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「元商社マンCEO」 辰巳 衛さんが双日を辞めて起業した理由とは?

さくマガ

さくマガ

辰巳 衛(たつみ まもる)さん
1992年生まれ。株式会社Leretto(リリット)代表取締役社長。2015年、新卒で双日株式会社に入社後、2018年に秋山祐太朗さんと共同でLerettoを創業。2017年には米国公認会計士(USCPA)試験に合格。
Twitter:@maamorun
各業界の著名人にインタビューをして仕事のヒントを得ようという、この企画。今回は株式会社Lerettoの共同創業者で代表取締役社長の辰巳衛さんにお話をうかがいました。元商社マンCEO、辰巳さんが語る将来のビジョンとは?

商社マンから25歳で起業

ーー本日はよろしくお願いします。まずはじめに、辰巳さんの自己紹介と現在のお仕事(事業内容)について教えてください。
よろしくお願いします。株式会社Lerettoの代表をつとめている辰巳と申します。前職は双日株式会社に3年ほど勤めて、25歳で起業しました。現在、創業から3期目です。事業内容としてはMEO対策サービスと、Canly(カンリー)というクラウドサービスを運営しています。MEO対策サービスは30店舗未満の少数店舗向けのグーグルマップの運用代行サービス。Canly(カンリー)は30店舗以上の店舗向けにGoogleマイビジネスおよびSNSを一元管理できるシステムです。
ーーそのCanlyを利用している企業はどのような業態が多いのでしょうか。
あらゆる業態で利用していただいています。すべてを挙げるとキリがありませんが、具体的に例を挙げると、飲食店やドラックストア、カラオケ店、物流会社、ホームセンターなどです。店舗や拠点を持っている企業にご利用いただければと思っています。
企業がGoogleマイビジネスやSNSを使って集客を試みようとするときって、外注することが多いんですね。ただ、そうすると1店舗当たり月額数万円のコストがかかるので、ランニングコストが高くなってしまいます。それを内製化しようと思っても、なかなかノウハウがない企業が多いんです。
そうした状況ですから、多店舗を運営している企業向けに、GoogleマイビジネスやSNSに関する業務を内製化できるシステムがあれば、非常に安価でノウハウも手に入ります。そこにビジネスチャンスを見つけて参入しました。

自分の人生に自分で責任を持ちたい

ーー25歳で起業をして株式会社Leretto(リリット)を創業されましたが、起業をしようと思った理由・きっかけについて教えてください。
なぜ経営者を目指そうと思ったか、なぜ起業に踏み切ったか、2つの理由にわけてお話します。
なぜ経営者を目指そうと思ったか。起業したいと思ったきっかけは、高校生のときに起きたとある経験です。
自分の人生に自分で責任を持ちたい、コントロールしたいと思いました。それで自分の努力と自分の人生が一致する場所ってなんだろう?
と考えたときに、経営者じゃないかなと思ったんです。
そう考えて、理系の経営者を育てる、早稲田大学の理工学部経営システム工学科に入りました。
大学に入ってからはインターンシップとかありとあらゆることに手を出しましたね。起業も考えていました。ですが、石の上にも3年ではないですけれど、まだまだ自分は未熟だなと思い、修行しようと思ったんです。
いろいろな会社を調べた結果、商社に入りました。商社は広くビジネススキルが学べるので、良いと思ったんです。
続いて、なぜ起業に踏み切ったかについてお話します。商社に入ってから2年間、共同代表の秋山とルームシェアをしていました。秋山とはお互い強みが違うし、2人でやれば成功できると思ったんですね。秋山に「一緒にやろうぜ!」と誘われて、起業を決めました。

