秋主従は春・夏・冬と比べて「未完成な部分」が魅力的──この先にある、撫子が秋の代行者たる所以が感じられるシーンに注目してほしい『春夏秋冬代行者 春の舞』祝月撫子役・澤田 姫さん×阿左美竜胆役・八代 拓さんインタビュー
電撃文庫/KADOKAWAより刊行されている暁佳奈先生の小説『春夏秋冬代行者』。四季の神々から与えられた特別な力を使い、季節を巡らせる役目を背負った「四季の代行者」とその護衛官、8人の想いが精細な筆致で描かれた作品となっています。
その小説を原作としたTVアニメ『春夏秋冬代行者 春の舞』がTOKYO MXほかにて放送中。
アニメイトタイムズでは、放送に合わせたインタビュー連載を実施中です。第3回は、秋の代行者・祝月撫子(いわいづき なでしこ)を演じる澤田 姫さん、秋の護衛官・阿左美竜胆(あざみ りんどう)を演じる八代 拓さんが登場。
オンエアを観てお二人が感じたことや、春・夏・冬主従とは違う、秋主従ならではの魅力、本格的な登場回となった第7話と、物語が大きく動いた第10話の中で特に印象に残ったシーンなどを伺いました。
【写真】アニメ『春夏秋冬代行者 春の舞』澤田 姫×八代 拓【連載インタビュー第3回】
シーンごとに描かれる感情の一つ一つに強く共感できた作品
──まずは、作品の第一印象や魅力を感じた点をお聞かせください。
祝月撫子役・澤田 姫さん(以下、澤田):オーディションのお話をいただく前から作品のことは知っていました。初めて原作小説を見かけたときに、絵の美しさや、春夏秋冬を題材にしたお話ってあまりなかったなと思って、強く心が惹かれたことを覚えています。
(暁 佳奈)先生の選ばれる言葉がすごく繊細で(場面ごとの)映像や音まで想像できましたし、キャラクターたちの心情もリアルで共感できて、あっという間に読んでしまいました。
そこからオーディションのお話が来て、撫子役でご縁をいただけて。シナリオやキャラクターの絵をいただいたときは「本当にそのままアニメになっている!」と感動しました。アニメだけどアニメじゃないような、実写作品のような空気感も感じたので、それをちゃんと表現したいなと気合が入りましたし、改めてこの作品は、繊細さや、言葉の一つひとつが特に魅力だなと思いました。
──原作小説を読んでいて、特に共感した部分はどういったところだったのでしょうか?
澤田:特定のキャラクター一人というよりは、シーンごとの孤独感や絶望感、「うまくいかないな」といった日々の中で感じること……自分の今までのことだったりを思い出して、シーンごとに共感することが多かった気がします。
例えば、竜胆の「表と裏」じゃないですが、ああいった人間らしさもそのひとつです。誰に対しても同じように接しているつもりでも、どうしても年齢差や関係値などで変わってしまう部分はあって。それはあまり良くないことなのかなと私は思っていたんですが、竜胆を見ていると「必ずしも悪いことではないんだ」と思えたんです。そう見せているだけで裏側にはいろいろあったりするんだなと。そんな風にさまざまなシーンを通して、自分と向き合うこともできる作品だなと思いました。
阿左美竜胆役・八代 拓さん(以下、八代):僕はオーディションのときに原作を読ませていただきました。澤田さんが仰っていたように、キャラクターたちが抱える感情が、自分の過去や現在のどこかしらに刺さるような感覚がありました。
孤独感だったり、閉塞感だったり、いろいろなものがあると思いますが、そこに見事に刺さるように描かれていて。本当に先生は人間というものをよく見ていらっしゃる方なんだろうなと。そして自分の中に生まれた感情にも、ものすごく向き合ってこられた方なのかなと思いました。「面白い」という一言だけで済ませてしまうのが失礼なくらい、魅力的なものが詰まっていて、とにかく「出たいな~!」と思いました。
──オンエアを観て感じた、本作の映像面や音楽面での魅力はどんなところでしょうか?
