Aqua Timez、ラストライブ『Aqua Timez 20th Live -OLDROSE-』オフィシャルレポート 到着
12月27日(土)に東京・国立代々木競技場 第一体育館で開催されたAqua Timezのラストライブ『Aqua Timez 20th Live -OLDROSE-』のオフィシャルレポートが到着した。
キャリア初の代々木第一体育館。2days。2018年の解散ライブ「last dance」の時も「最大動員」として横浜アリーナをソールドアウトさせたが、今回は二日間である。2025年いっぱいを必死に走った再びの青春の季節は最後にこうして過去最大の果実を実らせてくれた。最終日、5人が1万2千人を超える面前に登場した瞬間から、太志が靴紐を結び直し、ステージを後にするまで、穏やかな感傷の途切れることの一切ない素晴らしいライブだった。
この日、二度目の「解散」に向き合う5人は、それぞれに感傷的になることを自らに許すかのような、等身大の5人としての生き様を見せてくれたように思う。意地を張るでも、強がるでもない。込み上げるものは込み上げるものとしてそのまま溢れさせればいい。流れる涙は流れる涙としてただありのままにそこに生まれればいい。歌は歌として、極まるフレーズは極まるままに、深まるセンチメントはただただ深まるままに、上ずる声もまた心の赴くままに、演奏陣はその腕の動くままに、ただただ「今、残したいもの」「今、伝えておきたいもの」をひたむきに刻みつけていく。そういうライブだった。誠実で、どこかちゃんと大人で、でもどこか寂しそうでもあり、「終わる」ことへの一筋の悲しみを隠そうともせずに、心を自由に解放させていく。どこまでもAqua Timezのライブだった。二度目の解散ライブは、もしかしたら、7年前に見たあの初めての解散のときよりも、5人が「なりたかったバンド」像にたどり着いたことの証明であるような確かな手応えを示してくれるものでもあった。Aqua Timezは2025年を通して、あの時よりもずっと苦しさを増したこの時代の中で、Aqua Timezの役割を知ったのだと思う。
5人の、最後の演奏が始まったのは、開演時間を少し過ぎた17時16分だった。
客電が落ちる。雲の上を渡り鳥が飛ぶ。朝焼け。海を渡り、草原を進んでいく。シンプルな映像から始まるのがまたAqua Timezらしいとも思う。
あたたかな手拍子が鳴る。ステージにスポットライトが集まる。5人が立っている。
5人が、慣れ親しんだ、そしてこの1年、あらためて慈しんだそれぞれのポジションにつく。
一曲目は、“最後まで”。
一曲目の最初から、歌詞が映し出されるのがいい。5人の表情を抜く、5分割の映像。〈「価値」って、「負け」ってなんだろう〉――。人生のテーゼを真正面から歌い上げていく、堂々たるポップソング。Aqua Timezの最後のライブが始まった。
虚飾のないバンドアンサンブル。太志の歌も、言葉離れが美しく、言葉がすっと響いてくる。「いつだって あなたをそばに感じてた 最後の最後まで」という裸の言葉が1万人2千人の心を鼓舞していく。
TASSHIの4カウントから、“きらきら ~original ver.~”が歌われる。オーディエンスの手が柔らかに揺れる。騒ぐわけでも大きな叫び声が上がるわけでもない。だが、それぞれの心の中で起こっている喜怒哀楽、機微の応酬のようなコミュニケーションは濃密で、このライブが「熱く」求められていることがとてもよくわかる。
太志は、「今までやったどのライブよりもじっくりやろうと思います」と短く語り、“STAY GOLD”へと進んでいく。
日常の中にある真実。日常に向き合うからこそ気づくことができる人生の価値。生きることの要諦。
〈考え事をしていたら/アイスクリームが溶けてしまった/明日のために/ここにあるものを壊してしまう/地球は速度を変えず/光と影を繰り返して/僕らに問いかける〉――。
まさにAqua Timezの言葉、太志の解像度による珠玉の言葉たちだと思う。粒度高く日々を見つめ、何が起こるでもない、「アイスクリームが溶けてしまう」ような時間を愛しく見つめ、覚えていくこと。君と過ごしたそんな時間をいつまでも覚えていたいと願い続けること。Aqua Timezが歌ってきたのは本当にそれだけなのだなとあらためて思う。大介のギターが豊かなディレイを響かせ、アウトロを奏でる。言葉を浴び、言葉を受け止めたあとに訪れるこの余韻もまたAqua Timezのライブを観ることの本懐だ。〈同じ夢見て/年をとってくなんて/バカみたいだけど/最高じゃないかって思うぜ〉という歌詞(“アスナロウ”)がこれほどまっすぐに届く夜はきっと他にないだろう。