双日で学んだこと

ーー辰巳さんは双日出身ということですが、さくらインターネットの筆頭株主が双日で、社内にも双日出身者がおります。起業するうえで学びになったことがあれば教えてください。
本当に学びしかないです。双日では2部門を経験しました。1つがコーポレート部門というリスクマネジメント系の部署。もう1つが営業ですね。具体的には空港に投資をする営業部署でした。
最初のリスクマネジメント系の部署でいうと、財務や法務の知識を得られたことが経験として良かったと思っています。契約書はどう見るのか、財務3表はどう見るのか、といったところが大変参考になりました。
営業部門でいうと、具体的にどうやってお客さんと折衝していくのかですね。例えば、どうやって契約交渉していくのか、どうやって接待していくのか、などです。
あとは社内稟議を上げないといけないので、どうやって上の人を説得するのか、しっかりとロジックを詰めていくわけですよね。こうした知識は起業してからもすごく活きました。
最近、大企業とやりとりすることがすごく多いので、決裁フローがわかっていれば、それに対して一緒に稟議書を作りましょうという話もできます。契約書もどういうところをチェックされるのか、全てわかるので、そういったところは本当にダイレクトに活きています。
ーーやはり、大企業になると接待も多いんですね。社名を「Leretto(リリット)」にした由来について教えてください。
社名は造語です。もともと、創業時のサービスが宴会幹事代行サービスでした。「Leave it to me」「Leave it to
you」という英熟語があるんですけど、「わたしにこれを任せろ」「あなたにこれを任せた」という意味なんですね。
It をReservation(予約)に変えると、「Leave reservation to me(予約はわたしに任せろ)」「Leave
reservation to you(予約はあなたに任せます)」になります。こうした双方向の意味を込めて 「Leave reservation to
~」の頭文字をとるとLerettoになるんです。

(社名を「Leretto」にした由来)

背水の陣に自分を追い込む

ーー意外な社名の由来でした。辰巳さんは働きながら、米国公認会計士(USCPA)の試験に合格されていますが、相当大変だったと思います。目標達成のために必要なことは何だと思うか教えてください。
本当、大変でした(笑)。目標達成のために必要なことは2つあると思います。1つ目が自分の原動力、モチベーションをしっかり把握すること。2つ目が仕組みで解決することです。
1つ目ですが、もともと起業したかったので、USCPAを取得すれば、幅広いノウハウが身につけられるし、信頼にもつながると思ったんです。「起業」から逆算したときに、これが必要でした。「
自分が将来やりたいことと紐付ける」ことがすごく重要だと思います。まさにモチベーションですね。叶えたい目標があるから、頑張れます。
2つ目ですが、モチベーションを持ってやっていても、途中でモチベーションも切れちゃうと思うんです。そこは仕組みで解決しようということで、
僕の場合は100万円借金しました。
塾に通ったりで結構お金がかかるんですよ。「受からないと借金した意味がないだろう」という状況を作って、あえて背水の陣にしました。背水の陣に自分を追い込むのはポイントかもしれないですね。
別に借金はしなくてもいいと思うんですけど、例えば何かをやるときにTwitterで宣言するとか。そうするとやらざるを得なくなりますから。自分を窮地に追い込むことは重要だと思います。
ーー借金までしたってすごいエピソードですね。試験に合格するまで、トータル何時間くらい勉強しましたか?
正確な時間は覚えてないんですけど、平日は3-4時間くらい、休日は14時間くらい勉強していました。それを1年ちょっと繰り返してましたね。めっちゃきつかったです。
ーーそれを働きながらするって本当すごいです。米国公認会計士(USCPA)の資格を取得してから、共同代表者の秋山さんと起業するわけですが、お二人それぞれの会社での役割を教えてください。
まだ起業して初期段階というか、3年目の会社なので、お互いがしっかりと全部見ることが大前提です。その中で、私は前職でのM&A経験やUSCPAを保有しているバックグラウンドがありますので、主に財務や法務などの組織設計的なところをやっています。
秋山は営業が強いので、営業部分については秋山に任せています。
とはいえ、僕も営業をしますし、秋山が契約書を見たりもするので、お互い全般的に仕事をしていますね。

ミッション・バリューをどう決めたか?

