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【京成杯AH】3連単93万馬券の波乱決着 “すべて嚙みあった”7歳牝馬ホウオウラスカーズが重賞初制覇

SPAIA

2025年京成杯AHレース回顧,ⒸSPAIA

最高の形だったホウオウラスカーズ

サマーマイルシリーズ最終戦の京成杯AHは13番人気ホウオウラスカーズが制し、重賞初制覇。2着はドロップオブライト、3着はコントラポストで決着した。

3連単93万馬券が飛び出し、秋の中山は初っ端からド派手な決着になった。その要因のひとつは例年と同じく野芝オンリーの高速馬場だろう。高速決着だった昨年同開催のクッション値10.2(24年4回開催2日目)と比べ、今年は9.6。前日の台風の影響が朝のうちは残っていたものの、高温と適度な風によって馬場は急速に乾いた。

秋の中山芝は良馬場ならまず外を回っては勝てない。いかに距離ロスなく立ち回れるか。そんな馬場バイアスが最内ホウオウラスカーズのイン強襲を可能にした。

また、レースの流れも波乱決着の要因だった。牝馬二冠で逃げを打ったエリカエクスプレスは陣営が控える競馬を示唆し、実際に3番手で折り合う姿勢をみせる。

翌日のセントウルSだと差し不発に終わると陣営が読んだドロップオブライトはマイルに矛先を向け、楽々2番手確保と目論見通りの先行策に出るなど先行勢はマイペース。アスコルティアーモの先導では速くならない。

前半800m46.1に対し、後半は45.2と速く、ラップも11.3-11.3-11.0-11.6で上がり600mは33.9。中山マイル戦としてはスローペースになった。野芝のみで行われる秋の中山はこのように上がりタイムが速いという特徴がある。前半が平均程度でも上がりは速く、パワーよりスピード優先。少し中山のイメージとは違う。

高速馬場のスローペースでは、作戦は2択。先行するか最内に突っ込んでいくか。道中は内で揉まれ、直線でも進路がなさそうにみえたホウオウラスカーズだが、最内のスペースを選択した。

中山で後ろから上がり33.1を叩き出し、さらに先頭でゴールするのは難しい。「これしかない」そんな競馬を実行した人馬の胆力を称えるしかない。

プラスに出た距離短縮

ホウオウラスカーズは7歳での重賞初制覇となった。牝馬の記録となると、1986年以降では10頭目。それも7歳牝馬の重賞初制覇は2007年福島牝馬Sのスプリングドリュー、22年アイビスSDのビリーバーに続く3頭目となる。

この春は京都開幕週にオープン入りを決め、高速決着に強いという適性をみせていたが、その後、大きな着順が続いては手を出せない。一方で、1800mを使われ続けたことがスローペースでいきた。

中距離だと折り合いに気をつかうらしく、距離短縮に加え、戸惑うほどのマイル特有のペースにならなかったため、気分よくレースに入れた。距離短縮での臨戦はスタミナがいきるという側面もあるが、それも前半のペース次第。泡を食うほど速ければ脚を溜められない。ホウオウラスカーズにとって絶妙なペース配分のレースだったといえる。

距離延長が当たったドロップオブライト

2着ドロップオブライトは逆に距離延長が当たった。福永祐一調教師の「セントウルSだと差し不発になる」という読みと、マイルならドロップオブライトでも前をとれるという策が当たった。

距離延長ローテは前をとりたいときにペースギャップを利用できる手段でもある。とはいえ、昨年3月以来のマイル戦は距離範囲ギリギリで、最後に甘くなったところをホウオウラスカーズにつかまった。もう少し平坦区間が長ければ、押し切れたのではないか。

3着コントラポストは当日乗り替わりというアクシデントに見舞われるも、好位に構え、ソツがない競馬を展開できた。母アカンサス(父フジキセキ)は現役時代オープン2勝を含む4勝をあげ、最後の勝利だったアイルランドT(当時はオープン特別)は東京芝2000mで1:58.7と速い時計にも対応した。

高速決着に強いフジキセキの血をコントラポストにも感じる。今回はペースが遅く、上がりが速すぎたが、もう少し流れる競馬での高速決着ならチャンスはある。

4着ダイシンヤマトもロスなく内を回ってきたが、コントラポストに内に押し込められ、末脚全開とはならなかった。中山4勝のコース巧者で、前走着順に関係なく、中山なら力を発揮する。今回は上位人気だったが、人気薄でも目を離せない。

1番人気エリカエクスプレスは11着。控えて折り合う形を模索したが、遅いペースでリズムを乱し、力んでしまった。現状はマイペースで気分よく走らせる方がいいかもしれない。


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 純白の奇跡』(ガイドワークス)に寄稿。

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記事:勝木淳

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