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ならまちの文具店で「うふふ」と和んでーー大仏や鹿モチーフのオリジナル商品に込められた、coto mono東岡店長の文具愛

SPICE

coto mono店内 撮影=ハヤシマコ

奈良市街地の南東部、歴史的な町並みがゆったりと流れるならまちに店を構える文具店「coto mono」。店内に揃うのは「こんなの買ったよ」と話題にできる面白いものや、「ちょっと人と違うものを持っている」と思わず自慢したくなる変わったもの、そして奈良らしいものたち。思わず「うふふ」と笑みがこぼれるオリジナルライン「ならうふふ文具」も展開し、アジア諸国でも人気となっている。今回は、SPICEで始まった文具大好き社員Sによるオススメコーナー「ユニーク編」でも紹介した、「大仏クリップ」を生み出した東岡智恵子店長にインタビュー。オリジナルラインのならうふふ文具を始めたキッカケや、人気アイテムの紹介、そして4月17日(水)から大阪南港ATCホールにて開催される『文具女子博in大阪2024』の魅力を社員Sとともに訊いた。

靴を脱いで上がる、隠れ家的文具店

coto monoが構えるならまちは、世界遺産である元興寺の旧境内を中心とする地域で、観光客がひっきりなしに訪れる人気のスポット。狭い路地に昔ながらの木造民家が立ち並び、付近にはカフェや雑貨店も増えている。

鹿と文房具のシルエットがあしらわれた可愛らしい看板を目印に、風情のある格子戸をくぐると、静かだけれど人の営みが感じられる空間が広がっていた。靴を脱いでお店に入ると、こぢんまりとしたあたたかみのある店内に、オリジナルライン「ならうふふ文具」をはじめ、東岡店長選りすぐりの「ちょっと面白い文房具」が所狭しと並ぶ。思わず「懐かしい!」と声を上げてしまう数々の文具やレトログッズ、「こんなの初めて見た!」と胸を踊らせる外国製のペンなど、まるで宝物を探すように文具に出会うことができる場所だ。

東岡店長は大和郡山市出身、奈良市在住。ファンシー文具メーカーなどでデザイナーとして約10年勤務し、そのノウハウを活かして2016年4月にcoto monoをオープンした。「まち」と「ひと」が繋がって奈良の新しい魅力に触れる、奈良ひとまち大学の一員でもあり、クリエイター5人で奈良の良さを広めるユニット、小鹿企画を発足させるなど、奈良の魅力を発信するために尽力している。そんな東岡店長は、どんな想いでならうふふ文具を作ったのだろうか。

「楽しいコト、楽しいモノ、奈良から」に込めた想い

ーー東岡さんは、昔から文具がお好きだったのですか?

子どもの頃は文具店に1〜2時間ずっといて、お小遣いの中で買えるものを必死に探して、鉛筆1本と消しゴム1個を選ぶのがすごく好きでした。他にも当時は文通もしていたのでレターセットも集めていました。全部は使いきらずに、1枚ずつ残しておいたりしましたね。

ーー(社員S)わかります! うちにも最後の1セットが大量にあります。

そうなんです。最初は文具を仕事にしようとは全然考えていなかったので、プログラマーとして働いていました。その時も「確認をお願いします」とつけるメモなど、文具は会社の備品ではなく可愛いものを使っていました。毎日の仕事の中で「今日は新しいペンがあるから」「可愛いメモがあるから」と明るい気持ちになって頑張れるし、文具のおかげでコミュニケーションが図りやすくなりますよね。本当に文具にはずっと助けられています。

ーー素敵なお話ですね。いつから文具のデザインをされたのですか?

プログラミングの仕事を辞めて、絵を描くことが好きだったので専門学校に入り直したのがキッカケです。それから大阪の子ども向け文具メーカーやキャラクターグッズを作る会社でキャラクターデザイナーとして働き、商品をどうやって作るのかを学ぶことができました。数年そこでお世話になってましたが、奈良に帰りたい、何かのお店をやりたいと思い始めて。転職した時と同じように、自分は何が好きなのかを考え直したところ「文具が好き」というところに立ち戻ったので、2016年に文具店coto monoを立ち上げました。

ーーなぜお店の場所にならまちを選ばれたのですか。

私が子どもの頃、ならまちは普通の住宅街だったんです。知らない間に雑貨屋さんや可愛いカフェが増えて、町の雰囲気も変化していて、ここが良いなと。

ーーお店のテーマに「楽しいコト、楽しいモノ、奈良から」を掲げられた理由は?

