山梨県立文学館開館35周年の特設展は「文学はおいしい」。芥川龍之介、太宰治、林真理子ら〝おいしい原稿〟の数々が展示される
24年の短い生涯に「たけくらべ」「にごりえ」など近代文学史に残る名作を著した樋口一葉の両親は現在の山梨県甲州市塩山の出身で、「ゆく雲」など山梨を舞台にした小説にゆかりがある。また、太宰治は、御坂(みさか)峠の天下茶屋や甲府の湯村温泉での執筆、甲府市御崎町での新婚生活を送るなど山梨県に縁があった。山梨県立文学館はこれまで芥川龍之介、井伏鱒二、宇野千代、高浜虚子、金子兜太など山梨県出身やゆかりの文学者の資料を調査・研究し、文学に関する知識教養を深め、文化の発展に寄与することを目的とし、数々の企画展を開催してきた。今年は1989年(平成元)11月3日の開館から35周年を迎える。
常設展示室
山梨県立文学館では、7月13日(土)~8月25日(日)の期間、開館35周年記念 特設展「文学はおいしい」を開催する。芥川龍之介が夢中になった甲州葡萄、スープ皿に映った富士山を詩にした田中冬二、飯田龍太が贈った甲州の山女魚を絵にした井伏鱒二……などが登場する。
さらに、芥川⿓之介「芋粥」草稿、太宰治「斜陽」草稿、⽯井柏亭「葡萄之図」、与謝野晶⼦賛「葡萄より甲斐の⼭⾒るむらさきの岩の洞にて海を⾒るごと」軸装、飯⽥⿓太「梅漬けの種が真⾚ぞ甲斐の冬」額装、熊王徳平「甲州に⽣きる」⾐⾷住原稿、林真理⼦「葡萄が⽬にしみる」原稿、深沢七郎今川焼「夢屋」ポスター(横尾忠則画)、焼きだんごや「夢屋」包装紙、宮沢賢治『注⽂の多い料理店』1924(⼤正13)年、宮沢賢治 保阪嘉内宛書簡1918(⼤正7)年5⽉19⽇〈寄託資料〉なども展示される。
芥川龍之介の山本喜誉司(きよし)宛書簡(末尾部分) 個人蔵 1910(明治43)年10月14日(推定)
第一高等学校1年の秋、山梨で行われた行軍演習を終えた後、友人の山本へ宛てた手紙。山本は府立第三中学校時代の親友で、後に芥川が結婚する塚本文の叔父。手紙では演習中の様子を伝えた後、追伸には「甲州葡萄の食ひあきを致し候あの濃き紫に白き粉のふける色と甘き甘き汁の滴りとは僕をして大に甲斐を愛せしめ候」と甲州葡萄に魅了された様子を記している。
田中冬二「富士ビューホテルにて」書〈寄託資料〉
河口湖畔の富士ビューホテルでの朝の食卓の場面をよんだ詩。詩集『葡萄の女』(1966年昭森社)に所収。後日、富士ビューホテル敷地の河口湖畔に文学碑が建てられた。
山梨県立文学館開館35周年記念 特設展「文学はおいしい」
会期:2024年7月13日(土)~8月25日(日)
会場:山梨県立文学館 (山梨県甲府市貢川1-5-35 TEL.055-235-8080)
開館時間:9:00~17:00(入室は16:30まで)
休館日:月曜日(7月15日、8月12日は開館)、7月16日(火)
公式サイト:https://www.bungakukan.pref.yamanashi.jp/