ウェーダー装着に潜む意外なリスクとは? 実際に体験した生死に関わるトラブル4選
私は渓流釣りや磯釣りなどでウェーダーを履くことが多いです。濡れずに水辺へ立ち込める便利なアイテムですが、同時にリスクも伴います。今回は、私が実際に経験したウェーダーに関するトラブルをご紹介します。拙い失敗談ではありますが、何か参考になることがあれば幸いです。
鋭利な笹茎を踏み抜く
若かりし頃、早春の長良川支流へシラメとアマゴを釣りに出かけた際の出来事です。フェルト底のウエストウェーダーを履き、残雪の林道を上りながら渓流への下降点を探していました。熊笹の藪を通過しようとしたとき、淡雪に隠れていた鋭利な笹茎に足を踏み抜いてしまいました。鋭い痛みに狩猟用の罠にでもかかったのかと、錯覚したのを今でも覚えています。
反省と感想
フェルト底の柔らかさとゴム底の薄さが思い知らされ、足裏の痛みと冷たい雪水に耐えながら釣りを続ける苦い経験となりました。水中では快適なフェルト底も、陸上では脆弱であることを実感し、渓流釣りの厳しさを改めて認識した一幕です。
波に流されそうになる
春の三浦半島で海タナゴ釣りを楽しんでいたときのこと。防寒対策として5mm厚の両面ジャージ仕様のフェルトスパイク付きチェストハイウェーダーを着用していました。ゴム冷えの心配もなく快適に釣り歩いていたのですが、渡渉の際に思わぬ事態に見舞われました。
浮力のある素材のウェーダーが波に煽られ、足元をすくわれそうになったのです。波の力に翻弄されながらも何とか踏みとどまりましたが、杖代わりにした竿が傷つき、焦って這い上がる際には岩場の貝殻で膝上に深い切り傷を負い、水漏れまで発生しました。
反省と感想
海での渡渉は、潮の干満や風向き、波の状況を十分に観察し、無理をしないことが肝要です。出来れば単独釣行は避けましょう。また、水圧がかかって浮きにくいゴムやナイロンウェーダーを選択し、保温性はドライタイツなどを組み合わせて確保する方が安全だと思います。渡渉の際は、杖としても使えるチャランボの携行を強く勧めます。
深い淵に引き込まれ……
初夏に鳥取・氷ノ山の沢で岩魚釣りに出かけた際、メーカー試作のフィールドテスト用チェストハイウェーダーを着用していました。サイズが少し大きめでしたが、蒸れも少なく快適に遡行を続けていました。
しかし、30分ほど進んだ先に現れた小滝を安易に渡ろうとした結果、足を滑らせて深い淵にはまってしまいました。足がつかない状況で、脇から勢いよく流れ込む水がウェーダー内に入り、淵の底へ引き込まれて行きます。死の恐怖が頭をよぎりながら、肩ベルトを外し、岩にしがみついて何とか這い上がることができました。竿や餌箱は流されてしまいました。竿は淵で止まっていましが、餌は流されてしまいました。
反省と感想
この経験以降、静かに立ち込む釣り以外ではチェストハイウェーダーを使わなくなりました。特に深場や流れの強い渓流では、ウェーダーが命取りになりかねません。また、単独釣行の危険性を再認識した釣行でもありました。
雪で転倒し六針縫う怪我
早春、長野・阿智川へアマゴ釣りに出かけたときのこと。最終集落に車を停め、淡雪に覆われた川原を拾い釣りしながら遡行していました。
数匹のアマゴを釣り上げた後、大きめの玉石に飛び移ろうとした瞬間、フェルト底が凍りついていたせいで滑り落ちてしまいました。右手に持っていた竿だけは離さなかったものの、左手をつく余裕もなく顔から雪の上へダイブ。
額に強い衝撃を受け、飛び散る鮮血が目に入りました。痛む傷口をタオルで押さえ、そのまま数分倒れ込んでいると、やがて出血は治まりました。
この日は仲間3人での釣行でしたが、待ち合わせ時間まではそれぞれ単独行動。携帯電話のない時代で助けを呼ぶ手段もなく、傷の状況を確認する鏡すら持っていませんでした。ようやく車に戻り、ミラーを覗くと、額にはつぶれたような傷口。雪の中、もし脳しんとうでも起こしていたら……と考えると、背筋が寒くなりました。その後、飯田の病院で六針縫うことに。
待ち合わせの時間を大幅に過ぎて、友の待つ支流に着いたのは夕暮れ。昼神温泉の湯船で顔を洗えなかった苦い思い出です。
反省と感想
防寒対策に気を取られ、ヘルメットを着用していなかったことを猛省しました。雪の下に潜む危険を軽視していたことも反省点です。
<中山祐司/TSURINEWSライター>