ーー会社のミッション(次世代のインフラを創る)、バリュー(お客様の理想から入れ・まずやってみろ・圧倒的当事者意識・利他主義でいこう・正直であれ)をこれらの内容にした理由を教えてください。
ミッション、バリューは重要なものだと思っています。当社の投資家にユーザーベース代表の稲垣裕介さんが入ってくれているんです。その稲垣さんが「文化を作るためにミッション、バリューは非常に重要。組織が拡大したときに、ひとつの憲法みたいものがないとみんな違うことをして、組織の文化としてバラバラになっちゃうよ」という話をしてくれました。
それもあり、起業して早い段階でミッション、バリューを設定したんです。
ミッションを「次世代のインフラを創る」にした理由について話をします。私がもともと商社で空港ビジネスをやっていて、共同代表の秋山は銀行や中古建機のECサイトを運営している会社で働いていて、お互いがインフラに携わっていたんですね。そこで、インフラは必要不可欠なものだと知っているわけです。
ふたりとも、インフラがあることによって、周辺の人たちが幸せになっている姿を見てきています。今まで携わってきた人から必要とされる、
インフラ的なサービス創ろうよということで、ミッションの中に「インフラ」を入れたかったんです。
次世代
」というのは、新しいテクノロジーがIT業界には必要です。人から必要不可欠なサービスを作り続けようという意味で、「次世代のインフラを創る」というミッションにしました。
現在、サービス提供をしているCanlyは、業界のインフラになるようなシステムなので、このミッションにぴったりだと思っています。
ミッションを達成するために、どう行動するか。そのためにバリューを決めました。秋山と私で温泉合宿をして、2日くらいかけて話し合ったんです。話していくうちにバリューが決まっていったのですが、考えてみたらルームシェアを2年間していたときに、この5つをやったら結構うまくいったんですね。
<Leretto 5つのバリュー>
1.お客様の理想から入れ
2.まずやってみろ
3.圧倒的当事者意識
4.利他主義でいこう
5.正直であれ
例えば「利他主義でいこう」でいうと、お互いのことを思いやらないとルームシェアってうまくいかないと思うんですね。ゴミ捨てを俺がやるよ、風呂掃除は俺がやるよとか、そういう相手の利他になる心ってすごく重要だと思うんです。
こんな感じでルームシェアでのうまくいった経験とエッセンスを入れました。
あと、私たち共同代表者それぞれに強みがあるんですね。例えば秋山なら「まずやってみろ」という行動力があると思います。私なら結果にこだわる「圧倒的当事者意識」があるので、そういうものを組み合わせてバリューを作りました。

起業する際、IT事業を選んだ理由

ーーIT事業で起業されましたが、辰巳さんは商社出身、秋山さんも銀行出身ということで、IT畑を歩んできたわけではないと思います。IT事業を選んだ理由を教えてください。
在庫を抱えない、利益率が良い、立ち上げまで時間がかからないという理由があります。それに、ITは原価があまりかからないですよね。資本金も100万円で、私と秋山で50万円ずつ握りしめて始めたので、お金がない中でやるとなったら、ITしかなかったです。
ーー創業時に始めたサービス、会員制グルメ予約サービス「Leretto(リリット)」を7月でクローズしています。新型コロナの影響というのがあったのでしょうか。
結論から言うと、かなりありました。Lerettoは社内の宴会に特化をしたグルメ予約サービスでした。その後に接待領域や、ビジネスマンのあらゆる飲み会の「負」を解決しようというコンセプトで進めていたんです。ところが、コロナの影響で宴会がなくなっちゃったんですよね。圧倒的に。
大企業ってやっぱり体裁もありますので、やっぱり宴会は控えるじゃないですか。正直、飲食業界に携わっていた身としては、コロナの影響で宴会をストップすることに大反対なんですけど……。
いっぽう、Canlyというサービスは伸びているんです。それだったら、ひとつの事業に集中しようと決断しました。

採用コストは”0円”

