【川口好美さんの評論集「不幸と共存」】広大な海から輝く魚1匹
静岡新聞教育文化部が200字でお届けする「県内アートさんぽ」。今回は、7月1日付「文化と人」面で取り上げた川口好美さん(川根本町)の初評論集「不幸と共存」(法政大学出版局)。
シモーヌ・ヴェイユ、小林秀雄、江藤淳、中野重治らの著作を徹底的に読み込み、批評軸を形成。広大な海からキラキラした1匹の魚を素手ですくい上げてみせるかのような、頑健な体と一瞬で本質を射抜く鋭いまなざしを感じる。「差別への問い(1) 在日の「私」/秋山駿の〈私〉」と題した論考には、1968年の寸又峡温泉立てこもり事件を引き合いに、差別を論じる秋山駿の言葉を「日本文学史上希有なもの」としていて興味深い。(は)