霊場は、長い歴史の中で札所の番号が入れ替わったり、再興の際に新しく加入した寺院に“空き番”となっていた番号を振り当てたりしたため、前後の数字が振られた札所の距離が遠く離れていることも。効率を重視するなら番号は気にせず、まわりやすいルートを選んでOKです。
移動手段は?徒歩でまわらなくてはいけない?
洛陽三十三所観音霊場巡礼の範囲は京都市内に限られているため、数日かければ徒歩で全霊場をまわり切ることもできます。
とはいえ、徒歩でまわらないといけないルールはないため、公共交通手段を使っても全く問題ありません。どの札所も交通アクセスの良い立地にあるため、地下鉄・バス1日券を利用するのもおすすめです。
まわるときの服装は?
霊場巡りといえば白装束や藁がさのイメージが浮かぶ人もいるかもしれませんが、服装は普段着で問題ありません。観光を兼ねて巡礼する人もいるので、かしこまった服装でなくても大丈夫です。ただし仏様の前で手を合わせるのに相応しい格好として、あまりに華美な服装は避けたほうがよいでしょう。
全ての霊場を巡るとどうなる?
満願証(画像提供:平成洛陽三十三所観音霊場会
全ての霊場を巡り終えることを「満願」(または「結願」)といい、満願になると授与料1,000円(2025年1月現在)で自身の名前が入った満願証を授与してもらえます。
【授与寺院一覧】
※事前に各札所に確認してください。
・六角堂頂法寺
https://www.ikenobo.jp/rokkakudo/
・誓願寺
https://www.fukakusa.or.jp/
・護浄院
https://rakuyo33.jp/gojoin/
・金戒光明寺
https://www.kurodani.jp/
・大蓮寺
https://www.anzan-no-tera.jp/
・清水寺
https://www.kiyomizudera.or.jp/
・泉涌寺
https://mitera.org/
・東寺
https://toji.or.jp/
・長圓寺
https://rakuyo33.jp/choenji/
・正運寺
https://rakuyo33.jp/shounji/
・壬生寺中院
https://www.mibudera.com/
・福勝寺
https://fukushoji-kyoto.jp/
・椿寺地蔵院
https://rakuyo33.jp/tsubakidera/
・東向観音寺
http://www.higasimukikannon.sakura.ne.jp/
・清和院
https://rakuyo33.jp/seiwain/
令和6年(2024年)10月8日~令和7年(2025年)12月末日の期間中、各札所で公式納経帳にて「再興二十周年記念朱印」を授かり満願した先着1000名様に「再興二十周年記念 限定デザイン手ぬぐい」が1番札所六角堂頂法寺にて贈呈されます。
ぜひこの機会に満願を目指してみてくださいね。
公式納経帳(朱印帳)と公式ガイドブックを持って巡礼しよう!
洛陽三十三所観音霊場巡礼に欠かせないのが各札所で御朱印をいただくための御朱印帳(納経帳)です。御朱印帳の種類に決まりはありませんが、「洛陽三十三所観音霊場公式納経帳」を持っての巡礼がおすすめ。
公式納経帳は金襴紐綴じ式と紺色生地と白色生地の3種類があり、中生地面は御朱印と並ぶかたちでお寺や札所の説明や、御詠歌が記載されています。
33の札所についてより詳しく知りたい人は、公式ガイドブック(300円)も巡礼のお供にいかがでしょうか。ただ御朱印を集めてまわるだけでなく、それぞれの寺院の歴史を学ぶことで洛陽三十三所観音霊場巡りがより奥深い体験となるはずです。
公式納経帳と公式ガイドブックは各霊場の札所で販売していますが、一部の札所では取り扱いのないことも。最初に訪れる予定の札所で取り扱いがあるか、あらかじめ問い合わせておくと安心です。
