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1960年代チェコスロバキアの民主化運動「プラハの春」の渦中にいた気骨のジャーナリストたちを描いた映画『プラハの春 不屈のラジオ報道』が問う〈人としての選択〉

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1960年代チェコスロバキアの民主化運動「プラハの春」の渦中にいた気骨のジャーナリストたちを描いた映画『プラハの春 不屈のラジオ報道』が問う〈人としての選択〉

 チェコ&スロバキア製作の『プラハの春 不屈のラジオ報道』が、12月12日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開となる。

 
 1967年~68年、フランスの五月革命やベトナム戦争に対する反戦運動など世界中で学生運動が活発化していた。ソ連の共産主義支配下にあったチェコスロバキアでも、若者たちが民主化運動を起こし、その機運は国中に拡がり、検閲の廃止や言論の自由が認められ「プラハの春」が訪れたと国民は希望をもった。ところがソ連は、ワルシャワ条約機構軍を率いてチェコスロバキアに侵攻し、軍事力で民主化運動を鎮圧したのである。そのうえソ連軍は当時の最大報道機関であるラジオ局を制圧し、「ソ連がチェコスロバキア国民を救出に来た」と嘘の放送を流そうとする。当時の国営ラジオ国際報道部の記者たちは、その権力に抗い、回線技術を駆使して、ラジオ局の外から真実の報道を続け、市民を励まし続けたのである。

 
 実話に基づいた本作は、まだ39歳と若い、イジー・マードル監督が、脚本も担当。世界中の映画賞で37ノミネート20冠に輝いた。またチェコでは年間動員、興行成績とも1位という大ヒット作である。

 本作がヒットしたのは、「プラハの春」といった半世紀前の歴史を知らない鑑賞者をも魅了したからだろう。それには、本作の主役のトマーシュが、命がけで弟のパーヤを守ろうとする兄弟愛と、上からの命令に背けない葛藤に悩む姿に〝一市民〟として共感できるからだろう。

 トマーシュは、早くに亡くなった両親の親代わりとなって学生運動にのめり込む弟の世話を焼く賢明な兄だったが、パーヤも他の学生たちと一緒にデモに繰り出す。国営ラジオ局の中央通信局で働いていたが、上司の命令で報道部に異動になるトマーシュ。それは、学生運動に参加している弟を見逃す代わりに、報道部と政府の検閲に抵抗し、自由な活動をしている報道部長のヴァイナーを監視し、国家保安部に協力させるためだったのである。

 
 放送を止めようと、戦車がラジオ局を取り囲み、武器を持たない市民たちがラジオ局を守ろうとする。トマーシュは弟を案じ、政府の謀略に加担することになる命令に良心の呵責に葛藤する。「困難な時代に、大切な人をどう守るか」―トマーシュの行動に目が釘付けになることだろう。

 
 現在、チェコスロバキアという国はない。1993年1月1日、チェコ共和国とスロバキア共和国に分離、解体された。プラハは、チェコ共和国の最大の都市で、街の中心にはモルダウ川が流れ、世界で唯一、全市が世界遺産に登録されている貴重な街である。

 〝プラハの春〟から約半世紀を過ぎた今、再びロシアによるウクライナ侵攻が続いている。ウクライナの分断の危機を前に、混迷する現在の社会情勢に一矢報いることになるのだろうか。

プラハの春 不屈のラジオ報道
12月12日(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開
© Dawson films, Wandal production, Český rozhlas, Česká televize, RTVS – Rozhlas a televizia Slovenska, Barrandov Studio, innogy
配給:アット エンタテインメント

監督・脚本:イジー・マードル
出演:ヴォイチェフ・ヴォドホツキー、スタニスラフ・マイエル、タチアナ・パウホーフォヴァー、オンドレイ・ストゥプカ
2024年/チェコ、スロバキア/チェコ語/131分/カラー/シネスコサイズ/原題:Vlny(英題:Waves)/PG-12
後援:駐日チェコ共和国大使館、チェコセンター東京

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