なぜ筋肉が減ると「老い」が加速するのか?脂肪燃焼から認知機能まで支えるメカニズムとは【DON’T DIE 100歳まで健康に生きるアルブミンの法則】
筋肉が減ると、体は連鎖的に弱っていく
タンパク質不足によって、体の中で最初に影響を受けやすいのが筋肉です。筋肉は、血糖値の調整や脂肪の燃焼、免疫や脳の働き、歩行力の維持など、全身の健康に深く関わっています。ここでは、筋肉が健康を支える4つの働きを紹介します。
【1】全身の健康を支える司令塔
近年の研究により、筋肉は体を動かすためだけの組織ではなく、全身の健康を調整する「内分泌臓器」のような役割を担っていることが明らかになっています。
筋肉が使われると、「マイオカイン(Myokine)」と呼ばれる物質が分泌され、血糖値の調整や脂肪の燃焼、免疫や脳の働きにまで影響を与えます。つまり、筋肉は全身の健康を支える“司令塔”のような役割を担っているのです。
マイオカインとは、筋肉から分泌されるホルモンやペプチドなどの生理活性物質の総称。ギリシャ語の「myo(筋肉)」と「kine(作動物質)」を組み合わせた言葉で、筋肉が動くことで分泌され、全身の臓器に影響を与えることがさまざまな研究から明らかになってきました。マイオカインには、筋肉への糖の取り込みを促して血糖値を安定させたり、脂肪の燃焼を助けたりする働きがあります。また、体内の炎症を抑え、血管や骨の健康を保ち、免疫機能を支える作用も報告され、さらに、脳機能や認知機能、精神的な健康にも関与していると考えられています。
【2】血糖値を安定させ血管を守る
血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の濃度のことを指します。食事で摂取した炭水化物は体内でブドウ糖に分解され、血液に入って全身のエネルギー源として利用されます。
健康な状態では、インスリンというホルモンの働きによって血糖値は一定の範囲に保たれています。しかし、食べすぎや運動不足などが続くと、血糖値が高い状態が慢性化し、血管に負担がかかりやすくなります。
筋肉は、血液中のブドウ糖を取り込み、貯蔵・消費する最大の器官です。筋肉量が増えると、ブドウ糖を受け入れる「受け皿」が増えるため、血液中に余分な糖が残りにくくなり、血糖値が安定。また、インスリンが効きやすくなり血糖値を下げる働きも高まります。反対に、筋肉量が減るとブドウ糖を処理できる量が減り、血糖値は上がりやすくなります。このように、筋肉量の維持・増加は、血糖値を安定させ、血管や内臓への負担を減らすために欠かせません。
【3】内臓脂肪の増加を防ぎ内臓の負担を減らす
お腹の中で内臓のまわりにつく内臓脂肪は、本来エネルギーの貯蔵庫として必要なものですが、増えすぎると糖尿病や高血圧、虚血性心疾患、脳血管障害など、さまざまな生活習慣病のリスクを高めます。
筋肉量が減ると基礎代謝が低下し、安静時に自然と消費されるエネルギーが少なくなるため、余ったエネルギーが内臓脂肪として蓄積されやすくなります。逆に、筋肉量を保ち、基礎代謝が高いと内臓脂肪は燃焼されやすくなり、内臓や血管への負担を軽減することができます。筋肉量を増やし、基礎代謝を維持・向上させることが、内臓脂肪の過剰な増加を防ぐことにもつながります。
【4】歩く力を守り、生活機能の低下を防ぐ
歩行能力が低下すると、歩くスピードが遅くなる、前かがみで歩くようになる、つまずきやすくなる、長い距離を歩けなくなるなどの変化が現れます。これらはすべて、加齢に伴い、下肢の筋肉量が減少しているサインでもあります。
筋肉が減ると歩くのが億劫になる→活動量が減る→さらに筋肉が減る→ますます動くのが億劫になる。この負のスパイラルが歩行能力低下の大きな原因です。もうひとつの要因がタンパク質などの栄養不足。筋肉はタンパク質を材料としてつくられるため、摂取量が不足すると、体は筋肉を分解してエネルギーとして使うようになります。その結果、筋力が低下し、歩く力が失われていきます。
このように、筋肉は、体を動かすための組織であると同時に、体の調子を整える役割も持っています。筋肉量の減少は全身の衰えを加速させてしまうのです。
【出典】『DON’T DIE 100歳まで健康に生きるアルブミンの法則』著:栗原毅/栗原丈徳