「Aqua Timezというのは5人だけのものじゃなくて、みんなのものなんだなと思う」というTASSHIのMCから、mayukoが爪弾く鍵盤が静かに立ち上がり、OKP-STARの情感豊かなフレーズが絡み合っていく。ファンからのリクエストを受けて演奏された“閃光”。グッドメロディ、真実のリリック。シンプルなサウンド、まっすぐな歌。今日も、Aqua Timezは徹頭徹尾、この5人に「やれること」だけを必死にやり続けている。
大介のアルペジオに乗せて、太志が言葉を紡ぐ。
「19歳の頃、電車に乗れませんでした。OKPとバンドを組んで、自分がいてもいい場所を作りたくて、Aqua Timezを作って。歌えない日もあった。それでも生きていていいって言ってくれたのはAqua Timezのファンでした。俺たちが助けられていた」――。
ビートが走り出す。飾り気のない言葉と想いはビートに紛れることなく、ダイレクトに飛び込んでくる。歌と言葉と音。そして、ファンの想いとファンへの想い。綺麗事でも誇張でもなく、本当にただそれだけの要素で、感情のすべてが満たされている空間。大切なことしかない。“生きて”は特にそう感じる。今さら言うまでもないAqua Timezの代表曲だが、生み出されてから10年以上の時が経ち、「生きてこそ」という、この上なく短く大きなこのメッセージが今ほど響く時はない。
“小さな掌”では、デビュー時から支えられてきたという弦一徹ストリングスとともに、極上の旋律が歌われていく。穏やかなアコースティックギターの響きも相まって、太志の声がさらなる深みを帯びていく。
“絵はがきの春”を聴きながら思うのは、Aqua Timezの音楽、その世界にはいつも「向こう側」があったのだなということだ。「吐息で曇るガラス。その向こうに眩しさを眺めていた」――。向こう側にある眩しさ。いつか、その「向こう側」に、この手で触れることができるのだろうか。手を伸ばす。その眩しさにいつかこの手は届くのだろうか。切実なやりとりを重ね、ライブの空気はさらに親密に、さらに濃密に深まっていく。
ライブは終盤に差し掛かり、一体感の強まるアンサンブルを奏でてきたメンバーがそれぞれに話し出す。
「どのくらいの人が待っていてくれるのか本当にわからなかった。Aqua Timezは自分たちを過小評価していて。たくさんの人たちが待っていてくれました。この20年で今日の景色がいちばんすごいと思う」と大介。
mayukoは、「みんなの拍手が温かくってさ。昨日はこたつみたいって思ったけど、今日は天国なのかなって思う。バンドに加入したとき、太志とOKPは絶対にプロになるって言ってたし、私は、このふたりを絶対にデビューさせてやるって思ってた。いつかこんなところでやりたいって思っていて。本当にこんな日が来たんだね」と涙を浮かべる。太志が言葉を受け継ぐ。
「TASSHIは会社員をやりながら今回の再結成をやってくれたから。大変だったと思う。TASSHIがやってくれなければ、こんなことはできなかったから。本当にありがとう」
「うまくいかないこともあるし、自分ももっと左手動かないかなと思いながらやってきて。それでもそんな自分も肯定して続けていったら幸せがあるのかなって。Aqua Timezはずっといるから」と締め括るTASSHIは涙を隠さずにいる。
ここで、再結成後に生み落とされた新曲、“if you come”が歌われる。〈波打ち際にて/いざ僕ら/運命を打ち返すとしたら〉〈砂漠に埋まっている水車に/降る雨のような仕草でそっと/あなたが笑ってくれたから〉。なんと素直に深まった詩情なのだろう。デビューから20年、再びの結成、再びの青春を走り抜こうとしている太志が今、ここにきて、ひたむきに詩の世界を追求し、真実を深めている。その事実が、今、Aqua Timezの音楽を必要としたのはきっと太志だったのだろうという想いに駆られる。
かつての解散の前、当時ラストとなったアルバムの最後に収録された運命の楽曲“last dance”、そして再結成後のテーマソングとしての新たな名曲“OLDROSE”へ。
