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自閉症息子、3歳で発語が!喜びもつかの間、「言葉が出たからゴール」ではなかったと痛感する今

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自閉症息子、3歳で発語が!喜びもつかの間、「言葉が出たからゴール」ではなかったと痛感する今

監修:新美妙美

信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教

いくら待っても発語がなく悩んでいた日々……

知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)の次男Pは、3歳になるまで意味のある発語はほとんどありませんでした。

Pの幼少期には周りから「男の子はしゃべるのが遅いよ」「いつかしゃべれるようになるよ」などと励まされて、私も希望を持つようにしていました。しかし2歳を過ぎ、PがASD(自閉スペクトラム症)と診断されてからは、言葉が遅いのは障害があるのが原因だし、たとえ言葉が出たからといって、Pの障害が治るわけでもないと思うようになったので、Pの言葉が出ないことに対して私が悩むことは徐々に減っていきました。

そんなPも3歳を過ぎたあたりからエコラリア(他人が言った言葉をそのまま繰り返すこと)などで言葉を発することが多くなり、話せる単語も少しずつ増えてきました。4歳頃には初めて「お母さん」と言えるようにもなり、好きな物やキャラクターの名前、2語文なども出るようになりました。

5〜6歳頃には、トイレを言葉で伝えてくれるようになり、暑い・冷たい・痛いなどの感覚的な言葉も出るようになりました。それまで要求がある時には、クレーンで伝えることが多かったPも、現在ではある程度言葉で伝えてくれるようになり、意思疎通もかなりできるようになってきました。

言葉は出るようになったけれど、新たな問題も!?

でも、Pの場合は言葉が出たからといって喜んでばかりもいられなかったのです。

現在も、自発的に発する言葉は、一方的な要求の場合のみしか出ず会話になりません。こちらの問いに対して返事をすることはないけれど、Pの問いに対してはすぐに返事をしないと怒るなど、他者との言葉のコミュニケーションはかなり自己中心的なのです。

Pが気に入った言葉は、時と場所を考えず自分が言いたい時に何度も繰り返し言いますし、発音が悪いので相手が聞き取れず正しく伝わらなかった場合には癇癪を起こすようにもなりました。

コミュニケーションを取るための手段として言葉を発しているわけではない!?

私はPの言葉が出ることをずっと望んでいたし、言葉が増えたことには成長を感じ、もちろん喜んではいるのですが、言葉が出たらゴールというわけではなく、その子の特性によっては、その言葉自体が困りごとへと変わってしまう場合もあるんだと痛感しています。

Pは言葉を発する時に、誰かとコミュニケーションを取ろうとしているのではなく、自分の頭に浮かんだことをただ発しているだけなのかもしれませんし、自分の考えていることを声に出し整理しているだけなのかもしれません。また不安やストレスを感じたときに同じ言葉を繰り返し言って安心しているのかもしれません。

私はPがなぜそのような言葉を発しているのか?を理解すると同時に、静かにする場所や場面を絵カード等で提示し、声のボリュームの練習をしてみたり、ルールを決めたりすることが必要だと思っています。

また、聞いてもらう相手に少しでも正しく伝わるように、家だけではなく特別支援学校や放課後等デイサービスなどでも発音や発声の練習を実践してもらい、言語療法の先生にも相談して、言葉に関することをいろいろ教えてもらいたいです。

P自身が自分の言いたいことが伝わらないことにイライラし、ストレスを感じないように、できる限りサポートしていけたらと思っています。

執筆/みん

(監修:新美先生より)
P君の言葉の発達の変化と保護者としてどのように感じて考えてきたかについて、聞かせて下さりありがとうございます。
ASD(自閉スペクトラム症)や知的な発達の遅れがあると、言葉が出るのが遅かったり、言葉が出るようになってもコミュニケーションがうまくとれなかったりして、保護者の方としてはやきもきしたり、心配になったりすることが多いと思います。みんさんがおっしゃられているように、「言葉が出たからゴール」というわけではないというのもありますね。

一般的に自閉傾向のある方は、知的な遅れがあってもなくても、音声言語によるコミュニケーションよりも、視覚的な情報のやりとりのほうが、より意思疎通がスムーズにいくことが少なくありません。みんさんもご紹介くださっているように、言葉が出ていても、絵カードなどの視覚情報のやり取りも活用するのはとてもいいと思います。音声の言葉だけにこだわり過ぎずに、ご本人に合った形式でご本人に伝えられるーーご本人の思いを表出できる手段を取り入れていけるとよいと思います。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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