澤田:とにかく綺麗で、作品の持つ繊細さが映像や音楽にも表れているなと思いました。冬の寒さや春の温かさなど、匂いや気温まで伝わってくる立体的な映像になっていて、本当に美しかったです。
八代:改めて「アニメっていいよな」と思うような、映像表現としてものすごく美しい瞬間がたくさん詰まっている作品だなと思いました。背景のこだわりもそうですし、キャラクターの表情もすごいなと。
澤田:シーンによって目の描写が変わりますよね。
八代:分かる! キャラクターの目以外を隠しても感情が読み取れるくらいで。
澤田:撫子ちゃんが賊にさらわれた後の竜胆のシーンとかも、目だけで痛いくらい感情が伝わってきて。表現が細かいです。
八代:一方で、シーンによってはキュートさ、ポップさもあったりして。いろいろな表情があって面白いですし、キャラクターの人となりが話数を重ねるごとにどんどん見えてくるのは、絵の力も大きいだろうなと思います。
周囲の協力によって引き出せた撫子の“神秘性”。竜胆は単純な「表と裏」にしないことを意識
──続いて、演じるキャラクターの第一印象や魅力を感じた点をお聞かせください。
澤田:撫子ちゃんはとにかく可愛くて、誰もが守ってあげたくなるような愛らしさがあります。でも可愛いだけじゃなくて、結構いろいろなことを考えていて、しっかりしている部分や強さも持ち合わせていて。まだ幼いのに、年齢以上にしっかりしているし、周りも見ているし、大人だし……というギャップも魅力なのかなと思います。
八代:竜胆の性格的な魅力は説明がすごく難しくて、魅力にもなりえるし、弱点にもなりえるし、というところがあるなと思います。そういった意味では、この作品の中で一番人間くさく、身近に感じられるキャラクターかもしれないので、そこは魅力だと思います。
また、作品的なところの魅力でいうと、他の代行者と護衛官は関係値がすでに出来上がっているのに対し、撫子と竜胆は今回の一件を経て完成するので「代行者と護衛官」という関係値の中で、ちょっと特殊な位置にいるのも魅力のひとつなのかなと思います。
──全体を通して、演じる上で大切にしたことや、スタッフからどのようなディレクションがあったのかをお聞かせください。
澤田:撫子ちゃんの持っている愛らしさと年齢以上にしっかりしている部分に加えて、神から任命された代行者という、ちょっと人間離れした不思議な感じも出したいなと思いました。
最初はそこを考えすぎていたんですが、監督や音響監督、スタッフの皆さんとすり合わせていく中で、撫子ちゃんは無邪気だからこそ、そういった雰囲気が自然と出てくることが分かって。「私、無理に作ろうとしちゃっていたんだな」と思って、そこからはとにかく撫子ちゃんの気持ちに寄り添っていきました。
スタッフさんに調整していただいたり、相談に乗っていただいたりしつつ、八代さんの竜胆と掛け合っていくことで、撫子ちゃんとより向き合うことができたと思います。本当に皆さんに助けていただきました。
──ここまで幼いキャラクターというのは、澤田さん的にも結構、挑戦だったのでしょうか?
澤田:この年齢感のキャラクターはあまり経験がなかったかもしれないです。(撫子は)育ちも特殊なので、ファンとして読んでいるとき以上に、ちゃんと心情に寄り添って、深く通じ合っていく必要があるなと思いました。もし「春の舞」の先を演じる機会があるのなら、撫子ちゃんのいろんな面をもっと表現したいなという気持ちがあります。
──そんな撫子の護衛官である竜胆については、どのように役作りをしていきましたか?
八代:撫子と二人でいるときが“表”、長月や大人たちといるときが“裏”で、本性は裏のほうである、という捉え方もできるとは思うんですが、それだとあまり面白くないなと。表裏ではなく、同じ場所に同居するものとして捉えたいなと思いました。「撫子と二人でいる時間=本性ではない、嘘のもの」という風にはしたくなかったので。
案外「竜胆という人間のピュアな部分をろ過していったら残るのは、撫子といるときのほうなんじゃないか? 大人たちといるときのほうが無理しているんじゃないか?」と思えるくらい、真面目で優しい人だなと思います。とにかく、安直に「表と裏」「本性と嘘」という風には絶対したくないなと意識していました。
ドラマを作っていくうえで、ある程度差異は欲しいということで、王子様モードとそうじゃないときの温度感、エネルギー感みたいなところは調整していただいたんですが、心持ちとしては(自分がイメージしたものを)受け入れていただけたのかなと思います。
撫子と竜胆の関係性は、春・夏・冬主従と比べて「未完成な部分」が魅力的
──続いて、撫子と竜胆で掛け合いをする際に意識したことをお聞かせください。
澤田:私はもうとにかく、八代さんに引っ張っていただいて。(撫子と竜胆の)二人の世界を現場で作ってくださったので、練習とは違うものが自然と出ましたし、「正解はこれだったんだ!」と思いました。
なので、私は特別何かを意識したというよりは、作っていただいた空気や、皆さんのディレクションに純粋に反応していくだけでした。
八代:(澤田さんの言葉を受け)嬉しいです。でも、僕も多分そこに救われていて。澤田さんがボールを受け取って、ピュアに返してくださったからこそ、撫子と竜胆として自然にいられたんだと思います。撫子が竜胆を心から信じてくれているという構図は、澤田さんのおかげで生まれたと思うので、本当に感謝しています。
──撫子と竜胆の関係性については、どんな魅力を感じていますか?
