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郷土芸能15団体 釜石に集結! 「三陸国際芸術祭」TETTOで初開催 伝統の演舞堪能する2日間

かまいし情報ポータルサイト〜縁とらんす


 三陸国際芸術祭2025が4、5の両日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。三陸国際芸術推進委員会、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁の3者が主催。三陸の豊富な芸能の発信、国際的な文化交流で東日本大震災被災地域の「創造的復興」を目指そうと、2014年から始まり11回目の開催。釜石市が会場となるのは初めてで、地元からは市指定無形民俗文化財の3団体が出演した。市内外から大勢の人たちが訪れ、見る・学ぶ・体験する郷土芸能を楽しんだ。

 本年度の同祭のテーマは「醸ス(かもす)」。各地域の郷土芸能、若者、旅人、地域が交じり合い、醸し出される―をコンセプトに、地域文化の再発見、異なる文化への理解の場を提供しようと開催された。青森県八戸市から岩手県大船渡市までの三陸の郷土芸能15団体が出演。内容盛りだくさんの2日間となった。

威勢のいい掛け声とともに開幕を飾った釜石市の「錦町虎舞」


 4日夕方に開幕。釜石市の錦町虎舞がオープニングを飾った。神楽巡行の際、各地の民家など「神楽宿」で舞われてきた夜神楽を再現。鵜鳥神楽(普代村)と金澤神楽(大槌町)が伝統の舞を披露し、観客から盛んな拍手を受けた。演舞の合間には両団体の舞い手から担い手育成について話を聞く場面も。三陸地方の芸能は少子高齢化、震災などによる人口減少で人材確保が課題となっている団体も多い。金澤神楽からは「元々は男性が踊っていたが、(女性も踊るようになり)今では女性の方が多くなった。知り合いを通じて勧誘したり、入りたい人は地区外からも歓迎している」などの話があった。

国指定重要無形民俗文化財の「鵜鳥神楽」(普代村)。隔年で行われる釜石までの南廻り巡行でもおなじみ


女性が舞い手を務める大槌町の「金澤神楽」


各芸能団体の演舞に熱い拍手を送る観客


 5日は、若手芸能者が創造的な芸能継承について語り合う公開ディスカッション「三陸芸能ユースミーティング」を皮切りに各種プログラムが夕方まで続いた。「東北の百姓一揆と芸能」と題したプログラムでは、死者への祈りが込められた供養芸能として、瀧澤鶏舞(洋野町)、救沢念仏剣舞(岩泉町)、大宮神楽(田野畑村)が披露された。岩手の百姓一揆や民俗芸能研究で知られる茶谷十六さんと岩手県立図書館長の森本晋也さんが解説。一揆と芸能の関係性について、「日本最大級の三閉伊一揆の中心的指導者の多くは神楽など芸能の名手だった」という古文書の記録を紹介。茶谷さんは「岩手には凶作、飢饉で何万人もの人が亡くなった悲しい歴史がある。その悲しみを共有し、亡くなった人を供養するというのが岩手の芸能の原点ではないか。豊作祈願の田植え踊りで刃物を持って踊るのは圧政を許さない、自分たちの命を守るために戦うという覚悟の表れ」と話した。

洋野町の「瀧澤鶏舞」。念仏供養の踊りで、ヤナギ(花)を中心に円陣となって踊る


岩泉町の「救沢念仏剣舞」。毎年お盆に寺で踊り、先祖の御霊を慰める


 また、岩手の芸能には「住民の結束を強くし、生涯、苦楽を共にする仲間意識を育む側面もある」といい、これは他地域の芸能の在り方とは違うという指摘も。茶谷さんは「芸能が大きな力になったのを一番示したのが東日本大震災。震災から半年後、生活の復興ではなく、芸能の復興(復活)に力を合わせたことが、被災地復興を後押しした」とし、「たましずめ(鎮魂)」「たまふるい(魂を奮い立たせる)」という岩手の芸能の根底を示した。

