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塚本晋也「嫌な懐古主義に今があるよう」

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11月24(金)日の放送回のゲストは、映画監督の塚本晋也さんでした。

数ヶ月前に砂鉄さんの問い合わせメールフォームに1通のメールが。
タイトルには“塚本晋也です”とあり、「凝った迷惑メールだな」と思いつつ開いてみると塚本監督本人からのメールではありませんか!塚本さんのパートナーの方がこの番組を聴いており、次第に監督ご自身もリスナーになったそう。「膝を打ったりとか、なるほどいいこと言うな。と思って、砂鉄さんに僕の映画を観てもらいたいと…。」新作映画『ほかげ』を観て欲しいというメールでした。

映画『ほかげ』のきっかけとなった原風景とは…

『ほかげ』は終戦直後の闇市が舞台。塚本さんは1960年生まれですが、ご自身の「渋谷のガード下にいた傷痍軍人の記憶」が種となりました。

塚本:「今の渋谷マークシティの前って今もガード下になってるですけど、当時はもっと鋼鉄の塊・鉄の柱にボルトがビシビシ入ってるような。結構暗くて、夏で外が明るいと一層中が暗いような所に傷痍軍人さんがいて。体が不自由になったりしている人がアコーディオンを弾いてらしたりして。その隣に敷物を敷いてその上に不揃いのガラクタを置いてあって、どちらかというとそのガラクタを見るのが楽しくて。その風景が自分の中で原風景としてずっと残って気になっていて。今回の映画を作ろうと思った時に気づいたのが、あの風景って闇市の最後の名残りかもしれないなと思って。」

この記憶があるということは終戦から20年くらい経った時。逆に言うとそれくらいの月日まで闇市が残っていたということ。

「“殺す”っていうことがいかに恐ろしいかっていうことを描かないと」

14歳で初めてカメラを手にして、1989年『鉄男』で劇場映画デビューをされた塚本監督。近年の作品は”人を殺める恐ろしさ”がメッセージとして込められているのはなぜか伺いました。

塚本:「戦争映画でよく見るのは英雄を描いた…僕は苦手なんですけど。あとは被害者の目線で描く映画。もちろん素晴らしいと思ってます。戦争の恐ろしさが十分描けますんで。ただそれだけだと、戦争の本当の恐ろしさを描けたことになってないというふうに思ってまして。戦場に行くと殺されないようにするには殺さなきゃいけないんで、“殺す”っていうことがいかに恐ろしいかっていうことを描かないと、戦争というもの全体を描いたことにならないっていうふうに思っていて。(中略)自分は加害をしてしまう恐ろしさっていうのを何とかいい形で、ただむやみにやるっていうじゃない、何か一生懸命考えて良い形で描かないといけないかなというふうに思ってるんすけどね。」

「嫌な懐古主義に今があるよう」

塚本監督の映画『野火』は、戦場という異常な空間で極限状態に追い込まれた人間たちが描かれました。2015年に日本公開されましたが、この年には安全保障関連法が可決されました。それから8年。ロシアによるウクライナ侵攻や、イスラエル・パレスチナ情勢…。目を覆いたくなるような厳しい状況が続く現在の気持ちを教えて頂きました。

塚本:「日本そのものが戦争から遠のいたのかっていうとそういうこともなく。僕の印象ですけど、着実に近づいていくための計画が…今の政権が復活する前にたぶん設計図を作っていて、それを一つ一つ着実に熟してるっていうふうに思えるぐらい近づいてってるような気がしてしょうがないんですけど。(中略)今はガザですごいことが起こっていて。どっちがどう、歴史がどうってことはあるんですけど、今そこで子どもが血だらけになって死んでいることが良いか悪いかっていうと明らかに悪いわけなので。(中略)」

塚本:「最近の世の中の動向とか日本の動きとか見ていると、悪い意味のですけど…テレビを見ていても何か昔の映像を観ているような…。嫌な懐古主義に今があるような、不思議な気持ちがしてくる気がするんですけどね…。」

塚本監督の最新作『ほかげ』は、11月25日(土)より全国順次公開です。

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