最新の、最も深く削り出された愛の形。そして、太志から新たな宣言がなされる。「みんなが俺たちの音楽を必要としてくれて。必要としてくれるたびに毎回嬉しかったです。だからたくさん曲を作ったし、このペースが俺たちを追い込んだときもあったんだけど、でも前に進もうって。本当に今日来るのが怖かったけど。人生うまくいかないことこれからもたくさんあると思います。でも、俺も今日しっかり最後まで歌い抜くっていうことを、綺麗な声じゃないかもしれないけど、この生き様を見せるんだって思って。最後まで歌い抜きます」。
本編最後に選ばれたのは、“空いっぱいに奏でる祈り”だった。再びストリングスを背負い、
「勝ちも負けもない世界に生きられたらなあ」と歌うAqua Timez。ピュアなる想いと大事な言葉だけが詰まったライブの最後、極まっていく時間の最果てで待っていたこの大きな感動の時間。メンバー5人の表情が大きく、5分割のモニターに映される。忘れ難い瞬間だけが連なって生み出された2時間。Aqua Timezは今日も最後まで堂々と潔かった。
1万2千人の大歓声を受けて、5人が再びステージに上がる。再び5人が5人として走り出してから約一年。この新たな青春の季節があと数曲で終わる。来るべき瞬間に向けて、5人はまたいつもの場所に立ち、それぞれの決意の元、楽器を奏でていく。
“銀河鉄道の夜”では、太志が声を詰まらせる。先だっての宣言の通り、立ち止まることなく歌は歌われていく。
“決意の朝に”。曲タイトルが告げられると、ぐっと飲む息とともに張り詰めた空気が広がっていく。ここにいる1万2千人と5人、すべての人にとってお守りのような楽曲。太志が再び声を詰まらせる。ストリングスの美しい旋律、余韻に満たされる素晴らしいアウトロ。「すみません、ごめんなさい」という太志の声。
「今日はいちばん大事に思ってたし、最高の自分を出したかったけど、人生はこうだったりします。CDみたいに歌えたらって自分が嫌になるけど、また曲書きます。いちばん大事な日にうまくやれない自分は悔しいけれど、今日がいちばん大事な日であることに変わりはないから。また会うために、最後分け合ってください」――。
mayukoの鍵盤、太志の歌声。ふたりだけの始まりを、巨大な手拍子が導いていく。“虹”。最初から最後の最後まで止まない手拍子。渾身の歌声を響かせ続ける太志。オーディエンスもまた、人生を通して何度も救われ、支えられてきたこの楽曲を、今あらためてしっかりと受け止め、愛し直そうとしている。たおやかに歌われ続ける大きなビブラートと1万2千人の両手が鳴らす大きな拍手。広がる空を駆け上がるように上昇曲線を描くストリングス。ボトムから支え続ける鉄壁のアンサンブル。そのどれが欠けても、このAqua Timezだけの、生きることに対する絶対の肯定のポップソングは生まれもしなかったし、今こうして成立することもない。20年を経て、解散を経てもなお、この絶対のポップソングは今も有効で、2025年が終わっても、2026年というAqua Timezのいない時間においてもきっと、僕たちを支え続けてくれる。TASSHIの前に集まり、最後の音を鳴らす5人。こうして、Aqua Timezの再びの季節は終わった。
客電で照らされたフロアを前に、両足の靴紐を結び直した太志が最後の感謝を伝える。
「また会いたいという想いでやってきました。“必ず”なんて言わないほうがいいかもしれないけれど、未来のどこかでAqua Timezがあるかもしれない。俺たちは支え合ってこれたと思う。本当に幸せをたくさんもらいました。本当にありがとうございました」。
5人はまた、ただの5人に帰っていく。僕たちもまたただの一人ひとりに帰っていく。Aqua Timezが再び教えてくれたこと、生きるということ、自分を意地でも肯定するということ、自分らしくやればいいということ、うまくできないことばかりだということ。それでも続けることには価値があるということ。Aqua Timezが2024年7月から2025年いっぱいをかけて再び伝えてくれた、ポップソングの魔法はこれからもずっと生き続けていく。使い果たされることのないポップソングの力を守りながら、新たな決意の元で集まれるその日を僕たちはまた待ち続けていくのだろう。
不器用でまっすぐで、大切な時間だけを手繰り寄せながら進んでいくような繊細な1年半だった。Aqua Timezは2025年もまた潔く、最後まで優しかった。
文=小栁大輔
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