県指定無形民俗文化財の「大宮神楽」(田野畑村)。躍動感あふれるダイナミックな舞で観客を魅了


岩手の百姓一揆と民俗芸能の関係について語った茶谷十六さん(左上写真左)。出演者からもさまざまな話を聞いた


 来場者の体験型企画も複数あった。「三陸祝祭音楽と盆踊りフェス」と題し、なもみ太鼓(野田村)、青森県から出演の田代盆踊(階上町)、八太郎おしまこ(八戸市)が太鼓や踊りを見せた後、体験の時間が設けられた。来場者は、ばちを手に取って大小の太鼓をたたいてみたり、踊りの輪に加わったりして楽しんだ。

 なもみ太鼓の会の泉澤弘代表(65)は「震災の津波で太鼓の保管場所が被災した。活動再開には時間がかかったが、一時期、大幅に減ったメンバーも今は20人ほどになり、子どもたちも増えた。今年で活動38年。できる限り、後世につないでいきたい」と話した。

野田村の「なもみ太鼓」。演奏後、来場者がメンバーから教わりながら体験した


青森県階上町の「田代盆踊」。太鼓のリズムに合わせ、来場者も踊りを楽しんだ


 「三陸未来芸能祭」と銘打ったプログラムには、虎舞と鹿踊(ししおどり)4団体が出演した。三陸地方には両芸能の伝承団体が数多く存在するが、土地によって頭(かしら)の形状や踊りが大きく異なる。虎舞は江戸時代の盛岡(南部)藩領と仙台(伊達)藩領で違いが見られる。会場では釜石市の鵜住居虎舞、大船渡市の門中組虎舞が演舞。鵜住居虎舞は俗に「雌虎」と称される優雅な舞と数多くの手踊りが伝承されているのが特徴。この日は虎頭の踊りのほか、手踊りの「豊年舞」「傘甚句」が披露された。一方、門中組虎舞は地元神社に伝わる獅子頭信仰に由来し、アクロバット的な踊りが特徴。両団体の演舞の後、釜石の虎舞の演目「跳ね虎」の体験会も行われた。

釜石市の「鵜住居虎舞」(左)と大船渡市の「門中組虎舞」(右)。北と南で頭や踊りが全く異なる


鵜住居虎舞は多くの手踊りも伝承。この日は豊年舞(左上)と傘甚句を披露


虎舞の演目「跳ね虎」の体験コーナー。頭を握る手の高さや足の運び方を見よう見まねで…


 岩手県の鹿踊は大きく分けて、内陸部に多い「太鼓踊系」と沿岸部に多い「幕踊系」の2系統に分類される。出演した釜石市の小川しし踊りは幕踊、住田町の行山流高瀬鹿踊は太鼓踊で、観客は装いや囃子(はやし)、踊りの異なる趣を楽しんだ。未来芸能祭は若手芸能者にスポットを当てた企画で、出演者からは「若い担い手を増やし、次の世代にしっかり伝えていきたい」との声があった。

住田町の「行山流高瀬鹿踊」(左)と釜石市の「小川しし踊り」。同じ鹿でも表現が違うのが面白い


 会場にはオーストラリア、フィリピン、インドなどから国際交流プログラムで訪れた外国人を含め、大勢の人たちが足を運んだ。陸前高田市の及川幹雄さん(70)は「釜石の虎舞を初めて見た時は衝撃を受けた。大好きです」と、この日の演舞も大いに堪能。虎舞や鹿踊の地域性の違いも改めて実感し、「日本の片田舎にこんなにも多くの素晴らしい伝統芸能があるのは誇るべきこと。もっともっとPRしないとね」と、積極的発信に期待を込めた。

 会場では、「三陸ブルーラインプロジェクト」で制作を続けるタイルアート作品も公開。今年は、かまいしこども園、釜石高美術部が協力して作り上げ、大船渡市の防潮堤への設置を前に同祭会場でお披露目した。

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