澤田:「空気感が独特で絶妙だな」と収録現場でも感じましたし、放送で改めて観ても思いました。甘くて、優しさや温かさ、愛に溢れていて。ずっとここにいたい、ずっと二人を見ていたいと思うような心地よさが魅力だと思います。
八代:年齢差が大きかったり、異性であったりと、他の主従とは違うところが多いんですが、その中でも「未完成な部分」が魅力なのかなと思います。春・夏・冬の主従の絆と比べると、秋はまだまだこれからというか。その「先がありそうな感じ」が魅力の一つなのかもしれないと思いました。
撫子が秋の代行者たる所以が感じられるシーンにぜひ注目してほしい
──秋主従が本格的に物語に登場した第7話の中で、特に印象に残っているシーンを教えてください。
八代:ミサイルがデカい!(笑)
一同:(爆笑)
八代:竜胆と同じタイミングで「は?」って言ってしまうくらい驚いて(笑)。「あんなデカさ要る!? 怖!」と思いました。
……というのは冗談として、真面目に挙げるならば撫子の「竜胆、まだかしら」という台詞です。何の疑いもなく、本当に純粋に、王子様の竜胆を思い浮かべながら待っている姿が健気すぎて。子供にとって待つ時間って、大人が思う以上に長く感じるはずなので、それを考えても泣けてきてしまいます。その純粋な待ち遠しさがすごく台詞に乗っていて、胸に来るシーンでした。
澤田:私は、竜胆が長月と話しているときに「撫子を比較に使うのはやめろ」とムッとするシーンですね。本当に竜胆自身は気付いていない、無意識で反応しているんだな、というのが、このときの表情や八代さんのお芝居からすごく感じられて。全部観た後にまた見返したいなと思うくらい、何度でも見たいシーンです。
あとはやっぱり、撫子ちゃんがいた場所に竜胆が歩いていくラストシーンは泣かずにはいられなかったです。ほんの数十分でこんなに変わってしまうなんて、現実は厳しいなと。映像・音楽・お芝居の全てから、痛いくらいに感情が伝わってきて、かなり心に来ました。
八代:自分が出演した作品って、どうしてもなかなか“視聴者”になれないんですが、あのラストはすごく純粋に涙が出ました。竜胆を呼ぶ撫子の声が明るいのがまた辛い演出でした。
澤田:全部、竜胆から見た撫子ちゃんなのが辛いですよね。あとは竜胆が初めて撫子ちゃんに出会ったときの歩みと、今いなくなった撫子ちゃんの場所に一歩ずつ向かっていく姿が交互に映し出される演出も印象的でした。私たちは展開を知っていたはずなのに、それでももう、今年はこれを超えるものはないだろうなと思えるくらい衝撃的で。涙は出てくるのに、言葉は出てこない、見ていることしかできない辛さがありました。
──第10話では、撫子が賊のリーダーである観鈴・ヘンダーソンと対峙する様子や、竜胆が春・夏・冬の主従たちから激励を受け、奮起する様子が描かれました。第10話の中で印象に残っているシーンについてもお聞かせください。
澤田:観鈴たち賊側のことも徐々に明かされていき、賊も何かしらを抱えている、ちゃんと人間なんだなということが分かって、物語に深みが増した気がします。
また、竜胆の姿も強く印象に残りました。多分、今まで撫子ちゃんが見たことがないような表情をしていて。この少しの間でいろんな心境の変化があって、どんどん前に進んでいて、王子様のときとはまた違う、人間くさいカッコよさがありました。そういった竜胆の姿や、協力してくれる他の主従たちを見て、私も「一人だけどしっかりしなきゃ」と強く思えたので、それが演技にも活きたのかなと思います。
八代:撫子が竜胆のことを探しているイメージがずっと頭の中にあったので、彼女が観鈴と対峙するところは強く印象に残っています。
あとはやっぱり、竜胆が見せた人間味のある未熟さ、青さはすごく印象的でしたし、それを受け止めてくれた春主従のカッコよさ、強さに胸を打たれました。二人のおかげで竜胆も覚悟を決めることができたのかなと思います。
──最後に、第11話以降の見どころを教えてください。
澤田:春と冬の二組に関しては、過去に決着をつけるための、前に進むためのお話でもあると思うので、各キャラクターがここからさらに自分たちの力で歩んで、闘って、どうなるのか、ぜひ最後まで一緒に見届けてほしいです。
この後もすごい展開が続く中でいろんな闘いや葛藤があり、そこにも共感できる部分がたくさんあると思うので、そういう意味でも楽しんでいただけたらと思います。
八代:春主従のさらなる活躍、そして冬主従との関係というところを楽しみにしていただきたいのはもちろん、秋主従としては、我らが主・撫子の「四季歌」が流れるシーンに期待していただきたいなと思います。
澤田:急にプレッシャーが(笑)。
八代:秋の護衛官として、そこはやっぱり外せません(笑)。この先、撫子が秋の代行者たる所以が感じられるシーンもあるので、ぜひ注目していただければと思います。
【インタビュー:篭法】