ーー確かに宴会できる雰囲気ではないですもんね。続いて、辰巳さんが起業してからの成功体験をお聞かせください。
まだまだ成功しているとは思ってないんですけども、Twitterをやっていてよかったなとは思います。投資家からもイマドキだねって言われてますね。起業したときは数百名程度のフォロワー数でしたが、1年ちょっとで約3万5千人になりました。Twitterは拡散もできますし、なにより採用面でかなり得をしていますね。
今まで20人以上Twitter経由で採用しているので、うちの採用コストは0円なんです。
あとは単純にフォロワー数が多いことで、会いたい人と会えます。Twitter上で世間的に有名な人に会えませんか?
と連絡したら会ってくれることが多いです。そういう意味で、ブランディング的な面ですごく成功したなと思っています。
ーー採用コスト0円はすごいですね。逆にちょっとこれ失敗したなという失敗体験を教えてください。
これも難しいな……。ひとつ挙げるとしたら、成功体験でもお話した採用面ですね。本当に初期だったんですけど、ミッションとバリューを設定してないときに人を採用してしまいました。
人の内面的な部分を見ずに、あの企業に勤めてたからとかそういう理由で採用してしまい、結果的にやっぱり僕らの文化に合ってなくて辞めてしまったことがありますね。
しっかりとミッションバリューに沿った形で採用を進めれば、ミスマッチが起きなかったと思うので、失敗でしたね。
ーー採用の話が続きましたが、会社の代表として、どんな人を採用したいと考えているか教えてください。
今はエンジニア、カスタマーサクセスのチームですかね。エンジニアは今15名くらい、CTOもいるんですけど、もうちょっと開発スピードを上げていきたいです。エンジニアはいい人がいたら、口説いています。
あと当社のサービスってSaaS(Software as a
Service)なんですね。いわゆるサブスクリプション型のシステム提供なので、導入してもらってからが勝負になります。
なので、どれだけお客さまへのサポートを手厚くするかが非常に重要になってくるんです。そのときにカスタマーサクセスチームがやっぱり重要だなと考えています。しっかりとお客さまをサポートできる人材を求めてますね。
ーーカスタマーサクセスは当社でも力を入れています。辰巳さんにとってのメンターはいらっしゃいますか?
いる場合、どうしてその方をメンターにしようと思ったのか教えてください。
はい。います。Lerettoに投資をしてくれている投資家の方がメンターですね。実務的な面でお世話になっているのは、MiiTel(ミーテル)というサービスを提供しているRevComm(レブコム)の會田
武史さん。
會田さんは僕らの100歩先ぐらいまで進んでいる、超有名なベンチャー社長です。こうした成功している人に話を聞くと、歩んできた道が同じになるので、プライシングをどうすればいいとか、組織設計をどうすればいいとか、そういうことを教えてくださいますね。
実務面だけじゃなくて、精神的にも不安になることって起業家の宿命みたいなところがあると思うんです。だけど、創業期から投資してくれている成田直人さんとかは困っているときにご飯に誘ってくれて悩み相談にのってくれるんですね。そういうところも、すごくありがたいです。

辰巳衛さんの「やりたいこと」

ーーさくマガのコンセプトが「やりたいことをできるに変える」なのですが、今後やりたいと思っていることを教えてください。
短期的な話でいうと、まずはCanlyを年内には日本一にしていきたいです。
やりたいことは次世代のインフラを創ることなので、新しいテクノロジーを常に追いながら、人々がなくてはならないものを生み出し続ける会社にしていきたいと思っています。
個人としては、20代で本を書きたいと思ってますね。商社マンで若くして起業する人ってすごく少ないと思うんです。商社時代の同期が100名くらいいますが、起業しているのって私ひとりなんですね。
なにかやりたいけど、踏み出せない20代ビジネスマンの方に向けて、僕の思考についてお伝えして何かしらのお役に立てればなと思っています。

働きながら、米国公認会計士(USCPA)試験の勉強を毎日していたエピソードには驚きました。”まず”はCanlyで国内No.1プロダクトをを目指すということで、将来の展望はもっと先にあるのだと思います。辰巳衛さんの今後に注目です!
執筆・企画

川崎 博則
1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

編集

武田 伸子
さくらインターネット社員。1児の母。主に「さくらのユーザ通信」(メルマガ)を担当しつつ、さくマガの記事執筆や編集に関わっている。

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