文具は、誰にとっても身近なものだと思うんですよね。奈良は観光で来られるお客さんも多いので、手元にあるもので奈良を感じてもらいたい。私が文具に助けられたように、日常使うもので少し気持ちが上がったり、コミュニケーションに役立ったりするものに出会ってもらいたいと思い、このテーマにしました。2017年からは前職での経験を活かして同じテーマのもと、オリジナル文具ならうふふ文具も作り始めました。

ーーブランド名の由来は?

持っているとちょっと人に自慢できて、思わず「うふふ」と笑ったり、話題が盛り上がったりする、楽しいものがいいかなと思って。あと私、絵本みたいな絵を描くのは大好きなんですけど、振り切れなくて。それを笑いで誤魔化しているところがあって、ネタで買ってもらえたらいいかなと思っています。

大仏様のおかげで、ヒット作に

ーー最初に作られたオリジナル商品はどちらですか?

「ころころ鹿のマスキングテープ(全て税込495円、2024年4月時点)」です。子どもの頃、奈良公園で売っていたビニール鹿のお土産がすごく欲しかったけど、買ってもらえなかったんですよ。でも今、自分で買うかと言ったら買わなくて(笑)。どうしたら手元に置いてもらえるかなと思って、ビニール鹿を製造している会社さんに連絡したら「絵を描いてもいいよ」と言ってくださったのが最初ですね。

ころころ鹿のマスキングテープ

ーーお客さんからはどんな反響がありましたか?

ビニール鹿を知っている人は「あれを持ってた!」と言ってくださって、商品を見て奈良を思い出してくれる人もいらっしゃって、作って良かったなと思いました。

ーー「おばちゃんとの攻防ポストカード(165円)」も面白いですね。

売り場のカートに乗ってる間は、鹿は鹿せんべいを奪いには来ないんですけど、買った瞬間に寄って来るんです。実はおばちゃんが裏で操ってるんじゃないかという妄想から生まれたアイテムです(笑)。商品名も、ちょっと見たら笑えるような名前をつけるよう心がけています。

ーー(社員S)私、大仏シリーズを愛用しています。

ありがとうございます。シリーズで最初に作ったのは「大仏クリップ(605円)」ですね。研究と勉強のために展示会に行った時、ある会社に「クリップの真ん中に名入れ印刷ができますよ」と言われて。普通はそこに企業名や電話番号を入れて、販促のために売ったり配ったりするんです。パッと見てクリップの形が大仏っぽいなと思ったので、顔のデータを送って印刷してもらいました。印刷会社の方はビックリされたと思います(笑)。

リアル大仏クリップ

ーー元々のクリップの形を活かしているのですね。そしてヒット商品になったと。

そうなんです。先に出たのはシルバーで、今は「リアル大仏クリップ(880円)」の方がよく売れていますね企業さんや知人から「こういうことができるよ」というお話を伺って、「どんな商品が作れるかな」と逆算で考えることもあります。「大仏ブックカバー(文庫サイズ)(1870円)」や「大仏ペンケース(2200円)」も、オーロラの箔がすごく綺麗に出ることを知って、「これで大仏を箔押ししたら絶対良いだろうな」とひらめいて作りました。『文具女子博』などのイベントに行って、他の方が作っているものを見て参考にすることもありますね。

大仏ブックカバー

ーー(社員S)大仏ペンケースを使っていて、ブックカバーも気になっているのですが、デザインも色も完璧です!

大仏様といえば青銅なので、緑色にもこだわっています。大仏シリーズは海外でも人気で、台湾や香港は個人で注文してくださる方がいたり、今は台湾のお店でも販売してもらったりしています。

通常販売の「よくしゃべる大仏様の付箋」と『文具女子博』限定「大仏のし袋 中」

ーー「フエキ大仏(660円)」はコラボ商品になるのでしょうか。

フエキ糊さんに作ってもらって、体の部分の絵を私が描きました。(4月17日(水)からの)『文具女子博in大阪​2024』では「大仏のし袋 中(506円)」も限定で出品します。赤ver.は横浜で開催された『文具女子博2023』で販売したんですけど、大阪には白ver.を持って行きます。メタリックグリーンの箔押しが綺麗なので、ぜひ手に取ってみてください。​

ーーご自分の中でお気に入りのアイテムはありますか?

