キュンキュンすること間違いなし ブロードウェイ・ミュージカル『プリティ・ウーマン』日本初演が開幕
2024年9月11日(水)新国立劇場 オペラパレスにて、立飛グループ創立100周年記念事業PRESENTS ブロードウェイ・ミュージカル『プリティ・ウーマン』が開幕した。
本作は、ロサンゼルスを舞台に、敏腕ビジネスマンと無邪気なコールガールが織り成す恋物語である『プリティ・ウーマン』のミュージカル版。スタッフ陣は、日本でも人気を誇り、グラミー賞受賞者のシンガーソングライター、ブライアン・アダムスが長年自曲を共に作ってきたジム・ヴァランスと共同で作詞・作曲、演出と振付はトニー賞を2度受賞し、ミュージカル『キンキー・ブーツ』の演出と振付でも名高いジェリー・ミッチェルが担当するなど、豪華なクリエイターたちが集結。2018年にシカゴで初演され、その後ニューヨーク・ブロードウェイとロンドン・ウエストエンド、そしてアメリカ全55ヶ所でツアーを行ってきたカンパニーによるハッピーミュージカルの幕開けだ。
【STORY】
舞台は1980年代、ロサンゼルス。ニューヨークから出張中の敏腕実業家エドワードは、ひょんなことからコールガールのヴィヴィアンとハリウッドの街角で出会い、彼女と一夜を共にする。離婚歴あり、恋人とも別れたばかりのエドワードは金銭が行動原理の主軸にある男。大きな企業買収を前にビジネス・ディナーに同伴する女性が必要となり、ヴィヴィアンと一週間の契約を結ぶ。だが、男性に金で買われる生活に自尊心をすり減らしてはいるものの、知性の片鱗と無邪気で屈託のない魅力を見せるヴィヴィアンに、エドワードは次第に心ひかれる。ヴィヴィアンも、紳士的で自分の知らない世界を教えてくれるエドワードに心を寄せていき——。二人の恋の行方は?
この度、オフィシャル観劇レポートが公開された。
観劇レポート
リチャード・ギアとジュリア・ロバーツの映画(1900年)があまりにも有名過ぎて、ミュージカル化を聞いた時は、本家のイメージを超えるのは大変だろうな、なんて心配しました。だけどそんなの杞憂でしたね。実際に観劇したら、ナマの舞台ならではの演出、工夫に満ちていて超楽しい!演出を手掛けたジェリー・ミッチェル氏(『キンキーブーツ』『ヘアスプレー』など)、さすがだな! と脱帽しました。
舞台は1980年代のロサンゼルス。敏腕実業家エドワードは街角で営業していたコールガールのヴィヴィアンと出会い一夜を共に。企業買収に明け暮れるエドワードはビジネスを成功させるために、ヴィヴィアンと1週間の契約を結ぶ。お金も地位も十二分に手に入れたけど満たされない孤独な男。無邪気で自由に見えて、夢を見ながらも貧しさゆえに体を売るしか生きる道のない女。どこか欠けている二人、いつしか恋に変わっていくが……。
冒頭は〈Welcome to Hollywood〉とビッグナンバーで幕を開け、進行役のような存在“ハッピーマン”が登場人物を紹介。裕福なセレブ層から娼婦まで、この街の多面性を見せる。椰子の木のモチーフや、カラフルで奔放な空気感が西海岸らしさを醸し出すのがたまらない!最初はお金持ちに出会えて、高級ホテルのペントハウスで盛り上がるヴィヴィアンだが、ロデオ・ドライブの店に一人で買い物に行き拒絶されたりと傷つくことも。そんな彼女にエドワードはどんどん惹かれていく。
圧巻は二人がオペラ『椿姫』を観に行くシーンだ。ブライアン・アダムスによるポップス系音楽と『椿姫』のアリアが見事に重なり合う、その迫力たるや!鳥肌が立った。映画でも二人が『椿姫』を観るシーンは象徴的だが、それを超える舞台ならではのスリルを生み出している。(ちなみに映画では最後のクライマックスのBGMに再び『椿姫』のアリアが使われる。そのくらい肝のシーン、演出のミッチェルは相当力を入れたに違いない)。
ヴィヴィアン役のエリー・ベイカーは美しく溌剌とした雰囲気と華麗な歌声、繊細な演技で魅了する。エドワード役のチェイス・ウルフはイケおじそのもの!成長し変化するエドワードを見事に描く。また、ヴィヴィアンの親友キットや顧問弁護士のフィリップなど周りの人々が魅力的。前述のハッピー・マンは、ホテルの支配人役も務め、ヴィヴィアンにダンスを教えるなどのサポートをし、人としてどうあるべきかを教えてくれる。
思いがけない出会いから、人生が変わることもある。王道のシンデレラストーリーだがスウィート&ビター。人生の苦味も存分に味わえて、ミュージカルの醍醐味も十分。キュンキュンすること間違いなしだ。
文:三浦真紀 photo:Jun Wajda
なお、本公演は9月16日(月)まで新国立劇場 オペラパレスにて上演。その後、立川、大阪でも行われる。