洛陽三十三所観音霊場の寺院が「京の冬の旅」で特別公開
第59回「京の冬の旅」(1/10~3/18)の公開テーマは「世界遺産登録30周年」と「洛陽三十三所観音霊場再興20周年」。普段は非公開の寺宝や仏像などが見られる貴重な機会です。
特別公開が行われる寺院のうち、洛陽三十三所観音霊場でもある「頂法寺(六角堂)」「平等寺(因幡堂)」「地蔵院(椿寺)」の概要と見どころをそれぞれ紹介します。
◆頂法寺(六角堂)
本堂が六角宝形造であることから「六角堂」の名で親しまれている頂法寺。開基は聖徳太子で、四天王寺建立の用材を求めてこの地を訪れた太子が、霊告によってこの地に御堂を建て、守護仏の観音像を安置したのが始まりと伝えられています。
本堂北の本坊が「池坊」と呼ばれ、そこから室町時代以降多くのいけ花の名手を輩出した華道家元池坊の発祥の地としても有名です。
如意輪観音像
期間中は、隣接する「いけばな資料館」にて寺宝特別展示も行われます。像の背面に本尊(秘仏)を体内に納入することのできる蓋の付いた空間があることから「鞘仏」と呼ばれる「本尊御前立 伝弘法大師作 如意輪観音像」や、「池坊専好立花図」(重文)など、貴重な文化財は必見です。
▽「京の冬の旅」非公開文化財特別公開 頂法寺(六角堂)
https://ja.kyoto.travel/event/single.php?event_id=10826
※3月15日(土)は拝観休止 拝観前に最新情報をご確認ください
◆平等寺(因幡堂)
平安時代の貴族・橘行平が、因幡国(現在の鳥取県)で海中から発見した薬師如来像を祀ったのが起こりと伝わる平等寺。町衆の寺として特に芸能に縁が深く、一説には浄瑠璃発祥の地ともいわれています。藤原時代の一木造の像である薬師如来立像(重文)が本尊で、非常時に運び出せるようにコロ(滑車)の付いた厨子の中に納められ、頭巾をかぶった特徴的な姿をされています。
薬師如来立像
今回期間中は、観音堂に祀る2体の十一面観音菩薩像を特別公開。『因幡堂縁起』絵巻、愛染明王坐像のほか、平等寺に伝わる寺宝も特別展示されます。
▽「京の冬の旅」非公開文化財特別公開 平等寺(因幡堂)
https://ja.kyoto.travel/event/single.php?event_id=10827
◆地蔵院(椿寺)
奈良時代に高僧・行基が創建したのが始まりと伝わる地蔵院。1本の木に色とりどりの花が咲き、花びらが一片ずつ散ることから「五色八重散椿(ごしきやえちりつばき)」と呼ばれる名木は豊臣秀吉が寄進したものと伝わり、「椿寺」の愛称でも親しまれています。
※現在の椿は樹齢約200年の2代目で、花の見頃は3月下旬から
鍬形地蔵菩薩像
見どころは、頭部の螺髪が伸びた大きな髪型が特徴の本尊・五劫思惟(ごこうしゆい)阿弥陀如来像。また、観音堂に雨宝童子(うほうどうじ)、春日龍神(かすがりゅうじん)とともに祀られている十一面観世音菩薩立像も特別公開されます。
▽「京の冬の旅」非公開文化財特別公開 地蔵院(椿寺)
https://ja.kyoto.travel/event/single.php?event_id=10828
まとめ
京都市内のみで満願できることから、気軽に始められる洛陽三十三所観音霊場巡り。京都観光と合わせて巡礼するのもおすすめですが、御朱印集めはスタンプラリーではないので観音様に手を合わせる参拝の心は忘れずに。京都市内の全域を1枚でまわれる地下鉄・バス1日券を使うと便利でお得です。
参拝するときには観光マナーや寺院によって定められた撮影ルールを守って、霊場巡りを楽しんでくださいね。
※地下鉄・バス1日券 https://oneday-pass.kyoto/
記事を書いた人:中村 ゆか
京都生まれ京都育ち。
主に京都に関する記事をWebメディアや雑誌で執筆しているフリーライター。
ライティングに限らず、京都のお店や企業の採用・広報・SNS運用のサポートも手掛ける。