最近気に入ってるのは「ちまちま奈良シール(638円)」です。私、シールがすごく好きなんです。明日香村の亀石が好きで、シールが欲しいなと思って。でも全部亀石だと売れないから、鹿や聖徳太子、金魚、かき氷といった奈良の可愛いモチーフも入れています。

大仏シリーズとちまちま奈良シール

ーーシールのように、ご自分が欲しいアイテムも作られているのですか?

「流行ってるから」という理由よりも、基本的には自分が欲しいと思うかどうかを大事にしています。でも完全に1人でやっているので誰も止めてくれないし、私は面白いと思っていてもウケるのかな、大仏関係は「バチが当たらないかな」と新作を出す時はビクビクしています。

ーーどのぐらいのスパンで新作を作っているのですか?

ゴールデンウィークと『正倉院展』の時期がお店のピークなので、それに合わせて作ろうとは思っていますが、私の気分でちょっとズレたりもします(笑)。春と秋に5アイテムずつ、年間で10アイテムぐらいのペースが理想ですね。ちょうど4月の新商品ができたところなんです。今回は「こんなスーパーがあったら面白いな」というので、鹿のスーパー「ニコニコシカマート」をモチーフにしました。「広告の鹿」シールとか「どこに貼るんやろ(笑)」と思いながらも、そういうネタを考えて作るのが楽しいです。

ニコニコシカマート

ーー企画からどのぐらいの期間で完成するのですか?

会社で商品を作る時は、3〜4か月前から企画をスタートするんですけど、「ニコニコシカマートシリーズ」は3月に入ってから作ったので、ギリギリでした(笑)。もちろん『文具女子博in大阪2024』にも持って行きます。

来場者とコミュニケーションが取れる『文具女子博』

ーー先ほどからお話に出てくる『文具女子博』には、いつごろから参加されているのですか?

2018年から、東京や大阪での開催では毎年お世話になっています。うちの店はどちらかというと色んなものの中から「面白いものを探す」お店なんですけど、『文具女子博』は人も多いし、見るものがいっぱいあるので、そういう置き方をしたら通り過ぎてしまう。ちゃんと目に入るように陳列するのは難しいですが、色の面積をまとめるなどして、目に止めてもらえるように心がけています。

ーーこれまで『文具女子博』に参加されてみての感想は?

最初は「奈良の文具がある」みたいな感じで珍しがられていましたが、最近は「お店に行ったことがあります」と言ってくださる方も増えました。文具を通して奈良に来てもらえたのがすごく嬉しかったですし、実際に文具をどんなふうに使っているか教えてもらったこともあります。例えば大仏クリップをカバンにつけてらっしゃる方がいて。ガバッと開くタイプのトートバッグをクリップで止めてあって「こんな使い方があるんだな」と。他にも「会社で使っていて、ちょっと腹が立つことがあってもクリップを見て心を落ち着けてます」みたいなお話を聞くと、本当に嬉しいですね。

ーー『文具女子博』がキッカケで来店される方もいらっしゃるのですね。

イベントもそうですし、近くの人は「1回来て、面白かったから友達を連れてきました」と再来される方が多いです。観光のお客さんはガイドブックを見て来てくださいます。自分が好きなものを集めた店なので、自分の家に遊びに来てもらうみたいな感覚でお越しいただけたらと思います。

ーーお店としての展望や、東岡さんご自身のビジョンはありますか?

今年8年目で、10年目が見えてきたので、もう少し大仏と鹿以外のアイテムもやりたいですね。あとはもう少し絵の力がある商品を作りたいなと考えています。それこそ『文具女子博』では作家さんも出店されていて、作家さんのテイストでブースが埋まっているのがいつも羨ましくて。私もコンセプトとして、1人で作っていると思われないように商品によって絵のテイストを変えていて、それが強みだとも思うんです。でもいつか絵本みたいな絵も描いて、今は恥ずかしくても、いつか堂々と「イラストレーターです」「デザイナーです」と名乗れるようになりたいですね。

取材中もcoto monoには絶えずお客さんが訪れ、それぞれの琴線に触れたアイテムを嬉しそうに購入して帰る姿が見られた。『文具女子博in大阪2024』でも、東岡店長の遊び心あふれる文具たちに会いに来て欲しい。

取材・文=久保田瑛理 撮影=ハヤシマコ

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